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助けて下さいっ!王女様が私の旦那様を狙ってくるんですっ!  作者: まるねこ


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「シシュカ、どうしたんだ?」

「お見苦しい姿を見せてすみません」


 私はすぐに足を延ばし、楽な体勢を取り、お腹を撫でながら息を整える。


「大丈夫か!?」

「お義父様、大丈夫です。こうしていればすぐに元に戻ります」

「ま、まさかっ」


 義父は私の様子を見てすぐに気づいたようだ。目を丸くし、あわあわと動き始めた。


「お義父様、お、落ち着いてください」

「お、落ち着いていられるか。孫、孫なんだろう!? 孫が、孫が。本当にシシュカ、子供が出来たのか?」

「お義父様、黙っていてごめんなさい。まだ妊娠初期で落ち着くまでは誰にも知らせずにいたのですが……」

「ジルベールに知らせるんだ。心配ですぐに戻ってくる。エド、すぐに早馬を!」


 義父は立ち上がり、エドに大声で指示を出している。


「待ってください。それが……」


 私はお義父の行動に言葉を濁しながら止めた。


「まだ、ジルは私に子供が出来たことを知らないんです」

「どういうことだっ!?」

「伝えようと思っていたんですが、ジルが家に戻らなくて、そのまま伝えられずになっていて……」

「そうか、そうか。無理しないんだ。とにかく今は休まないとな。そうか、そうか」


 私は喜ぶ義父の姿をみて嬉しくもあり、少し恥ずかしい気持ちもある。


 エドと義父の従者に支えられ、私は自室へと戻った。


 すぐに医者が呼ばれたが、当分の間またベッドの住人となるように言いつけられた。


 医者の話を聞いた義父は、もし私が王宮に呼ばれたら身体を張ってでも止めると息巻いていたわ。




 しばらくベッドで休んでいると、また人の動く音が聞こえてきた。早い足音が私の部屋へと向かってくるのが分かる。


「シシュカ!!!」


 勢いよく扉が開かれ、大声で私の名を呼んだのは、ジルベールだった。


「……ジル」


 彼は大股でベッド脇まで歩いて勢いよく座った。


「君の体調が優れないと父から聞いた。体調は大丈夫かな」


 ジルはぎゅうぎゅうと抱き着くように腕を回し、頬を寄せてきた。ふふっ、やっぱりジルはジルね。いつもの彼の行動を見て締め付けられていた心が解れていく。


「ジル、だめよ。あんまりぎゅうぎゅうしちゃ」

「どうしてだい? いつもシシュカは許してくれただろう?」

「だって、あんまり強くしちゃうと子供も苦しくなっちゃうわ」


「えっ……? 今、なんて言ったんだい?」


 ジルは私の言葉を聞いて動きがピタッと止まった。


 そしてゆっくりと手を放し、唾を飲み込む仕草をしながら真剣な表情で聞いてきた。


 私はようやくジルに伝えられた嬉しさで涙が溢れてくる。


「あんまり強く抱いちゃうとお腹の中の子供も苦しくなっちゃうわって言ったの」

「お腹の、中の、子供……?」


 すると、ジルベールはぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。


「もう、ジルったら。ほら、涙を拭いて。赤ちゃんも困ってしまうわ」

「だって、だって、僕とシシュカの子供だよ? 夢にまで見た二人の子供。嬉しい。嬉しいよ。どう表現すればいいか分からないくらい嬉しいんだ」


「私も嬉しいわ。ようやく、ようやくジルに伝えることができたんだもの」

「ごめんね、シシュカ。心配かけたよね。最近、あの鬱陶しい王女がずっとべったり纏わりついてきて、ずっと苛々していたんだ。甘くっさい香水付けてさ、気持ち悪くていっつも吐くのを我慢していたんだ。とっても辛かった」


「でも、この間、夜にエドがジルに書類を持っていった時は王女様の部屋に呼ばれて一夜を明かしたんでしょう?」

「違う、違う。あんな見た目だけの極悪女と一夜を共にするなんて考えたくもない。

 シシュカの手紙を読もうとした時、あの女に呼ばれたんだ。王女宮に出向いたんだけど、扉を開けた瞬間にあの女、薄い服で僕に抱きついてきたんだ」

「抱きついてきたの?」


 私はその様子を想像し、嫌な気分になった。


 ジルは私をそっと抱き寄せ、首元をクンクンと嗅ぎ始めた。


「僕にはやっぱりシシュカしかいないんだ。シシュカの香りが僕の心を落ち着かせてくれる」

「もうっ、ジルったら。それでどうしたの?」


「僕さ、一生懸命我慢したんだ。でも、耐えきれなくなって……」

「耐えきれなくなって?」

「突き飛ばしてそのまま吐いた」

「吐いたの!?」


「うん、吐いた。盛大にね。あの女に掛らなかっただけでも頑張ったと思うよ」

「よく貴族牢に放り込まれなかったわね」

「連日の仕事で体調不良だったことになったんだ。本当に危なかったよ」


 ジルはそう言って私に頬ずりしている。


 やっぱりジルはジルよね。


 ちょっとでも王女様に気があるんじゃないかって不安になっていた私の思いは、やはり取り越し苦労だった。


 彼は幼い頃からとても匂いに敏感で香水などは特に嫌っていたの。


 私も王都の貴族が使うような香りの強い香水はあまり得意じゃないかな。ジルが言うには私の体臭?はミルクのような香りなんですって。「甘くて優しい香り。シシュカの香りが大好き」と言っていつも二人の時は甘えて匂いを嗅がれてしまうの。


 くすぐったいけど、それでジルが落ち着くならと放っておいている。


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