第三章 ガルドザンローズ帝国 2
やや短めです。
「全員死刑」
国王の間、という豪勢な部屋―この部屋だけ金ぴかだった―で一人のオッサンが、至極つまらなそうに俺たちに死を宣告した。
すわり心地が良いんだか悪いんだかわからないバカでかい椅子に深く座り、足を組んで、肘掛にひじをつきながら、あくび交じりに、この国の最高権力者だという中年のハゲ散らかしていて豪勢なベルトの上に脂肪がオンしている油ぎったオッサンは俺たちの命を握りつぶした。
この部屋に連れて来られてからまだ5分も経っていない。俺たちは何も喋っていない。
「ま、待てぇだ!まだ何も言うてないやろ!なんで死刑なん!!」
オッサンに食って掛かる俺を近くにいた男たちが長い棒みたいなんで押さえつけた。背中で交差する棒に加えられた力で俺の上半身は床スレスレの所まで下げられている。顔もあがらないが、なんとか目でオッサンを捕らえることができた。
まるでもがいている虫を見ているかのように、汚く笑っていた。次はどの足をもぎ取ろうかと脳内会議が行われているような、そんな顔だ。
「お願いします、私たちの話を聞いてください!」
「お、俺たちスパイなんかじゃありません!」
マヤとタクも声をあげるが
「知らん」
一蹴されてしまった。
「私にはあまり時間がないのだよ。申し訳ないねぇ」
そう言ってクツクツと笑う国王。
俺たちが生き残るにはこのラスボスに挑むしかないのか。戦えるのは恐らく俺だけだろう。
ハタは負傷しているし、マヤにはできないだろう。タクも…できないだろうな。
とすればだ。昔多少ヤンチャしてた俺が行くしかない。しかし、勝てる見込みは全くない。
俺があのオッサンに殴りかかって返り討ちにされた後、残ったアイツらはどうなる?やはりスパイだった、国王を殺そうとした暗殺者だ、と有りもしない罪を作り上げられ、恐らく今予定されているものよりももっと残酷な方法で処刑されてしまうことだろう。処刑されるだけならまだしも、拷問なんぞにかけられたら…。
今は動けない。これから隙をみて、なんとか逃げ出すしかない。きっと処刑までまだ時間はあるだろう。
「おい、処刑台へ連れて行け。見世物にするまでもないだろう」
は…?
「い、今から!?」
「聞こえなかったのか?私には時間がないのだよ」
まずいぞ…。かなりやばい。何とかしなければ。
……だめだ、頭が働かない。どうやったら生きてここから出られるのか全くわからない。どうしよう。俺もこいつらもここで殺されてしまうのか。本当に終わりなのか…?
男たちに引きずられるように国王の間から出ようとしたその時。
「父さん、ちょっと待ってよ」
国王のいる椅子の近くから、もう一人男が現れた。
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