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2・道草

ほのぼの系コメディーとか書いたことがないから分かりません。

 私が思う限り、明音は後に引くような性格ではなかったと思う。褒めてるわけじゃない。猪突猛進と言いたいだけなのだ。

「奏ー」

「えっとね、十六ページの大問三」

「あざーっす!」

 ……適当にページを言っただけなのに。そもそも、十六ページに大問三があるのは国語の教科書だけだったはずだ。次は数学。明音はまた(・・)怒られるのかな。

「奏ちょっと、絶対アンタ適当に言ったろ!? 本当はどこってチャイム鳴ったあ‼」

「七村、静かにしろ」

 最後の台詞を言ったのは誰か、多分言うまでもない。


「揉みしだいてあげるから覚悟なさい」

「あはは、やめてよ」

 結局、明音は今日も先生から説教された。詰め寄ってくる明音をよける。

「今日って六限目までだっけ?」

「うん。今日はあとHRだけ」

 と言うと、明音は両手をあげた。

「おっしゃー終わった終わったー!」

 私も、今日一日の授業が終わったと思うとほっとする。ただし、課題が出ているという注釈は多分明音の脳内にはない。

「……で、何する? 遊ぶ?」

「いやせめて課題やれよ」

「じゃあもし課題が無くて暇ーっ! て時は何する? 寝る以外で」

「えっ……うーん……明音は?」

「エロげ……ネットやる」

「聞こえてるから」

 勿論健全な意味でネットもするんだろうけど。というか、中学までテニス部だったのに何で今では廃人ロードを進んでいるのか分からない。

「奏は?」

「……何かする」

「何その抽象的回答」

「勉強以外の何か」

「さして変わらないけどね」

 案外思いつかないものなんだよね。

「あ、絵描く」

「十五禁? 十八禁?」

「口をつぐもうかこの変態」

 明音と話していると、毎回疲れる。それでも一緒にいるのはやめない。なんでだろうね?

「まあ、課題がなかったらの話だけどね」

「私は課題あってもやるけどな」

「自慢になってないから」

 コイツはどこまでお調子者を貫くつもりなのだろう。少し呆れる。

「ピクシ○? ピ○プロ?」

「まだ言うか。そもそもピアプロって確かジャンルが限られてなかったっけ」

「うん」

 明音が下らないことを言っている間に私は教科書をすべて鞄の中に突っこんで席を立った。

「じゃあね」

「あー待って待って! ゲーセン寄ってこ!」

 明音の言葉なんて聞こえない。そんな風に、私は教室から走り去った。明音はまだ帰る準備すらしてなかったはずだ。

「断るグッバイ!」


 元テニス部に走りで勝てると思った私が馬鹿だった。いやでも校内にいるうちに捕まるとは思ってなかったけど。捕まって、町で一つしかないゲーセンに連れて行かれた。私自身も行きたかったなんて口が裂けても言わない。

「おら音ゲーするぞ」

「リザルト画面写メってツイ○ターに流すのはやめてね」

「なぜ分かった!?」

「図星かよ」

 制服姿でゲーセンを回るのは少しまずいだろうか……。いや、考えすぎかもしれない。楽しみに待ってる明音を見ると、少し悪戯心が湧いてきた。

「あ、そういえばさ」

「どしたー?」

「うちの学校って音ゲーしてるの見つかったら退学らしいね」

「……見つからなきゃいいじゃん?」

 答えるまでの微妙な間が気になった。平気そうな顔をしてるかと思えば、順番が近づいたとき列から離れてしまった。

「ごめんちょっとトイレ行ってくる……」

「嘘だからね!? ゲーセンでゲームしてたくらいで退学とか有り得るわけないからね!?」

「おいてめえ」

 というか、ゲーセンをうろついてるところを見られただけで生徒指導室行きのはずなんだけど。多分明音は留年か退学でなければいいんだろう。停学であっても「学校休めるとかラッキーじゃん!」とか言いだしそうだ(ただしボリュームたっぷりの課題有)。

「あ、こっちいこうぜこっち!」

「ごめんUFOキャッチャー苦手」

「心配しなくても私が取るって」

 と言ってポケットから百円玉を一枚取り出し、こっちにも掌を向けてきた。流れるような所作で。

「いやいや、自分の金でやれよ」

「私が取るって言ってんじゃん。ほら早く」

「……しょうがないなあ」

「手数料であと五十円くらい請求しげぷっ」

「さっさととれ」

 百円かっさらわれた私は、明音の手つきをずっと見ていた。……失敗。気を取り直して二回目。失敗。

「……奏」

「いやもう帰ろうよもういいから要らないから掌をこっちに向けるのやめて」

「百円玉ないんだ」

「帰る。ってかもう帰ろうよいい加げ」

 そう言って振り返るといた。

 担任が。二十六歳現社担当♀の担任が。

 ゲーセンをうろついてるところを見られただけで生徒指導室行きのはず。

「姫雪、七村。明日生徒指導室集合ね」

 寧ろ貴方こそなんでこんなところにいるんですか。明らかに今日見たスーツ姿だったけど。

「あっ、あの……」

 普段は笑顔を振りまく女教師は私の言葉も聞こうとせずに去っていった。

「今の誰? 鬼?」

「うん、いやまあ鬼と言っても間違っては無いね」

「は?」

「とりあえずアンタのせいだ。蹴る」

「待て待てゲふ」

 明日、先生にどう顔向けするべきか。お腹を抑えて蹲っている明音の背中に足を置きながらそんなことをずっと考えていた。

伏線貼ることとか考えたことは全くありません。ゲーセンうろついてるの見られたら(ryというのは書いてたら偶然でてきました(真顔)


そういえば明音は「あきね」と呼びます。

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