第三章 ガルドザンローズ帝国 1
砂漠から脱出。まずは城下町へと連れてこられました。
砂漠と街の境界には高い壁と物々しい警備があった。
壁は上に行くほど反るように作られているが、それがなぜか街の内側に向けてあった。有刺鉄線もそうだ。オモチャ銃を構えた警備の男たちだって、明らかに街のほうを重視している。
攻められたってかまわないさ。俺たちにはロボットがついてるんだ!…ということなんだろうか。
街の入り口の頑丈そうな門の前で俺たちは降ろされた。ここから城まで歩かされるのだという。市中引き回しってか。時代劇好きのエリが喜びそうな響きだな。
歩くたびに、俺たちを繋いでいる鎖がチャラチャラと声をあげた。その音が無様な俺を笑っているようで、なんとも忍びなかった。
街の印象は一言で言えば「灰色」だ。
大通り以外はやたらと細い裏路地が迷路のように行き交っていて、建物はごちゃごちゃとしながらも高く建っている。そのため、空が極端に狭い。
建物に付随しているあらゆる煙突(?)から時折蒸気やスモッグが排出されていて、それらがまた空気を灰色に変えていく。
街の住人も灰色で、大通りを男たちに囲まれながら歩く俺たちを窓の隙間からガン見している。見たいなら堂々と見ればいいのに。
大通りの露店も、俺たちが通る前に品物に布を被せている。そして皆にごった目でこちらを見てくる。
俺たちは何もお前らに危害を加えてないってのに、なんだ、その腐った魚が怒気をはらんだような目は。気分が悪い。
大通りと裏路地の接合部分、交差点のようなところにはポツンポツンと人が座り込んでいる。身なりはボロボロで手足もガリガリだ。あぁ、どこの国にも浮浪者ってのはいるもんだな。ここの国のはちょっと…死体みたいなレベルだが。
そいつらは俺たちのことにはまるで興味がないようで、じっと自分の足元をドロリとした目で見つめていた。なにかを呟いているようだが、内容は聞こえない。
あまりいい雰囲気とはいえない街だ。
やがて、正面に石と機械で作られた城が姿を現した。街にあった建物とは比べ物にならないほど巨大で、煙突も複数ついている。
その煙突からは絶え間なくスモッグや蒸気が噴出しており、この街の灰色の元凶ともいうべき建造物だった。
ガッシリとした分厚い城門がゆっくりと開く。いよいよ、城内突入だ。
城の中はとても冷たかった。全てが石に囲まれており、光がほとんどさえぎられているため、太陽が高くに位置しているというのに燭台をもって歩かないと前が見えないほどだ。
こんなところでずっと暮らしていたら、目が退化して肌も真っ白になってしまうんじゃないか。だとしたら王様とかはアレか。昔探検に入った小さな洞窟でみつけたウナギのように、
生っ白いヌメッとした肌と在る場所だけうっすらわかる目のような…
いらんことを考えてしまった。
さっきから何度も曲がり角を曲がる。
城というのは侵入者が簡単に大事な部屋まで辿り着かないよう、迷路のようになっているのだと何かの本で読んだことがある。だとしても、複雑すぎる。この城の人間は皆構造を覚えているのか?迷子とかにはならないのか?廊下も廊下で似たようなものばかりだ。部屋の扉も全て同じ柄だ。まるでRPGの最後のダンジョンのように。
RPG最後のダンジョンに待ち構えているのはもちろんラスボス。ここでは国王のことか。3段階くらい変身するんだろうな。倒しても倒しても「ぐおぉぉぁぁぁ!!」とか叫びながら変態していくんだ。HPも半端なくて。攻撃力もバカみたいに強くて、仲魔とかバンバン召還してしまう。そんなラスボスに俺たちはLv1のまま「布の服」と「素手」でつっこんでいくんだ。
誰がどう見ても勝ち目はない。
とりあえず、命さえ助かればなんとかなるだろう。生きてさえいれば、きっとエリにだってまた会える。
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