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A.S 新天地を目指して  作者: 飛守 ツヨシ
第一章 過去からの贈り物
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第十一節 魔法陣と守護神

「ようやく振り切れたか」

 国枝は息を落ち着かせながら後ろを振り向く。

「ねえ涼。さっきの続き、どうしてエネルギーの事知ってたの?」

 綾は洞窟の壁にもたれ、そして腰をズルズルと落とす。

「あ、あぁ。良くわかんねぇんだが、そんな感じかなって。はは、ははは」

 国枝は苦笑いで話題を濁す。しかし、綾もそう簡単に諦める気はなく、彼の言動により注目していこうと考える。

 すると、綾の持っていた予備の懐中電灯の明かりが不安定になり、チカチカと点滅した後に、ついに辺りは暗闇につつまれた。

「はぁ、真っ暗」

 綾は今の現状に落胆する。それは、逃げ切ったこの場所がどこなのか、この暗闇の中どう移動すればいいのか、そして、謎の敵の存在は何なのか? などと絶望に近い状態が頭に思い浮かぶからである。

「あれ?」

 しかし日野はあることに気が付いた。

「薄っすらだけど、明かりが見える?」

 洞窟の先からは、青白い。晴天のような明かりがかすかにだが確認できる。それは絶望の中の綾にとって言えば、一つの希望にも見えただろう。

「あ、さっき言った変な場所ってやつかも」

「そんな話したっけ?」

「お前が途中で遮ったから最後まで話してなかったな」

 そういうと国枝は、腰をついていた綾に手を差し伸べ、彼女をゆっくりと立ち上がらせる。

「あ、ありがと」

 少し度肝を抜かれた綾は照れながらも彼の手を借り、そして二人は光の発する方向へ向かっていく。


「ここだ」

「何? あの青く光る壁?」

「俺もまだ中には入っていないから詳しいことは分かんないんだけど」

 到着したその部屋というか、大きな空間の大きさと言ったら、綾が今まで研究してきた遺跡の中で最大と言ってもいいぐらいの大きさで、数百人単位の人を集めることのできる集会場のように見て取れる。そして綾はその壁から発せられる、まるで宝石のような青白い輝きについ見とれてしまう。

「どうしたんだ? 行かないのか?」

 綾がふと我に返ると、国枝はすでにその大きな部屋に足を踏み入れていた。

「あ、ちょっと待ちなさいよ」

「そこ、滑るから気を付けろよ」

「え? う、うん」

 部屋の中央の一番大きな壁に近づくと、綾はあることに気が付いた。

「ウソ? この青色に光ってるのって、もしかして全て文字なの?」

「どうやらそうらしいな」

「さすがの私も、ここまで文字が多いと解明するのに途方に暮れるわ」

 すると、国枝が壁の前に立ち、ゆっくりと壁に右手をあて、そっと目を閉じる。驚いたことに、それに応えるように文字の青色が明るくなったり、暗くなったりと点滅したのだ。


「……なるほどな」

 しばらくして国枝の口が開いた。

「何が?」

「この文字についてだよ」

 国枝はそっと右手を壁から離し、ふさいでいた目も開ける。

「この文字はすべて術式、つまりは魔法を発動させる空間、魔法陣みたいなものだ。」

「意味が分からないんですけど。っていうか待って、あんたどうやって?」

 国枝が部屋全体を見渡す。

「この遺跡全体は、この部屋の文字の力によって影響を得ているっていうこと。ってことは……。ちょっと一緒に探してほしいものがあるんだけど」

 国枝は綾の質問を無視して、強引に話を進める。

「この部屋の壁のどこかに、青く光っていない文字があるはずだ。手分けしてそれを探してくれ」

「何よ。人の話も聞かないくせに、命令ばかりして」

 綾はそうつぶやきながらも、言われたとおり二手に分かれて青く光っていない文字を探し出した。


「ねえ。何で光らない文字があるってわかったの?」

 綾が問いかける。

「さっき、この部屋の青い文字は魔法陣のようなものだって言っただろ? でも、それとは別に違った意味を持つ文字があるはずなんだ」

「なるほどね。で、あんた。なんで魔法陣やらってわかったのよ」

「そ、それは――」

「あ、あったわよ。これのことじゃないの?」

 どうやら綾はその光らない文字を見つけたようだ。国枝の返答を後回しにする。

「これぐらいの量なら私にも解析できるわ」

 そういうとウエストバッグからメモ帳を取り出した。

「再び開かれる地底の箱。ソロの晴れにはまた日が昇る。……これは暗号ね」

「暗号?」

「ええ、この文章自体にはこれといった意味はないはずよ。暗号っていうのはこれまでもいくつかの遺跡でたびたび発見されてきたのだけれど、その明確なアリゴリズムはまだ見つかっていないの」

 その瞬間、部屋の壁を勢いよく破壊して“アイツ”が姿を現した。そして、ようやく明るい部屋に現れたことによって、その全体像が分かってきた。

 体長はざっと二メートルほど、グレイの光沢をした岩石のような姿をし、ゴーレムと言っても異議はまったくない。

「あ、あいつは……? 綾、その暗号今すぐ解けそうか?」

「残念ながら解明されてないアリゴリズムだから程遠い時間がかかるわ」

「なら、そこをどいて先に逃げてろ!」

 国枝はそう言って、暗号の前に立っている綾をどかす。

「ちょっと、あんたはどうするのよ?」

「俺はこの暗号を解いてみるから! それが終わったらすぐに後を追う」

「? まさか素人が解けるとでも思ってるの?」

「いいからさっさと行け! アイツがこっちまで来ちまうだろ」

「わ、わかったわよ。取り敢えずこの洞窟をまっすぐ行ったところに居とくから」

 綾はそう言って、近くにあった洞窟に向かって走っていった。

「……ま、綾の言う通り、俺にこの暗号が解けないぐらい分かってるんだが。一つ試してみたいことがあったしな。少し相手になってくれないか? さん」


   【次回予告】

       C8「ぅ……グハッ」

  C2「とっとと終わらせてやるぜ」

                C6「クソッ」

           C3「なるほどね」



   『第十二節 蒼き文字の力』

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