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モヒカン の 彼女は目覚めない

よろしくお願いします。今回は長めです。

全員のステータスを見渡し、俺は1人足りない事に気が付いた。別に俺としては今この場にいないモヒカンの彼女、十坂については特に関心もなく、モヒカンの取り巻きという認識しか無いのでこの場にいないことに少し驚いた程度だ。

……だが、モヒカン共はその事について触れもしない。もしかしたらこの場にいない事情を知っているのかもしれないが。

しかし、


「あれ……赤音がいない!ねぇ!赤音は?赤音どこいったの?!」


と青栃が騒ぎだしたのをキッカケにモヒカン共もそわそわし出した。

……こいつらマジで十坂いないこと気付いてなかったのかよ……


1人いない事に慌て出したモヒカンを見て、賢者も少し呆れた表情をしてから、十坂は召喚された時に結構な深手をおっていたこと、その後病室に運んで魔法による治癒を施されたが、未だに昏睡状態が続いている……という事情を説明した。

すると青栃は額に汗を浮かべ緊迫した表情で俺達が今居る、部屋を飛び出して行った。その後を追いかける様にして、モヒカンと残りの取り巻きも部屋を出て行く。


賢者は部屋の隅で待機していたメイドにアイコンタクトをし、モヒカン共を案内するよう言った。


モヒカン共を追いかけにメイドが部屋から退出すると、この広い部屋には俺と賢者だけが残った。


「あなた様も行かなくて宜しいのですかな?」


「ああ。元からあいつらとは殆ど関わりがないし、顔と名前ぐらいしか知らないからな。」


実際俺はあいつらとは殆ど関わりがない。関わりがあるといっても、授業中煩い鼾を響かせているモヒカンの席の右斜め前に俺の席がある……というぐらいで、屋上にいたのもクラスの連中や俺から色んな理由で金を借りては返さないものだから俺が代表して(?)取り立てに行っただけなのだ。


「ふむ、そうですか。ちょうどあなた様しかおられぬので今のうちにあなた様のスキル“鑑定眼”の説明を致しましょう。」


「!」


俺はすぐにおかしい事に気が付いた。確かに俺の特殊能力欄には“鑑定眼”がある。だがしかし、ステータス板は自分以外には見えない…という事ではなかったか?

なのになぜこの賢者は俺の特殊能力欄に鑑定眼がある事を知っているのだ?


「いやはや、驚かせてしまって申し訳ない。あなた様ステータスを知っていたのは私めも“鑑定眼”の力を持っているからなのです。」


「……そう言う事か。ならこの鑑定眼というのは相手のステータスを見る能力なんだな?」


「ええ、そうです。相手の詳しいステータス、相手の真のステータスを見ることが出来るのがこの“鑑定眼”なのです。試しに鑑定眼と、目に力を入れながら唱えて見てください。」


「……『鑑定眼』。」


するとステータスオープン時の自分のステータス板のような物が賢者を捉えている視界の中に現れた。



名前:クレンス・ウォブサルト

職業:中央の賢者

LV:740

HP:880

MP:1940

筋力:450

耐久:500

魔力:1500

俊敏:430

運:390

使用魔法:火 水 風 地 光 闇 無

特殊能力:鑑定眼、言語理解、アイテムルーム、星読、時読、

個別能力:賢識の知、知識の間接続権、完全記憶

祝福:魔法神、賢神、星神



手で移動する様に触ると、視界にある板の場所が変わった。消える様に念じるとちゃんと消すこともできるようだ。


「見えましたかな?それが私のステータスですな。鑑定眼には設定が変更できる機能があるのです。まあ、後でで良いのだが鑑定眼設定変更とでも念じれば設定画面が出るでしょう。設定を変更すれば敵等のHPゲージを常時見えるようにしたりでかあますぞ。」


確かに鑑定眼設定変更と念じると設定画面が表示された。後で設定しておこう。


「鑑定眼さえあれば自分のステータス上のスキルの説明なども見ることができるようになりますぞ。因みに他の勇者殿にも鑑定眼に似た能力があるのですが、その能力は識別眼と言って鑑定眼より三段階ぐらい下の性能です。見える物はせいぜい腕輪使用時のステータス閲覧と自分のステータス上の能力説明の閲覧ぐらいでしょうな。」


鑑定眼って結構チートなんだな。


「あなた様は滅多に祝福を授けてくださらない珍しい神々にも祝福されている。他の勇者殿もそうですがあなた様は現時点でも頭一つ飛び出していらっしゃる。……特に魔法。まさか外道魔法とは…。」


「あんたのと違って無属性だけで、しかも外道魔法ってなんなんだ?外道ってことは悪…とかそういうのなのか?」


「勇者召喚で招かれる勇者は得手不得手が多少あろうとも基本、全ての属性が備わっている事が多いのです。ですがあなた様は無属性の系統外。しかも外道魔法とは……。……外道魔法と言うのを説明致しましょう。勇者様、魔法の属性には何があるかご存知で?」


「呼び方、勇者じゃなくてカイリでいい。……魔法の属性か。あんたのステータス見る限り、火 水 風 地 光 闇 無の七つだろ?」


「ではカイリ殿と呼ばせてもらいましょう。…カイリ殿がおっしゃった通り魔法の属性は大きく七つです。ですが火には炎、水には氷、風には雷、地には森のように派生系としての上位属性というものがあります。無属性にも上位属性があります。“時”と“空間”です。ですが無属性という何色も染まっていない属性だからこそ……なのでしょうが、どの属性にも分類されていない魔法があります。それが“外道魔法”といわれるモノです。」



賢者は俺に説明をしながら掌を上向きに出し、七つの基本属性と五つの上位属性の玉を掌の上で説明と共に順に出して教えてくれた。上位属性を出すのは適正もあるらしく、流石の賢者でも親指程度の炎や雷を出すのが精一杯のようだった。



「分類から外れているから、どの属性にも属さないから、と言う意味で“外道魔法”と称されるだけであり禁忌の魔法とか災厄の魔法とかそういうものではありません。“時”や“空間”も本質的には属性ではないので“外道魔法”にも分類されます。」


「具体的にはどんな魔法なんだ?その外道魔法ってのは」


「広く使われているのは契約魔法ですな。魔物との契約をして、従魔として契約する魔法です。魔物以外にも精霊や妖精、悪魔や果ては神まで、あと奴隷等との契約につかわれます。他にもアイテムを締まって置ける、スキル“アイテムボックス”の魔法版や精霊の力を借りて魔法を行使する精霊魔法…ですかな。」


「大体わかった。なら俺は無属性の魔法と外道魔法しか使えないってことなのか?」



……異世界に来て火球とか飛ばせないのは少し悲しい。



「そんな事は無いはずです。そもそもステータス欄に外道魔法と言う名前が記載される自体まず有り得ません。多分ですがカイリ殿の場合、カイリ殿オリジナルの魔法が使えるという現れです。過去に一度ステータス欄に『地属性 系統外 磁力魔法』と書かれた者とあったことがあります。こう書かれているのは『単一魔法』の象徴で、その者の系統外磁力魔法はオリジナルの魔法で、他の人間は一切使えなかったのです。

それに外道魔法である契約魔法で精霊と契約できれば、通常の属性魔法より強力な精霊魔法が使えるでしょう。正直これは驚きです。無属性の単一持ちは滅多にいない事なのですよ。」



精霊とかと契約すれば俺にも属性魔法が打てるようになるらしい。属性魔法ではなく無属性魔法も十分強力だそうだ。



「安心してください。カイリ殿が冒険に出るその日までしっかりと魔法の特訓を手伝わせて貰うのでな。」


……これは期待できそうだな。


「大事な説明はこれぐらいですな。さてカイリ殿、他の勇者殿の様子を見に行ましょうか。」


そう言って俺と賢者は部屋を出て病室へと向かった。




病室に向かう途中賢者に聞けば、ここは北西の大国サイマン王国の王城だそうだ。国王に謁見しなければならないのかと聞くと、今国王は王城を離れていて、それとある程度の修行が終わってから謁見することになる…らしい。



暫く歩くと病室に着いた。中に入るとベッドに横たわる十坂とその周りで十坂の顔を見つめるモヒカン共、そして白地の生地に赤の十字架と緑の蔦のような装飾が施されたローブを纏う回復術師がいた。回復術師は十坂に回復魔法をかけているようだ。手のひらから暖かい光が溢れ出ている。



モヒカン共は俺に遅いだとか何してただとか言って来たが、青栃は俺を一瞥しただけで視線をすぐ十坂の方に向き直した。

青栃にとって十坂は仲のいい友達なのだろう。青栃の行動からそうだと伺える。


聞けば十坂が意識不明なのは頭へのダメージが酷く出血も多かったことからショックで意識不明に陥ったそうだ。頭へのダメージというのは即頭部に鉄の線の切れ端が数本ささっていたそうだ(回復魔法で撤去済み)。

……十中八九原因はモヒカンである。

自らの髪型をモヒカンと貶された(?)ことによる逆上によって十坂を“ぶっ飛ばした”というのが原因だろう。


……絶対。



珍しくモヒカンも原因が自分だという事を悟ったらしく、死んだ魚の様に口は半開きでピクピクしながら小声で


「あいつがリーゼントを馬鹿にしたから仕方が無い。だけど殴るのは良くなかった。殴りとばすのはよくなかった」


とぶつぶつぶつぶつ言っている。取り巻きに聞いてみるとやはり十坂はモヒカンの彼女で間違い無いらしく、十坂はモヒカンによく殴られていたそうだ。それでよく別れないのは取り巻き曰く「自分の誇りを絶対に守る姿が好き」と十坂が言っていたそうだ。……あと十坂はMなのだろうとも言っていた。


…………どんだけマゾヒストなんだよ十坂…



そうこうしていると、賢者が俺に「鑑定眼を使ってみては?」と耳打ちしてきた。


(『鑑定眼』……。)


心の中で唱えた。すると……




名前:十坂 赤音

職業:勇者

LV:1

HP:30/100

MP:(-350)500/150

筋力:80

耐久:50

魔力:150

俊敏:80

運:50

使用魔法:火 水 風 地 光 無

特殊能力:鑑別眼 アイテムポーチ 聖剣召喚 速詠唱 軽反動

個別能力:無媒体高威詠唱

祝福:魔法神、愛神

状態:侵食 腐敗 昏睡 魔素過多症




……なんだこれ。


鑑定眼によるステータス詳細情報を閲覧する。


MP:(-350)500/150……魔素過多症により、限界値を超える魔素による魔法回路の暴走。()は魔法回路の暴走による実際のMP値に掛かる負担。


状態:侵食……魔素により活性化した菌が体組織を侵食している。


状態:腐敗……菌の体組織侵食に置ける腐敗。


状態:昏睡……MP値の負担が限界値を上回っている事による昏睡。


状態:魔素過多症……限界値を上回る現在MP値による魔法回路の暴走。暴走によるMPの使用不可状態。




徐々に減って行くHP値や、文面を見るにかなり深刻な状態だということがわかった。

横を向くと賢者は青い顔をしていて、直ぐにベッドに近づき魔法を唱えた。


『浸食よ止まれ。ストップエロジオン!』


賢者が十坂に向けて広げた両手がぶれ、同時に十坂の体が振動しているようにぶれた。


十坂のステータス板の状態欄には『状態:侵食(停滞) 腐敗(停滞) 』となっていて、徐々に減って行っていたHP値も減少を止めていた。




「彼女の症状を一時的に止めました。これで暫くは大丈夫でしょう。」



賢者の言葉と共に病室の張り詰めていた空気とモヒカン達の表情が……少し、緩んだ気がした。







だけど俺は、回復術師と賢者の表情が一切緩まず、更に厳しい表情になっていたのを見逃してはいなかった。






説明文が多くてすいません。

読んでいただきありがとうございます。

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