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第13話 試合

選んだ武器は、ロングナイフと手甲。山岳エリアが今回の試合会場らしい。シューは、布の様に体を柔らかくでき、また、空を一定時間飛ぶことができる。ボンは一定時間体を巨大化できる。それぞれ、使い方によっては非常に便利だ。


 作戦は初撃から、ボンが巨大化して、敵に心理的な不安を与える。巨大化により山の様に大きくなたボンの一撃は、大地を揺るがす。焦ったのか、敵の一人が出てくる。ベアトリーナだ。あいつは、すぐに突撃に走りそうな性格だな。

 ボンには、僕らが到着するまで、耐えきってもらわなければならない。鉄球を振り回すベアトリーナは、容赦なくボンに攻撃を加える。


「さっさと眠りなさい!」


 強烈な一撃を加えようと、体に力をこめている。前しか見えていないな。裏から距離を詰めて、ナイフで切り裂く。致命傷判定が出たら、強制的に退場させられる。

光の塊となって、ベアトリーナは消滅する。


 それと同時に、強大な落雷により、ボンも消滅させられてしまう。マナの反応は一瞬であったが、2人目の位置は把握できた。シューに位置を告げた。彼なら飛行により、すぐに近づけるだろう。僕は、ご令嬢の索敵に移った。

 慎重だな。ああいう令嬢キャラこそ、冷静さを失って前にせめてくると思ったが、さすが武門の娘。冷静な対応だった。


 片手剣に盾と、父親と装備は同じであることから、接近戦に持ち込みたがるはず。位置を把握さえできれば、対応は可能だ。盾を持った敵にかなうか別だが、もし2対1に持ち込めればこちらが圧倒的に優位だ。盾は接近戦の武器にたいして圧倒的優位性を与えると同時に、使用者の俊敏性を奪ってしまう。


 索敵は、【メタトロン】を使用すれば楽にできるが、今は使用できない。索敵に時間をさくより、シューと一緒に、魔術師の方を早めに潰しておこう。そう思い、岩と岩の間を飛び移っていると、飛んできた矢で、負傷判定を受けてしまう。ペナルティポイント及び、負傷箇所の稼働制限がかかる。


 遠距離攻撃も可能なのか。やるな。しかし、これで位置の把握はできた。それでは、潰させてもらう。そう思って、矢の飛んできた方向へ、手甲を構えながら飛び出す。2撃目はくらってもしょうがないので、致命傷だけは避けなければならない。


 しかし、少し進んで自分の間違いに気が付いたのだ。遠方からの攻撃と勘違いしていた矢の攻撃は、トラップからの発動であり、こちらが罠にかかったわけでは無く、それこそ離れた所から発動できるような仕組みであった。

 それでも、発動のタイミングを見計らうため、そして、負傷した獲物を狩る為、必ず近くにいるはずだ。そう考えた瞬間、背後から気配を感じる。危なく致命傷判定を受ける事を避けた。

 しかし、ペナルティで体が重い。背後を切り裂かれてしまった。


「正道をただ吐く人間より、奇襲をかけて勝利を掴もうとする人間の方が、よっぽど好感が持てますね」


 相手には聞こえていないだろう。


「よく、私の攻撃を避けましたわ。しかし、次はございませんのよ」


 盾とナイフ、剣と手甲のぶつかり合い、金属音が岩山に響きわたる。罠でつって、背後から奇襲をかける。ただの、貴族出身のお嬢様の考える作戦ではない。戦闘の訓練は一通り受けているのだろう。戦場を知っている父親から。


 足下の砂を蹴り上げる。シーラが片目を少し絞った瞬間、死角に回り込みナイフの一閃を加える。しかし、そこは盾に止められてしまった。盾は、接近戦では最強だ。


 しかし、こちらも武器が一つではない。体を回転させて、その盾を手甲で横に弾く。慣性の関係で、防御しようとしたポイントと反対側の縁に力がかかると、盾の所有者は、自然と体を回転させてしまう。勢いでバランスを若干崩したが、シーラは踏みとどまった。

 

 ただ、その踏みとどまりが、悪かった。その脇腹に向かって、僕は、強烈な拳を叩き込む。体が少し浮いたかもしれない。彼女の体はクの字になり、僕から見て正面にある岩に、激突する。


「くはぁ!」


 肺から空気が抜ける。そして、僕は距離を詰めて、ナイフの一閃を浴びせる。首筋から胸にまでかけて、攻撃判定が通るが、致命傷判定の前に、剣で弾かれた。しかし、僕のラッシュは収まらず、切り上げた剣の隙をついて、手甲で再度脇腹を殴り落とす。


「かふぁっ!」


 女の子を殴るのは、ちょっと引けるが、ベスの思いを通すためだ。主の娘だからと言って、躊躇することはない。そして、首に手を回し絞め上げる。気絶すればこちらの勝利だ。しかし、なかなか絞めさせてはくれない。


 そこで、違う固め業で締め上げようとした瞬間に、背後から雷の刃が襲い掛かり、僕は致命傷判定で退場してしまった。


「やられてしまったか……」


「ごめんよ。僕がやられてしまったばかりに、君の方に魔術師がいってしまって……」


「そうだなぁ。シュー。悪かったなぁ。執事」


「いいとこまで行ったのに、残念だぜ!」


 三者三様の感じ方をしているようだ。即興チームにしては善戦したと感じている。これから、この3人がどう育っていくのか楽しみだ。まあ、僕も同年代なんだけどね。

 それから、3人にも気取られることなく、抜け出した。ジュナの授業の様子が気になったからだ。その後、3人はシーラから戦い方について称賛されていたようだが、ベスと僕を勘違いしてくれたようだった。


「わたしを負かした男は、お父様と兄様ぐらいの者です。それに、貴方が加わりましたわ」

との感想だったという。ベスは否定も肯定もできず、ただ自慢げに胸を張っていたとの事。謎の仮面執事を思い浮かべながら。


 ジュナは、作ってくれた押し花の栞を、僕にくれた。「お、オルの為に作ったの……」との事。可愛らしい。使用人に作ったものを渡す子はいなかった。優しいんだねジュナは、おじさん嬉しいよ。


 また、手を繋いで帰った。マルクス少年が羨ましそうに、陰から見ているのを気が付きながら。ごめんな、今だけはここは譲れないから。

HP489

ルート分岐なし

男女平等パンチ。マナの被膜で防御ができるので想像よりはダメージはない。

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