No.3
ギャグ要素全開です。おまけにグダグダ。苦手な方はどうぞ避難なさってください。
――あ~あ、どっかにいい女いねーかな・・・。
はふう。今朝だけでもう10回はため息を吐いただろう。
「『俺カノラブ』みたいな青春してーなっ!」
無意識のうちに大声を出していたのであろう。周辺民家から「うるさい!」という言葉とともに生卵をプレゼントされた。つ、ツイてるぜ・・・。
あ、どうも。毎度御馴染みの伝説のモテない男、尾田太一です。ピカピカの高校に2年間通っています。朝から近所のおばさんから罵声を浴びるほどのモテないっぷりです。正直、へこみます。へこみすぎてどうやら冒頭のような言葉を吐くまでに(間違った意味で)成長してしまいました。
最近、私がモテないのは「尾田」という苗字が影響しているのではないかと思います。(今から語ることは、全国の「尾田」さんとはまったく関係のないお話です。)
「おだ」。この苗字の方は全国でも多数いらっしゃることでしょう。(私の学校では、私を含めて二人しかいないのですが。)そのなかでも、「小田」や「織田」が多いのではと見受けられます。しかし、私はなぜかこの「尾田」でございます。
「尾」という漢字を見てあなたは何を感じますか?
うん、なになに?やはり、「しっぽ」ですよね。私も同じ意見です。だから嫌なのですよ~、奥様。
何故かって?理由はこれ1つに限ります。しっぽはどこから生えてますか?・・・言わなくてもいいですよ!(漢字にすると分かりやすいです。)どうしても「尾」は“それ”を連想させてしまうようです。
さらに、私の愛読書、「俺と彼女のラブコメディ」の主人公も私と同じく「おだ」の姓を持ちますが、主人公は「織田」くんであり、私とは違いましてハーレムでございます。しくしく・・・。
気にする必要はないと申されましても、私にとってはコンプレックスのようなものですし――。
はっ!すっかり思考の渦にはまってしまっていたようだ。
「お~い、尾田!」
う、この声の持ち主は・・・。
「本田、お前かよ!」
こいつは本田優。俺のクラスメイトで、野球部に所属している。2年生ながらピッチャーを任されているらしく、女子からの人気も高い。(頭ははげ・・・坊主なんだが。)
しかも、優は彼女持ちらしい。お相手は、3年生の奥本彩音という1つ上の先輩だ。以前、生徒会長を務め、学園のマドンナとも言われているそうだ。
そんな彼女を持つなんてずるいぞー!!おい本田、そこのポジションちょっと変われ!
「どうしたんだ、そんな怒りに満ちた目をして?」
「お前のせいだよ!」っと言いたくなったが我慢、我慢。俺だってそんなに子供じゃない。2枚目のジェントルメンなんだからな。
「ああ、モテなくてな・・・。」
言ってて悲しくなってきた。誰か早く俺を拾ってくれー!
「おい、前見ろよ。神様からそんなお前へのプレゼントだ。」
プレゼント?――生卵じゃないだろうな?
優の言うことを信じて顔を上げると、何ということでしょう!そこには美しい女の人の姿が!誰かとお話中みたいだ。
「3年の上条日奈子だ。噂どおり綺麗な面してやがるぜ。」
日奈子に賞賛の声をあげる優。俺は友人として忠告する。
「おいおい、そんなこと言っていいのかよ。彼女さんが悲しむんじゃないか?」
俺の言葉に顔色1つ変えない優。なんとなく優の顔が引きつっているのは気のせいであろう。
「じゃあ、俺声掛けにいくわ。」
高らかと宣言した俺は気がつかなかった。優が悲しそうな顔をしながら首を横に振っていたことに――。
どうしてこんなことになっているのでしょうか?
「あんた、妹をナンパするとは・・・いい度胸じゃあ!」
俺はただちょっと声を掛けただけなんだが・・・この有様である。
「ひぃ、違います!」
俺は誤解を解こうと否定すると、
「何で違うんだ?こんな可愛い子だぞ。」
ええー!そうきたか・・・。面倒だ、この先輩。
横で妹(名前は実奈子。俺たちと同級生だが違うクラスだ。)が「やめてよ・・・。」と宥めているようだが効果はないようだ。
「ふ、ふはははははははーーー!!」
俺の横にいる優は急に笑い出した。ん?とうとうおかしくなったのか。
すると優は周りの目を気にせず叫んだ。何故かきめ顔で。
「・・・というように、上条日奈子は“シスコン”なんじゃーーー!」
優は勝ち誇った顔で言うが、なんでそれを早く言ってくれない!
力が抜け、思わず地面に寝そべる俺に、「しょうがない、それが君の運命だ。」と肩ポンして優は、一足先に学校へ行ってしまった。
肩ポンとか・・・虚しいわ。
遅刻だけは避けようととぼとぼ歩き出した俺は、「運命」について考えていた。
――俺の人生、ほんとに非リア充なのか?
もし、そうだとしたら――辛い、辛すぎる。・・・いや、まだまだこれからだ。俺も「織田」くんのようにハーレムになりたい!じゃあ、どうすればいい?
まずは、自己紹介だ。いつも「ピカピカの高校の2年生」と名乗っているが、それもうやめよう。
次は、顔か?そうだ、顔だよな。洗顔フォームを変えてみよう。今まではお徳用のフォームを使っていたが、ちゃんとしたブランドのものに変えよう。帰りに薬局かホームセンターにでも行ってみるか。
えっと、あとは・・・。
「もう思いつかねーや、我が道を行こう!」と決めた途端、地面がぐらりと揺らいだ。
えっ、えっ!?どうなってるのーー?
混乱状態の俺にさらに追い討ちを掛ける展開が。
「おだくーん、待って~。」
え、俺?後ろから美少女の声がした。ここには「おだ」という人物は俺しかいないはずだ。しかも彼女は俺のことを呼んでいる。ってことは、何?あの女の子は俺の彼女って訳?
「は~い、スイートハニー?」
ばっと彼女のほうを向いたとき、ありえないことに気がついてしまった。
あの彼女、「俺カノラブ」のヒロインの半田湖麻知ちゃんじゃねーか!!
ということは、今の「おだ」くんは俺に向けたものじゃなくて・・・。
「やっと追いついた、織田くん!」
主人公の織田将弘くんに向けたものだったのか!がっくり・・・。
ん?ちょっと待て、落ち込んでいられる場合か!何で将弘くんや湖麻知ちゃんがここにいる訳?
違うか、俺が迷い込んだのか。
「・・・・・・って、どうしよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ということで漫画の世界に入り込んだ俺は、ここで彼女を探しつつ、元の世界に変える方法を探さなければなりませんでした。
「お~い、尾田!」
はっ。誰だ、俺の名を呼ぶのは?
「遅れるぞ学校。」
この野太い声、もしや!
「かなやん、どうしてここに?」
かなやん、もとい、金谷龍之介。お前もこの世界に迷い込んでいたわけか。よかった、一人じゃない!
「お前どうしたんだ?頭狂ったのか?」
かなやんは心配そうに俺を見つめる。なんか、顔近くね?
「かなやんこそ、おかしいだろこの距離!」
なんと俺とかなやんの距離、約10cm。俺とかなやんは身長がほぼ同じだから、今目の前にかなやんの顔がある。ちょちょちょちょっと!待って、待ってまだ心の準備が・・・。
葛藤を続ける俺をよそに、徐々に距離を詰めるかなやん。
もう、どうにでもなれ!そう思い目を閉じる俺。いよいよかと思われた瞬間――。
ぶちっ。何かが引きぬかれた音がした。
「いってーー!何しやがるんだかなやん!」
「ああ、ごめんごめん。痛かったか?」
文句を言う俺に恥ずかしそうに頭を掻くかなやん。
「あ、そうだ、これプレゼント。」
といって、差し出してきたのは――白髪?誰のだよ、これ。
「お前の頭に生えてたぜ。」
え、俺のかよ。彼女がいないからストレスで生えてきてしまったのか?
もしかしてさっき、かなやんと距離が近かったのは。
「一応とってやったんだが、やっぱりそのままにすればよかった。」
ぷぷー!と抑えきれず、噴出すかなやん。笑いすぎだろ。確かにこの年の白髪って変だけど。
まあ、決してそういうことじゃなかったんだ。安心した!
「尾田、何でさっき地面に寝そべっていたんだ?」
え、何で知ってるの?かなやん、あの時いなかったはずじゃあ・・・。
「俺たちは『俺カノラブ』の中にいるはずだろ?」
「は?」
あれ、話がかみ合わない。どういうことだ・・・?
「尾田、またお前の得意な妄想か?ここが『俺カノラブ』の世界なはずないだろ?」
かなやんが呆れたように言う。というか、地味に馬鹿にしただろ!
じゃあ、俺の見た将弘くんと湖麻知ちゃんは・・・。
「小田く~ん。」
「な~に、小町ちゃん。」
げ、あいつら・・・。読書部の1年生カップルじゃねーか。朝からいちゃいちゃしやがって。
「これで分かっただろ、ちゃんと現実と向き合うんだぞ。」
かなやんも俺に肩ポンしてくる。いや、別に俺、現実逃避が趣味なわけじゃないんだけど。
「じゃあ、先に行ってるからな!」
「え、ちょ、まっ」
かなやんちがーーう!変な誤解をするな。え?相談に乗ってあげるって?ちょ、話を大きくするな!
我が道を歩むことはどれだけ大変か実感したある日の出来事だった。 (続く)
太一くんに何をさせたいのか分からなくなってきた今日この頃。
読んで下さりありがとうございます。