表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が、世界を壊す前に  作者: ピザやすし
終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

第27話 終わらなかった世界で

かの者 四つの翼を広げ

少女を護りて 闇を討つ


空から 光の羽根が舞い

その奇跡を示す


そして その英雄は――



街の広場で吟遊詩人が英雄譚を歌う。

かつて世界を闇が覆い、それを払った少年と少女の物語。


少し離れた木陰で、その歌を聞く男がいた。

男は、手のひらの上でアパールを浮かべていた。

吟遊詩人の歌が区切りを迎える。

歓声が上がり、礼をする吟遊詩人。

その様子を見ながら、浮かべていた果実を齧る。

赤い果実は、瑞々しい音を立てる。

「……甘いな。」

その言葉は、その果実に向けられたものなのか、それともこの世界に向けられたものなのか。

男の顔はフードに隠され、その表情は見えなかった。

ただ、この世界を、この空を、慈しんでいるように見えた。

男は、果実を食べ終えた後も、しばらくそうしていた。


不意に、誰に向けるでもなく呟く。

「……俺が、間違っていたんだ……」

言い終えると男は立ち上がる。

そして、もう一度空を見上げる。

空を目に焼き付けるように、立ち尽くしていた。

顔を戻し、近くの魔法陣まで歩き、魔力を込める。

パキッと石の割れる音が小さく響き、魔法陣が輝きだす。

男は無言で魔法陣の中央に立つ。

その顔には、悲愴と決意が浮かんでいた。

男の姿が歪み、揺らぎ、そして消えた。


残された魔法陣の輝きが緩やかに消えていく。

吹く風が、やがて砂を被せ、そこに魔法陣が描かれていたことも忘れさせていくだろう。

ただ、男の見上げていた澄んだ空が、そこに取り残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ