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A.S 新天地を目指して  作者: 飛守 ツヨシ
第一章 過去からの贈り物
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第四節 蘇る能力

「確かアリススプリングスってもっと活気のありそうな街だと思ったけど……意外と閑静なところだな」

 駅から街に出て辺りを見回した国枝は、昼前になるのに人の姿が極端に見当たらない街並みを見て第一声を果たす。疲れはどうやら落とせたみたいだ。声にだるさを感じられない。

「当たり前じゃない……。この町の産業のほとんどは観光業で成り立っていたけど、例の現象が起こってから代表するウルルを始め、ほとんどのツアーがなくなってしまったの……。それに地殻変動も少しずつ確認できていてね、アリススプリングスの名前の由来である泉が涸れてしまったり、今ではこの町から去っていく人が後を絶たないわ」

 駅から西へ向かった大通りの道を歩きすすむ綾は説明口調で目的地まで案内する。

「あ、でもあれから変わったことがあって、レイサスの文明が見つかってからは世界中の研究者がこの町を拠点として研究しているから、街としてはなんとか成り立っていけるみたい……」

「…………ところでこれからどこに向かうの?」

「とりあえず少し歩いたところに車を呼んであるから、そこで車に乗って……あとは目的地まで向かうだけよ」

「長旅ですね……。確かここから一四〇キロの所までだろ? ならまだ耐えられる範囲だな……」

 国枝は肩を落としてこれからの事を考えるも、どうやら長旅にも慣れてきたらしい。

 綾と国枝は車のある場所まで歩くが、街のあまりの静けさに声を出すこともできなくなる。かといってこの静けさに耐えられない綾は何か話のネタを探そうと頭をフル回転させる。

「……あっ! そういえばさっきこの街の産業は観光業で成り立っているって言ったじゃない。だから少し前に乗った列車は経営破たんになりそうだったの、ツアー客が来ないからね。でもそれを――」

 彼女が話をしている瞬間、国枝がとっさに彼女が説明する口を手でふさいだ。

「静かに…………早くこっちへ!」

 国枝は手でふさいだ口を離し、綾の手首をつかみとると、さっきまでいた駅の方向へ進行方向を逆転する。

「え? でもそっちじゃなくて車はあっちに用意させてあるわ」

「とにかくさっさと来い!」

「……え、ええ……」

 綾は意味も分からず、国枝に引っ張られるまま駅の方角へ走っていく。その瞬間、どこからか地鳴りのような、轟々という低い音が一瞬鳴り響く。直後に大地が大きく左右に揺らぐ。

「え? 地震? こ、こんな所でありえない!」

 とっさに先ほどまでいた後ろを綾が振り見ると、そこには大きく隆起した、波のようなアスファルトがこちらに向かっているのが目に入る。目に入るというより、それしか目につかない。

 揺れの大きさがこの世の大地とは思えないほどに、綾は腰が抜けその場に崩れ落ちる。それを見た国枝は、彼女が歩けない状況だと判断し、とっさに抱きかかえて走る。

「りょ、涼……。いくらなんでも私を抱っこしたままじゃ、あのアスファルトの波に追いつかれるわ!」

 綾は顔を赤くする。しかしアスファルトの波は勢いを鎮める様子がなく、高さを増しながら、まわりにある家や車を呑み込むように迫ってきている。

「ならお前を見捨てて行けって? んなことできるかよ! 歯ぁ食いしばって目でもつぶっとけ!」

 そういうと国枝は目の色を変える。そして走っていた足の動きが次第に加速をしていき、周りから見るとハイウェイを走りぬく自動車と変わらない速度にまで到達する。あまりの速さで綾は忠告通り目を閉じ、風が肌を叩くような感覚を覚えた。あたりでは大地がまだ揺らぎ、足元が不安定な状態だというのに国枝は軽々しく大地の上を走る。

 ふと綾は揺れが治まったように感じられた。また先ほどまで肌を叩いていた風は少しばかり和らいだようにも感じ、彼女はそっと目を開ける。

 そこに広がっていた光景は想像を絶するものだった。

「へ? ちょ、ちょっと涼! なんであなた空を飛べるの?」

 綾は五十メートルほどの高さにいる自分にリアルさを失っていた。

「まぁ実際には飛んでるんじゃなくてジャンプしてるんだけどな……」

「いくら世界チャンピオンでもここまで跳べないわ……」

「今の人間ならな。……それよりお前この高さ怖くないのか?」

 綾は今の言葉に多大なる疑問を憶えた。

「ま、まって! 今の人間ならってどういう事よ!」

 すると国枝たちは放物線で言えばちょうど真ん中の、これから下方向に落ちていく地点を迎え、加速度的に速度が上がりはじめる。

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 さすがの綾も落ちる速度にただではいられなかった。耳元で叫ぶ彼女に国枝は迷惑そうな顔をする。

「……もう一回いうぞ。歯ぁ食いしばれ!」

 国枝は綾にそう告げると着陸の姿勢に入った。重心をやや後ろに傾けさせ、足を斜め前にする姿はまるで飛行機の着陸のようである。

 そして彼らは無事にアリススプリングスの地を再び踏むことができた。しかしその地は廃墟と化し、まるで跡形のない建物が崩れ落ちていた。

 この大地震が世界に与えた影響は……。


   【次回予告】

   C7「ならあなたはどこを信じていくの?」

C20「地球です!」

       C13「何を言い出すかと思えばそんなくだらないことかよ……」

C3「な! どこの国だ? そんなバカな発言をする奴は!!」

   C16「あなたたちは滅亡するのをただ待つだけ」

       C21「これで我が国の主張を終わりにします!」


   『第五節 新たな道~提案~』

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