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A.S 新天地を目指して  作者: 飛守 ツヨシ
第一章 過去からの贈り物
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第十節 機械仕掛け

 どれほど歩いたのだろうか? 暗晦な洞窟を興味津々と歩く綾は、ここが今まで見つかってきた遺跡と雰囲気が違うということを直感的に感じ取る。

「何か重要な場所なのかしら?」

 そうつぶやき、洞窟内に描かれた多種の模様をメモ帳に記し、その遺跡の目的などを炙りだす。

 すると、模様の一部にレイサスの文字が彫られているのに気付く。

「やっと文字が出たか……。何々? 起源、我々、ナージャルに立ち向かう、対峙、発信。きたきたきた」

 綾のテンションはゆるやかなカーブを描きながら上昇する。

「えっと、ナージャルって言うのは万物の創始者だから、彼らが戦いを始めるきっかけとなったところ? いや。戦うって意味じゃないのかも。対峙だから……。あ! また別の文字。この場、新しい、求められる衝撃の、魔力あり。魔力って、もしかしてここは――」

 その瞬間、ズシンと低く共鳴する洞窟内は、パラパラと内壁から塵が舞い落ちる。そして徐々に大きな揺れが綾を襲った。

「え? また地震!?」

 しかし以前の地震とは違い、その揺れはあっという間に過ぎ去っていく。

「地震というより洞窟が揺れてる感じだね。で、魔力っていうのが出てきたな。魔力の意味は架空のエネルギー“スライド”のことだから、っていうことはここがエネルギーの発見の原点って事!?」

 ついに綾のテンションは頂点に到達し、その場ではしゃぎ始める。

 ここで得られた情報を整理すると、地球に異変が起こったおよそ一万四千年前。レイサス人はこの場所でスライドエネルギーと呼ばれるエネルギーを発見した。つまりここが架空のエネルギーの手掛かりの場所である。

 彼女の心は焦るばかりで、先ほどの揺れを気にする様子はほとんど見当たらない。それどころか、ゆっくりだった歩くスピードを駆け足になるまで彼女を突き動かす。それほどこの文明に対する彼女の想いが強いのだろう。

 しかし、そのスピードは長くは続かなかった。

 先ほどの揺れがリズムに合わせながら大きくなっていくのが分かる。ズシン……ズシン。と、まるで巨人の歩行かと思わせるそれは、低く、そして大きくなってきた。

「な、何なのよ。進撃の巨神じゃないでしょうね・・・」

 さっきまでのハイテンションから一転、綾の心は完全にその揺れに塗り替えられた。逃げ出すにも足がぐらついて言うことが聞かず、これ以上言葉すら出ないほど怯えているのがわかる。


「きゃぁぁぁ!!」


 突然、綾は後ろから右肩を叩かれた感覚を覚え、洞窟内に大きく響き渡る悲鳴を上げた。

「俺だ! 静かにしろ!」

 そこにいたのは国枝だった。国枝は耳元で、そしてできるだけ小さな声で彼女にそういった。

「涼。どうしてこんなところに?」

「あ~? メモが置いてあったからこっちに来たんだろうが。それから……」

「何?」

「そ、そのぉ。少し寒いから、その上着返してくれないか?」

 カッターシャツ一枚の国枝にとって、この洞窟の冷気はあまりにも酷すぎる温度である。

「あ、ごめん」

 そういって綾は素直に返そうとするが、ふと彼シャツならぬ彼ジャケ状態なのに気づく。が、ジャケットじゃあんまりキュンと来ないわね。と落胆のため息を出す。

「ん? どうかしたか?」

「いーや、別に」

「何怒ってんだよ」

「何も怒ってなんか――」

 すると、静まっていた揺れと低い重音は、さらに大きくなっているのがわかった。

「チッ。こっちだ。ついてこい!」

 一度舌打ちをした国枝は、綾の手首をつかんでは洞窟の脇に隠れるように存在していた別通路へと彼女を案内する。


 幾分か走ると、国枝は音が小さくなるのを感じとり、走るのを止める。

「何だったの、今の音」

「多分、ここにはある機械仕掛けが施してあったんだと思う」

「機械仕掛け?」

「あぁ。こことはまた別の通路に大きな空間を見つけたんだ。そこは淡青に輝く何かがたくさんあってさ」

「待って、話の意味が分からないわ。私はあれが何なのか訊ねたの」

 綾は回りくどい説明は無しにして、もっと簡潔化するように国枝に託した。

「えっと。俺たちがこの遺跡にたどり着いた時に、さっき言った仕掛けが発動したんだ。んでさ、“アイツ”を最初に見た時は味方だと思ったぜ。でも、いきなり攻撃してくるんだから味方なわけないよな。って言うことで――」

「なに私まで巻き込んでるのよ!!」

「バッ! お前の声響くんだよっ。さっきも何はしゃいでたんか知らないが、洞窟中お前の声で満ち溢れてたぞ」

「はしゃぐって、さっき出会う前のこと?」

「あぁ」

 綾はさっきの自分のテンションに、今更羞恥心を覚え始める

「あはは、あれはね――」

「スライドエネルギーが見つかったんだろ?」

 国枝は、なぜか彼女の言おうとしていた内容を口に出した。

「どうして?」

「ん? ……あっほら、お前のせいで“アイツ”もどうやらこっちの道に気づいたみたいだな。来い!」

 国枝は綾の手首を再びつかむと、通路のさらにさらに奥へと突き進む。対して彼女は何が何やらサッパリ理解できない様子だったが、ただ一点、“彼が隠し事をしている”という()()を覚えつつあった。


   【次回予告】

   C14「あ、ちょっと待ちなさいよ」

        C7「あ、さっき言った変な場所ってやつかも」

              C3「はは、ははは」

 C17「ウソ?」

     C24「魔法陣?」



   『第十一節 魔法陣と守護神」

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