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A.S 新天地を目指して  作者: 飛守 ツヨシ
第一章 過去からの贈り物
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第六節 新たな道~会議~

 夏の厳しさが本番を迎えようとしていた日本列島に便箋である報告が入った。それはA.Sの設立に関する報告だ。

“我々、日本国代表は懇願のA.Sの設立に多くの国や地域からの協力をいただくことができたことを報告します。電子機器の使用が不可能となり、移動手段も制限されている人類に今後の計画は困難なものと思われます。そのため、今後の計画を進行していくうえで必要不可欠となる世界機関『Advancement to Space』通称A.Sを設立することになりました。私、三浦(みうら)沙月(さつき)はその機関の総長となりましたことも続けて報告いたします。

          以上。三浦沙月外務副大臣”


 A.Sの本部は現在ワシントンD.Cの議事堂内に置かれている。まもなく第一回の会議が開催されるところである。

 会議室には約二十名の各国代表者が集結し、その後ろには通訳者と専門家が席に着いている。もちろん他にも賛成派の国々の代表者がいるのだが、ここではそんな代表者のさらなる代表者が集められていた。アメリカ、イギリス、ロシア、中国、オーストラリア、ブラジル、ナイジェリア、アラブ等……。そして会議室に日本代表の三浦が足を踏み入れる。相変わらずのスーツ姿がよく似合う。


「遅れて申し訳ありません。通訳は行き届いているでしょうか? ……それではまず一回目の会議を始めたいと思います。始めに一回目ということでそれぞれの名称を確認していきたいと思います。各国でそれぞれの呼び方があると思いますが、この機関での国際的な呼び方は次の通りです。……まず手元の資料の最後のページを見てください。……そもそもの発端、二〇一三年初めに報告された。地球の外核が著しく停止しかけている現象を“地球危機”。そして地球危機により引き起こされる地磁気の大半の喪失を“地磁気消滅”、それが原因の紛争や戦争を総和して“世界同時戦争”……。それからつい先日、二〇一四年六月に地球の外核で起こったとみられる大地震を“地球大地震”。その結果、地球の外核の流れが完全に停止したとみられる現象を“外核完全停止”とそれぞれ名付けました。……最後に、これからの計画のすべての総和を“方舟計画(はこぶねけいかく)”とします。そして地球の最後を“地球滅亡”と名付けます。……他の細かい名前はそのページを参照としてください」

「……では本題に入ってくれ」

「はい。初めに言っておきます。速報ですがこの地球が完全に住めなくなる。つまり地球滅亡までのカウントダウンは遅くても残り二十年です。……これは速報の値です。遅くなるかもしれませんし、早まるかもしれません。あくまで目安として受け止めてください……」

「二十年!? たったそれだけの間に地球は滅亡してしまうのか?」

「そ、そのカウントダウンの的中率は?」

「十年後に滅亡が起こる確率は約四十五パーセント、十五年後に起こる確率は約七十五パーセント、二十年後に起こる確率は約六十パーセント、そして二十五年後に起こる確率は五パーセント以下です」

 会議室にはざわめきが沸き起こる。

「それではほとんどの確率でこれから二十年後には地球に住めなくなるということですね!」

「そうとっていただいて結構です。……そしてもしも地球に残った場合の生存率は〇パーセントです。だから我々は宇宙に進出しなければいけません! 地球のどこにいようが救われる道はないでしょう」

 あたりは言葉を無くして静まる。

「では早速ですがグループ分けをおこないました。五ページを見てください。……簡単に説明します。まずグループ分けの基準はそれぞれの国の友好度、近さ、技術力、労働力、人口などを踏まえて分けました」

「ここに書かれていない国はどうしたらいいんだ?」

「そちらは近隣の代表国に含まれてしまいますので後ほど詳しく説明します。……それから質問は最後にしていただくとありがたいです」

 三浦は説明を続ける。

「それで第一グループを日本、東南アジア、オセアニアの全ての国。第二グループをアメリカ、カナダ、中南米、それからアフリカ北西の国々です。第三グループはイギリス、EUの各国にアフリカの東部と南部の国、それから中東アジアです。最後に第四グループをロシア、それからその周辺国家、中国や韓国の東アジアとします。……ここまで質問は?」

「分ける理由は何かね?」

「それについては目的をできるだけ達成するためです」

「目的? どういうことかね?」

「では目的とそれまでのプロセスを簡単に説明しましょう。……今後の我々はまず、古代レイサス人の遺した巨大飛行舟(リヴァイアサン)を全力で見つけます。そして技術を応用して十年後には宇宙移民船を完成させ、順次地球を出発して新天地へと向かおうと思っています。……そのためには技術力に富んだ国が必要となり、そして労働力が必要となり、偏らない人口調整が必要となります……。いくら移民船団とはいえ、現段階で一度に五億人を乗せられるほど大きくはできません。だから効率化を図るためにグループに分けた作業が必要となるのです」

「なるほど……だが実際のところこんなグループ分けで大丈夫なのか?」

「今は過去にとらわれている場合ではありません! 確かに過去に大きな問題がある国同士がグループ内に入ることもあるでしょう。でも我々は今生き延びなければならないことを頭に入れてください」

「……では私から最後に聞かせてくれ……。開発した技術力や資源はどうするのかね?」

「技術力の特許申請はできませんし、新技術は直ちに全世界に向けて発信しなければなりません。資源も各産出国がそれぞれのグループに均等になるように無償で分配しなければなりません。……その辺の規定は次回の会議で討論します。……それから、今後は各グループの代表者を決め、そちらの指示に従ってください」

「……つまりはA.Sの機関の下に四つのグループという組織にするのですか?」

「はい。以後はそのグループの代表者がA.Sの会議に出席し、そこでの伝達事項をグループ傘下の国へ伝達する方式を採用します。」

「つまり各国との連携は必須というわけか」

「ええ。なので、この振り分けしたグループは運命共同体だと思ってください。それぞれのグループで開発、造艦し、地球を発ちます。その後の進路は全て任せます」

「…………」

「こんな情報の送信も時間のかかる時代ですので、そちらの方が手っ取り早く作業ができると思いますから。……それではひとまず休憩といきましょう」

 そういうと三浦はテーブルの上にバラバラになった資料をまとめて席を立った。他の代表者もリラックスをした体勢になる。

 三浦は会議室を出た後に一人の研究員が廊下の壁にもたれながら立っているのを見つける。


   【次回予告】

                  C5「突然どうしたんだ?」

 C17「今更だけど言ってもいい?」

          C8「わかった!! …………もう、わかった」

  C23「何のRPGを連想してんだ?」

       C1「久しぶりだな」



   『第七節 西の太陽と東の太陽』


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