新兵器イオ・バスター
「おい、お前また俺のツケで牛丼食ったろ?」
僕は返す言葉がなく、愛想笑いで返事をするしかない。
「しかし、何て量食ってんだよ。」
困り果てたオヤジにロンロンが答える。
「明細に2人前、と書かれているのは、、、私も食べたからで、、、」
オヤジが頭を抱える。
「オヤジごめん。その分追撃数稼ぐからさ。」
「まったく、、、」
オヤジはトボトボとガレージの奥に向かう。今回ばかりは呑気なオヤジも黙ってないか、と覚悟を決めていると、大きな黄土色の厚い布を引き払いつつ、彼はこちらを振り向いた。
「まあ、そう思ってな、」
いつもの白い歯が見えた気がした。そして、マットな白で塗装された大きな兵器が姿を現す。それは大きな牛丼、、、ではなく、
「これが新開発の<イオ・バスター>だ。連日徹夜だ。こいつを担いで行ってくれ。」
その日の午後はバトロイドに乗り、新兵器のチュートリアルに明け暮れた。
「察しの通り、こいつは荒ぶるじゃじゃ馬だ。容赦なく直進するバスターになっちまった。」
「でも、この飛距離なら遠くの敵も倒せる。」
「味方もな。最終兵器並みの出力と<性格>だ。」オヤジが答える。
「要するに正確じゃないわけね。」
ロンロンが珍しく洒落を言ったところで日が暮れた。
そして、新たなる戦線。「コスモ・ドライブ!」という掛け声とともに僕は大気圏の雲を破って突き抜けた。
「おい、今日はお荷物だな。」
新兵器に茶々を入れるのは、民間の戦力でも最大手の戦闘組織「フォーティア」のエリート、名は「ガーラム」。
「集中して。今回は成果を出すのよ。」
モニター越しのロンロンが注意を促す。彼は不満だったのか、ドカンと体当たりをして戦線に去って行った。
「些細なことで傷心しないで。ここは戦場よ。」彼女の母性が光る。
「イオ・バスターは、ここぞ、というときに使ってくれ。一発しか打てないからな。」
この類の武器に2度目がないのは感づいていた。しかし、その怪物的な威力に自信のある情熱が湧いてきた。
戦線。隕石の影に隠れ、スコープで様子を伺う。新兵器の出力ならこの距離でも射程範囲内だ。
しかしながら、敵軍にも、隕石の影を縫って慎重な接近を図る一群があった。とうとうその一派に四方を取り囲まれてしまった。
「我はアンドルス軍影部隊のムラマサ。大砲携え、遠距離より機を待つ汝、打ち取りに参った。」
律儀に名乗り出た彼は長く湾曲した白い長剣を構え、襲いかかる。避けるのに必死だ。
「なるほど、民間兵力に四つのエンジンを持ち、風のごとき身軽さを備えた者がいると聞いたが、汝のことであったか」
一振り、ふた振り、彼の動きはサムライを予感させた。
「この構え、見切れるか?」
彼の刀は大きく円を描き、襲いかかる。
赤いオイルが粒となって浮遊する。僕のバトロイドの血液だ。
「降参するなら緊急脱出で戦線を離脱せよ。汝を殺すつもりはない。」
「で、結局打たなかったわけか。」
戦闘の終了ののち、機体を回収する車内でオヤジが言う。
「まあ、あんなもん打ったところで俺たちが首になるのは目に見えているしなあ。」
「新兵器については改良の余地があるわね。」ロンロンが加える。
しかし、敵軍アンドルスの影部隊のムラマサ、隅には置けない存在だ。