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第五章 太陽と花と水の国 1

 ―まぶしい。


 宿舎の窓から差し込む朝日が、まっすぐ部屋に差し込んでいる。もう朝か。

 カーテンというものがないこの国で、僕たちは太陽と共に暮らすことになった。夜通し酒飲んで歌うたって、ボソボソと取り留めのないことを語っていたことが嘘のようだ。いまじゃ外が暗くなれば自然と眠たくなってしまう。でも、今の生活になってから朝が楽だ。あんなに動いているのに、疲れが全く残っていない。

 ゆっくりと体をおこし、ベッドの上でぐっとのびる。毎朝これを続ければ身長が伸びると、高校時代の先輩に教えられた。今はもう成長期を過ぎているので伸びることに期待はしていないが、体が自然とこれをしてしまうのでなんとなく続けている。

 ルームメイトは差し込む朝日に顔をしかめながら、それでもまだ惰眠をむさぼっている。そろそろ起きないとアイツが飛び込んでくるぞ。

 寝間着から制服に着替えながら相方を心配していると、僕の予想通りにこの部屋に近づいてくるバタバタとした足音が耳に入ってきた。あーあーあー。毎度のことながらご愁傷様。僕知らないもんねー。

 袖口を止めなおし、あえて彼を起こさないようにそっと部屋から出る。背中で、「おはよう!」という声と「くぉるぁぁぁぁ!はよ起きれヴォケぇがぁぁぁ!!」という怒号を聞きながら足早に食堂へ向かった。もちろん、挨拶には片手を上げて返事もして。


 食堂へと続く廊下の途中に洗い場がある。

 そこでいつものようにつめたい水で顔を洗っていると、誰かに肩にかけていたタオルを取られた。これもいつものことだ。


「返せよ、アスール」


 水でバシャバシャの顔を上げずに、手だけで奪われたタオルをもとめる。

視覚的な情報ゼロの状態で右へ左へ手を彷徨わせていると、いつもより比較的早くに求めるものに触れた。


「おっはよー、キム。今日も相変わらずのー…」


 アスールから取り返したタオルで顔を拭き、アスールと向き合う。タオルを奪われた彼はニヘラッと笑い、


「唇おばけだね」


 と、これまたいつもの悪口を吐いた。


「誰が唇おばけやねん。いつも言ってるでしょー?唇の厚いひとは、情に厚いって」

「でもソレは酷い」

「人の顔のパーツを捕まえて、酷いとか言うな。朝から傷つくわぁ」


 タオルを肩にかけたまま、アスールと共に食堂へ向かう。

 中身のない、ネタだけの会話に花を咲かせ、それは食堂に着いて朝ごはんの準備ができるのを待っている間も止まることなく続いていた。

 歳が同じというのがあってか、アスールは僕らのお世話係に任命された。

実際、アスールといるのはこの国の誰といるよりも気が楽だ。少なくとも僕は、の話しだけども。

 彼はとてもよくしてくれる。この国での仕事を僕らに紹介してくれたのも彼だし、なんだかんだ皆のわがままを聞いてくれる。結構調子のいいやつだけど、それはこちらも同じことで、同じ匂いのする僕らはすぐにアスールと打ち解けた。

 それにアスールは人を近寄らせる、そういう雰囲気を持っている男だ。

 加えて、アスールは僕らの命の恩人である。それのなのに恩着せがましいことは一言も言ったことはない。

 今ここで、僕が結構本気で

「あの時はありがとう」

 って言っても、きっと彼はいつもの調子でニヘラッと笑って

「なぁに言っちゃってんの?気持ちわりっ」

 って気にも留めないんだろうな。

 礼を言われることじゃない、当たり前のことをしただけだから気にするな。ということを天然でサラリとやってしまう、そういう男なんだ、こいつは。


 でも、実際。


 あの時、アスールとその上官のジュウザが来てくれなかったら僕らはどうなっていたのだろう…。



 ではここで、僕の回想をご覧下さい。


視点が変りました。

誤字脱字等ございましたらいつものよーに窓をあーけー♪してください。

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