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A.S 新天地を目指して  作者: 飛守 ツヨシ
第一章 過去からの贈り物
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第五節 新たな道~提案~

 二〇一四年六月に起こった巨大地震はオーストラリアだけを襲ったものではなかった。というのも地球の“地殻”といったレベルの地震ではなく、計算ではマントルより内側にある“外核”が震央ではないか? という地球規模の大型の地震だと言われている。そのため世界の至る所で同じように大地は大きく揺さぶられた。

 推測では二十五億人の死者・行方不明者を出したと言われているが、そんなものは計算のしようがない。情報によればここ一年でハワイ州は北西方面に約一五〇キロ移動し、アイスランド共和国の面積は八倍にも広がりを見せたとも言われている。

 電波を発するものや磁気を帯びているものは、一年と六ヶ月前からすでに使用不可能な状態が続いていたが、それに追い打ちをかけるように世界中のライフラインは突如として完全に失われてしまった。飢えに苦しむ人々がまた新たな紛争を起こしている。

 まるで地球の最終警告が響き渡ったようだ。


 そんな中、国際連合の本部があるニューヨークに代わって、被害の少ないワシントンD.C.では各国の代表者らによる論争が繰り広げられている。


「これを機に世界を一つにまとめ上げるチャンスだと思います!」

「そういって自分たちの国が世界を統治するように仕組むんだろ? 前みたいに」

「な! どこの国だ? そんなバカな発言をする奴は!!」

「待て……。今はそんな争いをしている暇などないのだよ。我々は生存について考えなければ……」

「……多くの専門家によれば、先日の大地震は外核の完全なる停止を意味しているだろう。と推測しています」

「どうせ世界を惑わし、自分たちが世論から欲せられていると嬉しく思っている奴らでしょう? そんな奴のどこを信じろというのですか?」

「ならあなたはどこを信じていくの?」


 各国の代表者は荒れ狂う言葉の嵐を相手にしているようである。そして誰もが自分の事ばかり考えている発言をする。

 実際の所、そういうことが起こっているのはこの場所だけではない。世界中の全域で、特に陸地で繋がった国同士はさらなる大きな戦争を巻き起こしている。ただ自分たちが生き延びるために……。

「……ではこんな策はどうでしょう?」

 一人の日本人女性が鋭い言葉で場を静める。

 その女性は二十代後半だろうか? 黒く清爽なスーツに、肩まで伸ばした薄茶色い髪。ハッキリとした鋭い声を出す、元自衛官という彼女は一年と六ヶ月前の現象のせいで夫を亡くし、今はちょうど一年と七ヶ月になる息子と二人で暮らしている。

「……では日本国代表の意見を聞いてみようじゃないか?」

 議長国であるアメリカ代表はその女性に回答の場を設けた。

「ありがとうございます。……まず、我々の国が独自に編成した例の文明の調査結果から、先日新たな遺跡を発見しました。しかし現在その遺跡の安否は地震により不明で、我々のチームは全力でその遺跡の確認を進めております。……推測ですが、その遺跡の調査から古代レイサス人が使用したと思われる巨大な空を飛ぶ舟『大型飛行舟(リヴァイアサン)』が地球のどこかにあるだろう、という文献を発見しました。またその動力には全く神秘的なエネルギーが使われているとされます。我々はそれをまず探す必要があるでしょう……」

 その女性の言葉に代表者たちはざわつく。

「静まりたまえ! ……それで? 例えもしそれが見つかったらどうするのかね?」

「日本には数多くの宇宙アニメが存在します。みなさんもご存じがある事でしょう。……しかし我々日本の技術をもってしても未だに実現できていません……。なぜでしょうか? ……それは大抵のそれらのアニメには架空のエネルギー等を使用しているからです。実際にはないものだから自由に宇宙を飛び回る設定が作れる……。ではもしその架空のエネルギーを古代レイサス人が使用していたとしたら、不可能だった出来事が可能となるかもしれません……」

「何を言い出すかと思えばそんなくだらないことかよ……」

「日本はマンガやアニメに憑りつかれているんだ。だからそんな策略しか出てこない!」

 会場には批判の声と罵声が混じりながら響き渡る。

「……確かに離れすぎた話だな。ではあなたならその作戦でどれぐらいの人類……いや、生き物を救えると思うのだ?」

 アメリカ代表は冷静に質問をした。

「現在のあなたたちの反応を見ればおそらくは日本人だけでしょう……。そしてあなたたちは滅亡するのをただ待つだけに過ぎないと判断します。……ですがもしこの作戦に協力していただけるのであれば、おそらくは人類だけではなく、現在生存する動物や植物をも救うことができると思います」

「それにより犠牲になるものはないのかね?」

「……一つだけあります。」

「何かね?」

「地球です!」

 この言葉に誰も口の動きが止まる。それもそのはず、今彼女が言ったことは母なる大地を見捨てると言っているのと同じように聞こえたからだ。

「……しかし、我々は地球を見捨てることなどいたしません。地球は自分で地球の外核を停止しました。ならきっと地球は自分で外核を動かすだろうと思われます。それまでの間我々は地球を離れて生き延び、また地球を目指して戻ってくることを信じて計画にとりかかろうと思っています。……我々には生存する義務があります。ただ争って生き延びられるほどこの世界は容易くありません! 我々日本代表は国際的な統合機関『Advancement to Space(A.S)』の設立を提案し、これで我が国の主張を終わりにします!」

 その瞬間、場内から拍手と歓声の声が上がると同時に、あきれかえって席を外す代表者も出てくる。

 この差が後の生存に大きく関わることとなる。


   【次回予告】

 C19「目的?」

   C4「二十年!?」

C2「……では本題に入ってくれ」

          C27「つまり各国との連携は必須というわけか」

       C8「地球のどこにいようが救われる道はないでしょう」

 C21「大丈夫なのか?」



   『第六節 新たな道~会議~』

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