第12話 巻き添え
翌朝は、皆で一緒にご飯を食べた。まあ、朝7時くらいからだったので、自分の仕事時間を考慮して、朝5時くらいには起きている。門の清掃を終えてから、草木の世話をする。鳥たちの鳴き声が聞こえる。一通りの仕事を終えると、朝湯あみをしてから執事服に着替えてから、食堂に向かう。
今日も、ジュナの御着きとして初等部へ向かう。今日は、ジュナから手を繋いできた。昨日、算数が上手くいったのがうれしかったようだ。ニコニコ顔で、今日も登校する。子供というのは、どうも分からないところが多い。まあ、自分も子供の頃は、いろいろ小さな事で、顔の表情を変えていたな。何時から、顔の表情を変えるのが下手になったのだろう。今となっては、仮面の下の表情が定かではない。
ジュナの御着きも、今日は問題無く果たせた。同世代の女の子とジュナが話しているのを見ていると、安心する。てっきり、友達が少ないのかと思っていたからだ。マルクスは、男友達と話しながら、たまに視線を送ってくる。向こうはこちらが気づいていないと思っているのだろうが、バレバレだ。昨日何となく理由が分かったので、かわいいものだ。
3時限目は、工作の時間で、友達同士で楽しくやっていたので、僕は一人で学園の様子を見てまわった。中等部と高等部の様子を見に行く、校舎の形はどこも同じ様だな。生徒は授業中なのか、あまり外にはいないようだ。教室では、様々な魔術が展開されているのか、マナが非常に活発化している。廊下を歩いているとスピリットともすれ違う、奴らは霊体の癖に、僕に挨拶なんてしてくる。まあ、僕も挨拶を返すけどね。
高等部の校舎に入る瞬間に、ヒソヒソ声が聞こえた。生徒たちの声であろうか。うま●棒とティッシュみたいな容姿の生徒と、ベビ●ター的な容姿の生徒がいた。ベビ●ター君が、膝を抱えて何か、わめいている。
「ちくしょー!こんな時に。俺はまだやれるぞ!」
「無理しちゃだめだよ。ベス」
「そうだなぁ。ベス」
「俺はまだやれる!」
なんかやってるので無視しよう。そう思って、通り過ぎようとした時に、急にベスと呼ばれた生徒から声を掛けられる。
「そこのお前!そうだ、仮面をつけた男。何処の使用人か知らないが、俺に力をかせ」
「だめだよ。どこの高貴な方の使用人か分からないよ。ベス」
「そうだなぁ。ベス」
「うるせぇ!俺たちが、いや、俺たちのチームが次の試合にでるには、こうするしかない」
面倒ごとに巻き込まれてしまったようだ。
「ご事情はお伺いしましょう」
「じ、実は僕らは、実技科目の模擬戦で勝ち抜いてきたんだけど、前の試合で、ベスが傷ついてしまったんですよ」
「そうだなぁ」
「決勝戦なんですよ。あのグリーム家のご令嬢相手だっていうのに、このままじゃ棄権しなければならないんだよ。俺は、このチームで、てっぺん目指したいんだよ」
「それは手助けしたいのだが、あのグリーム家のご令嬢相手では、僕は役不足だよ」
「分かってる。でもこのまま棄権したら、シューとボンがかわいそうでよ」
「「ベス」」
仲間思いのこの少年に、少し心が打たれてしまった。
「分かりました。お力になりましょう。して、その試合はいつですか?」
「今から」
「へっ?」
「後5分」
「マジか~」
「だから言ったじゃないか。ベス」
「そうだなぁ。ベス」
「急いで支度します。試合のルールは?」
「3対3のタッグマッチで、模擬刀などの武器を使うんだ。魔術の使用も可能だ」
「分かりました。善処します」
HP454
ルート分岐なし