14・青嵐フェスティバルLast
ああああああああああ出してしまったあの魔の通知を……!
お気に入り外さずにずっと待って下さってた方々マジすんません。
ちなみにこの三ヵ月鏡花はずっとツイッターやってました。
いや、一応書いてはいたんですよええ。それでもかたつむりペースでしたンゴ
奏は人の行き交う廊下を右往左往しながら明音の姿を探していた。髪はとっくに下ろして、結んでいた髪はポケットの中にしまっている。
「ったくもう……一人にしたら何するか分からないくせに」
ボソッと呟いたそれが言い訳でしかないことは知っていながら、奏は爪先立った。明音は普通の男子と比べても異常にデカイので、人ごみの中にいても目立つはずだ。が、
「……」
周囲から小学生かと思ったという意見が聞こえたが、自分のことではないと確信して廊下から立ち去った。
文化祭も終わりに近づくなか、明音が見つからない。愛沙と望は合流した。千早はまだ自分のクラスの出し物に手をつけている。
「のぞみーん」
「見てない」
渡り廊下で望に声をかけると即刻用件だけが伝えられた。そんな望を、隣にいた愛沙は子供を見る保護者のように笑った。
「呼ばれ方で機嫌を損ねるのもやめなさいよ。子供じゃないんだから」
「……別に、七村が消えたわけじゃないですし。
……まあ、探しておくよ」
その言葉を聞いて数秒ほど真顔だった奏だが、笑顔で頷くと渡り廊下から階段を上がった。
三階、四階と昇っていったが、望の言うとおり明音なんて明日また何食わぬ顔で学校に来るだろう。
大丈夫だ。明日会ったらさっきの仕返しは思いっきりしてやる。
そう思って引き返そうと後ろを向いた瞬間
ぽにゅっ
「……」
「おー、奏」
聴きなれた声と感触。
「どこ行ってたんだ? 結構探したんだぜ」
「こっちの台詞だ!」
明音を突き飛ばした奏。あの柔らかな感覚が頰に戻ってきた。
「あっぶねーなー。ほら、そろそろ後夜祭が始まるんじゃねーか」
悪びれも恥じたりもしない真っ直ぐな態度。今更になっても、奏は彼女を探していたことを悔やんだりしなかった。
「……明音こそ、どこ行ってたの」
「私ー? 私は屋台回ったり出し物のおまけとか取ってったりしてた」
「食い物目当てかよ」
「ん。で三階をうろついてたら丁度お前が目にとまったんだよ。だから追いかけてきたの」
偶然、目にとまったから追いかけた。そんな言葉が頭にとどまりそうになって振り払った。
「さっさと行こう。アイ先輩たちも待ってる」
「おう……ん」
そう言って、奏が階段に足をかけた瞬間に文化祭の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「終わっちゃったなー」
「明音を探してたら文化祭の日が無駄に潰れた」
「はは、そう言うなよ」
奏は答えずに階段を下ってどんどん先を進んでいった。その後を明音が追っていると、奏は愛沙と望の前で立ち止まった。渡り廊下の上から、二人が手を振る。
「せっかくだから、後夜祭くらいは楽しんでみたら?」
楽しそうに愛沙が声をあげた。
八時。
後夜祭も終わりを告げた。明日は文化祭の片づけで半ドン、明後日は代休。一日半のこの暇を奏はどうしようかと迷っていた。
愛沙と望と別れうす暗くなった帰路を明音と一緒に歩いていると、彼女のポケットの中で携帯が震えた。見ると、明音の携帯も震えたいたようで彼女もポケットを探っていた。
スライド式の携帯を起動すると、委員長からメールが届いていた。
「なんだこりゃ? 委員長からメールなんて初めて来たな」
「明音も?」
「ん、一斉送信でクラス皆に送られてるよ」
うなずきながら、奏は件のメールの内容を確認してみた。彼は、「打ち上げやるから来たい人は明日二時に二千円持って定子屋集合。来る奴は返信」とだけ送っていた。
明音は首をかしげて言った。
「定子屋ってどこだ?」
「あれ、知らないの? 前によく遊んだ空き地があったじゃん。あそこに店が建ったんだよ」
と、明音の疑問に応えを返した奏は自分の言葉に妙な違和感を感じた。自分でもなんなのか分からなかったが、考えても分かることではない。
「ん……? それって、小学生のときの……?」
「そうそう、ほらあの――――」
小四のときに引っ越し、中三でまたこの町に戻ってきた奏。彼女が一旦町を去るときに見た明音は、信じ難いが彼女より背も低くインドア思考だった。だからこそ、中三で再会したとき自分の目の前に現れた明音の姿が信じられず、そんな名前の人間は覚えてないと言った。
もちろん、一緒に遊んだことさえ。
「……奏?」
明音の言葉がまともに聞こえてこない。彼女の表情から考えを読みとれない。奏が判断力集中力に著しく欠いているというのもあるが、明音がわざと無表情で奏を見つめているのも原因だった。
「いや、なんでもない……」
「なんでもないって、お前――――」
「それよりさっ、打ち上げどうする? 私はいかなくていいと思ってるけど、どう?」
できるだけ明音の興味をそらそうと、彼女は明音に選択の余地を与えなかった。打ち上げ以外のことを話題に出すな、と目で語りかけていた。残念至極、明音はさっきの彼女の失言を掘り返したくてしかたなかったが、彼女もある程度場の雰囲気には従う人間だった。
「ま、まあ私もいかねーかな……」
ただ、いつも通りの表情なんてできずにただ苦笑いを返すことしかできなかった。
「……あの、奏」
「うるさい、さっさと帰ろう」
それだけ言って、奏はどんどん前を進む。壊れかけて明滅している電灯の下を抜けて、高台への階段を登っているとまた携帯電話が二人を呼び出した。
「……」
心なしか、携帯を開くときも雰囲気が重苦しい。委員長のメールは、参加希望者のみ返信でいいと思って蹴っておいた二人だが、呼びだしたのは愛沙だった。彼女もまた、打ち上げをしようとメールの向こうで言っていた。委員長と違うのは、顔文字を使ってあることくらいか。
おずおずと明音が口を開いた。
「……奏、どうする?」
「……」
しばらく躊躇していたが、奏は何も言えずにいた。しばらくして口を開いて言った。
「や、私はどっちでも……明音はどうしたいの?」
彼女は改めてクラスの打ち上げに行ってもよかったかなとは考えたが、今更明音を振りまわすのも気が引けた。
しかし、明音はニッコリと笑って、
「奏に任せるよ」と言った。
顔が火照るような想いをしながら、奏は行くか行かないか考えを巡らせた。クラスを後回しにするつもりはなかったが、「じゃ、じゃあ行こう……」とだけ言ってまた歩き出した。
「そっか」
明音の爽やかな声で、奏はまた耳まで赤くなるのだった。
高台をそのまま歩き抜けるかと思ったが、奏は鞄を地面に放って、フェンスに寄りかかった。海に面した町を一望しながら、後から歩いてくる明音に問いかけた。
「……ねえ、さっきのことどう思ってる?」
「んー? いや別に何も」
「そんなわけない」
「本当にどうも思ってないよ」
明るい声で、明音は奏を抱きしめた。
「ちょっ……離せ!」
「へへ、可愛いやつだな」
暴れる奏を抑えて、そのさらさらの髪に顔を埋めた。彼女も抵抗しようとしたが、フェンスが自分の首までしかないことに気付いてやめた。
「……いやまあ最初はびっくりしたよ? けどさ、本当は覚えてくれてたんだったら嬉しいかなーって……本当にそれくらいだからさ」
髪の奥から声を聞きながら、奏は溜息を吐いた。
「ホントはさ、なんで正直に言ってくれなかったのとか聞きたかったけど……まあそこは言いたくないこともあるんだろうし」
「別に言いたくないことなんてないけど……」
と返した。そのままずっと明音の声を待ち続けていたが、彼女は全体重をさっきから奏に預けていた。
「じゃあ、教えてあげよっかな」
明音の寝息を聞きながら、彼女はずっと三界町を眺めていた。
前に活動報告で言いましたがポケノベの垢廃止して頂きました。もうポケモン小説は書かないつもりでいますので「ポケモン小説書かない鏡花に何の価値があんの?」って方はお気に入り外して、どうぞ。




