14 ジルベール視点
はあ、だるい。
俺がなんでこんな発情女のお守りをしなきゃなんないんだ。
臭いし、汚らしい。
陛下の命令で発情女のお守りになっていなければ、絶対に視界にも入れない。それくらい嫌いだ。
早くシシュカの元に戻りたいって思って家に帰ろうとする度に、いっつもあの発情女が邪魔をしていた。
王宮内では取り巻きを引き連れて、公衆の面前で恋愛ごっこを繰り広げているが、そのうち痴情沙汰で殺されるだろうな。それがあの発情女にはお似合いだが。
俺は一人考え事をしながら久々に執務室へと入った。
そこには険しい顔をした親父が腕を組み、座っていた。
「ジルベール、よく戻ってきた」
「ああ、親父。助かったよ。あのくそ女のせいで俺のシシュカが辛い目に遭ったんだ。相応の覚悟をしてもらわないと……」
「相変わらずお前というやつは。そんなに執着していたらシシュカだって困るだろう」
「シシュカは俺のことが大好きだから何にも問題ないさ。で、なんで親父がシシュカの妊娠を俺より先に知っていたんだ?」
「おいおい、息子が親に嫉妬か? シシュカの妊娠を知ったのはたまたまだ。シシュカと執務室で話をしていたんだが、シシュカの顔色が悪くなり、エドが心配して声を掛けたことで知った。王女にあんなことを言われ、シシュカは不安だったんだろう。ジルベールに話せていないと泣きそうになっていたしな」
「やっぱり王女は生かしておけないな。今すぐ始末しよう」
「報告書は読んだか?」
「いや、まだだ」
「そうか。なら今、読んでおけ」
父はそう言いながら机に置いてあった報告書を俺に手渡した。
報告書は雇った書記の名前や商会の押印がされている。しっかりしたもののようだ。報告書に目を通すうちに、その内容に怒りが込み上げてくる。
……殺す。
絶対にあのクソ女を殺す!
「ジルベール、怒りたい気持ちは分かるが、その書類を破くなよ」
「ああ! もちろんだっ! やっぱり殺す!」
俺のシシュカに対する王女の暴言に怒りが込み上げる。あんな女のどこがいいんだ。
さっぱりわからん。どんなに間違っても、俺はあんな発情女を選ぶことはない。
あのクソ女のせいでシシュカの体調が悪いのだと思うと、苛々が止まらない。
もし、これで子供が流れたりしたら王宮で暴れても許されるだろう。
俺は報告書を読み、机に置いた。
「親父、これを陛下に見せたんだろう? よく無事で帰って来れたな」
「ああ、その場に宰相がいたからな。宰相にも諭されていたぞ」
「シシュカが危ない。俺がシシュカを傍に置いてずっと守っていたいが、陛下のおかげで俺は超多忙なんだ。王女の婚姻をつつがなく進めるためにも、しばらく王宮に泊まり込むしかない。安全のためにもシシュカには領地に戻ってもらった方がいいだろうな」
「それがシシュカにとっても心落ち着くし、一番だが、まだ妊娠初期で流産しやすいと聞いている。安定期に入るまで動かさない方がいいだろう」
「仕事を辞めてシシュカの傍に居たい」
「……お前がいなかったら王女の婚約が取り消されるぞ」
「よし、やっぱり始末しよう」
俺は苛々しながらも父とエドと三人で今の状況を話し、情報共有をおこなった。
シシュカは体調が安定したら伯爵家の領地に向かうことになった。
今、俺が長く邸にいられないため、シシュカを守るため、父に邸に留まることを願った。




