DAYS.1
春、杉の花粉を舞わせる頃。
私、漣 那智は暇を持てあましていた。
襤褸アパートの一室を借りて住んでいる。
畳の上に寝転がり天井を見ていた。
「嗚呼。そうだな。天井を破って誰か落ちてこないかな。例えば…能力者とか。」
(いや、そんなのが落ちてこられたら大家に怒られるか。)
「ふははは。案外それも、悪くないか。」
一人で笑っている自分が阿呆らしい。
仕事柄、滅多に動くことがない。
私は、しがない探偵業を営んでいる。
なに、私が探偵なわけじゃない。
死んだ父が探偵だったのだ。
私は、その仕事を引き継いだだけで、まともな事はまずしたことがない。
「よく、今の今まで生きていたものだ。」
私の自慢できる所だな。
一通り、自分の説明をしたところで…。
寝るかな、やることもないのだから。
無理に起きている必要もない。
そう思い瞼をゆっくりととじようとした…刹那。
バキバキバキっ!という音がした。
音のする方に目を開けた。
私の真横に、砂煙をあげなにかが天井を破り落ちてきた。
私は、首だけをかたむけ見ていた。
「はぁ…また死ねなかった。」
声がする、人が落ちてきたのか。
仕方ない起き上がり人の元に近付いていく。
「死にたかったのか?」
悠長に質問をかける。
砂煙は、だんだんと薄れていった。
「嗚呼。死にたかった。ん?君は…誰だ?」
砂煙が、完全になくなり姿が見える。
頭から血を流し右腕がおかしな方向にむいていた。
「大丈夫か?体。」
「嗚呼。大丈夫だ。日常茶飯事だからな。それよりも君の家の天井を破いてしまって申し訳ない。」
「気にするな。よくあるだろう。なにより私は、お前が落ちてきてくれて感謝しているんだ。つまらない一日を変えてくれたな。むしろ礼をしたい。」
すると、彼は、少し悩んで。
「なら…一日泊めてくれないか?生憎家が昨日燃やされてね。」
「構わないよ。狭いが許してくれよ。そうだ、客人。お前の名前は?」
私が彼を立たせようと手を差し伸べた。
彼は、優しく微笑み私の手を掴んだ……二度目の刹那。
今度は、壁を蹴破られた。
最近は物騒な物だ。
壁を蹴破るなんて、礼儀知らずも良いところだ。
「もう。追ってきたのか。すまないね優しい人。どうやら厄介事に巻き込みそうだよ。」
嗚呼。つまらない一日どころか毎日を変えるようだ。
「そうか、それもそれで面白い。私の毎日を楽しくしてくれ。」
壁を蹴破った奴を見る。
壁を蹴破ったのは、見た目からして齢十四ぐらいの少女だった。
可愛らしい薄いピンクのワンピースに白色のサンダル。
薄いピンクのボブヘアーが良く似合う顔立ちだったが、無機質な表情が思いきりぶち壊していた。
継ぎ接ぎだらけの熊の縫いぐるみを抱きながら無表情な顔で、私達にこう言った。
「戦争は、もう始まってるんだよ。椹 一色。」
椹 一色。
其れが、彼の名前らしい。