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第9章 道 3

半年ほど更新しておりませんでした。

長々の放置プレイ申し訳ありませんでした。


それでもちょくちょく読んでくださっていた方がいらっしゃったようで・・・。

ありがとうございます。


おかげさまで、再び『変化の風、運命の車輪』に向き合うことができました。

 あの部屋を出てすぐに、エリは通信機でガレージとやり取りを始めた。

 03倉庫に人手を回すように各倉庫の責任者と話しながら、いつも腰からぶら下げている大き目のヒップバッグからローラーを取り出し、僕らにもわからないくらいの専門用語を並べながら自分の靴に装着した。 広い倉庫内だけでなく、倉庫から倉庫へひっきりなしに走り回る整備兵たちが、特に急を要する移動の際に使う手だ。

 靴底にはめ込むような形になっていて安定性もあるので運動オンチのエリでも転ぶこともあまりないし、走るよりもより早く、そして体力を消耗せずに移動することができる。これもサメオさんが作ったものらしい。

 多分あの人は遊び半分で作ったのだろうけど、エリが移動手段として使い始めてから徐々にガレージ内に広まり、いまではほとんどの整備兵が使用している。まぁ、エリが移動手段としてそれを使い始めたのも、彼女が走ることが大嫌いだからだろうけれど。雲の上でサメオさん笑ってるかもな。『えぇ〜?そう使うの〜!?』なんて言いながら。


「それじゃ、またしばらく倉庫にオコモリしてるから。36時間で3体とも直す。それまで別のメガロ乗って練習してて!」


 話は通してあるから!――という言葉尻と一緒に小さくなっていくエリの背中。

 36時間・・・。異例の速さだ。しかも3体同時に直すと言う。


「あいつ、寝んつもりなんかな」


 ツネさんがエリの背中を見ながら呟いた。


「・・・俺たちも、やりますか」


 モリヤが左手に自分の右拳を当てながら首を鳴らした。


「うん。やろうか」


 僕らだけ指をくわえて待ってるなんてのは絶対に嫌だ。今やれることを最大限やろう。そうしなければ、なんだかスカーレット・ブーケに乗る権利はないように思えた。

 歩き出した足はいつの間にか地面を蹴っていて、一刻も早く演習場へ着くように僕らは全力気味に走り出していた。






「キムさん」


 その夜、夕食を終え、いつもの空き地で空を眺めている僕にウラコが話しかけてきた。


「ん?どうしたん?」


 ブンカバンカを見上げるために浅く座って背中を背もたれに預けきっていた体勢を整えて彼女と向きあう。


「戦いにいくって、ほんと?」


 真っ黒な瞳にいくつかの光が揺れている。力の篭った視線に耐えられなくなり、さりげなく視線をはずしながら


「ほんとだよ」


 と答えた。


「みんな行くん?」

「みんな行くよ。モリヤもツネさんも行く」

「そう」


 それからウラコは何も喋らなかった。僕も喋らなかった。いや、僕の場合は喋らなかったのじゃなくて、今、この空気にそぐった言葉が見つからなかったから黙るしかなかった。


「・・・って・・・」

「うん?」


 冷たい空気にすぐに溶けてしまった彼女の小さな言葉。できるだけ優しく聞き返した。


「・・・・・」


 口を閉ざしたウラコ。彼女の言葉を聴くタイミングを逃してしまっただろうか。服の裾を握るウラコの親指の先が白くなっていた。何かを堪えている。


「帰って、くる?」


 一番表に出したい感情を必死に抑えて搾り出してくれた言葉。もっといっぱい言いたいこと、知っておきたいことあるだろうに、たった一つの言葉に留めてくれたみたいだ。


「帰ってくるよ。当たり前やろ」


 ウラコの気持ちをしっかりと受け止めた上で、今度は僕からお返しをする。言葉は軽いけども、伝わっただろうか。僕の、モリヤの、ツネさんの思いが。誓いが。


「・・・だよね」


 フッと彼女から息が漏れて、空気が和らいだ。うつむいていたのでよくはわからなかったけれど、ウラコは少し笑ったみたいだ。

 それからウラコは「仕事、途中だ」と独り言ともとれる当たり障りのない言葉を呟いて、僕の隣から去って行った。


「帰ってくるよ。当たり前やろ」


 その背中に、届くはずはないのにもう一度同じ言葉を呟いた。

 いや、これはウラコへの言葉じゃない。僕へ、だ。僕から僕へ、誓いの言葉。僕は帰ってくる。またここへ、ウラコやエリが待っているこの国へ。絶対に帰ってくる。絶対に。

 体の奥から容赦なく震えが立つ。怖がっているんだ、僕は。悪いことを沢山考えてしまう。最悪のヴィジョンが頭の中に流れる。止められない。


「帰ってくる。絶対に。僕は絶対にここに帰ってくる。」


 何度も何度も言い聞かせた。赤黒いヴィジョンは振り払うことはできなかったけど、少し落ち着かせることはできた。


 また空を見上げた。今夜はブンカもバンカも上弦の月のようだ。この世界がどういう天体の動きをしているかなんてサッパリわからないけれど、三日月のように細い上弦の月は、子守唄のように優しくこの世界を包む藍鉄あいてつ色の空に張り付いて、何かを祈っている母親の優しく閉じられた瞼のようだった。





身の回りでいろいろと大変なことが起こりまして、私自身とても不安定な状態でした。

いろいろとありまして、キャラクターが動かせなくなりました。


もー、ほんとにいろいろ。

人生いろいろ。


みんな頑張って生きてんだー!

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