モヒカン 屋上にて
目の前には真っ赤に染まったモヒカンと、1週間前までクラスメイトだった奴が血の海に沈んでいた……
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「あぁ?俺がぁユーシャー?」
馬鹿みたいな発音とアホみたいに耳に響く甲高い声で目の前の銀のモヒカンはそう言った。
このモヒカン、猿山登馬と取り巻き5人と俺、計7人は突如この異世界に呼び出された。
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召喚される直前、俺はモヒカン共と屋上で言い争っていた。
「おい、いい加減クラスの奴らから借りた金と俺の金返せ!」
「そんなことよりよぉー見ろよこのオルェ様のリーゼント!イカスだろぉ?この角度!長さ!光沢!どれをとっても最高ぉーだろぉ?
この最高のリーゼントを拝めるだけで感謝しろっての」
……いや、どう見てもモヒカンだろ。
「前の金、コイツのモヒカン拝み代ってことでいいんじゃない?」
モヒカンの取り巻き共がゲラゲラと笑う。
取り巻き…やっぱりお前らもそう見えるよな?
「ンだとゴルァ!モヒカンじゃねぇだろ!てめぇこのリィーゼントとモヒカン如き一緒にすんじゃねぇ!ぶっ飛ばすぞ!」
本気でこいつリーゼントだと思ってるのか……
言葉が出る前に既にモヒカンと間違えた(?)取り巻きの女は殴りとばされていて、落下防止フェンスを歪ませていた。
……あいつモヒカンの彼女とかじゃなかったか…?
「まぁ?なんにせよお前らの金、このリィーゼントに注ぎ込んじまったからよぉ?返せねぇんだわぁ?あぁ、どうしてもってんならこのリィィーゼントォの1割やってもいいんだけどもよ?海理クゥン」
「要らんわボケ!」
俺、浜郷海理とモヒカンが言い争って(?)いるとぶっ飛ばされたモヒカンの彼女が帰って来た。
……あいつ大丈夫かよ、頭から血流してるぞ……
モヒカンの彼女の頭から流れ落ちた血が屋上のコンクリートを汚すと共に機械音の様な声が頭に響き渡った。
『召喚対象者付近での血液の流出、及び魔法陣内への接触を確認。魔法陣上のヒトガタ生物の転送準備開始。転送シークエンス。3。2。1。転送開始……
何だこれは!足元が光ってる?ガチでアニメみたいな魔法陣が光ってるやがる!転送?召喚?ネット小説かってんだ!嘘だろ…足元の感覚なくなって着やがった……
「うおおおお?!オルェ様のぉリィィーゼントが光って輝いてやがるぜェ!神々スィィィ!やっぱりサイコーだぜぇ!オルェ様のリイィーゼントォォオオ!!…………」
………………転送完了。』
雲一つない清々しい空の下、俺が元いた学校の屋上にはアホみたいに甲高い声と歪んだフェンスだけが残った。
読んで頂き有難うございます。
モヒカンは主人公ではありません(笑)