表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が、世界を壊す前に  作者: ピザやすし
第二楽章 真実を求める者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/38

第12話 交差しない想い

会議は終わりへと向かっていた。

議題は出尽くし、結論は曖昧なまま。

合同調査の実施は決定されたが、それは何も分かっていない、と言うのと同義だった。

疲労だけが皆の顔に浮かんでいた。


長く沈黙を貫いていた東国代表が静かに言葉を紡ぐ。

「報告書、一通り読ませていただきました。」

透き通るような声が広い室内に響く。

「報告書にある、この少女。その子は、祈っていたのです。」

黒を基調とした異国風の衣服を纏ったその女性は、静かに目を閉じる。

髪留めの飾りが静かに揺れる。

その姿は、まるで少女の祈りと自らを重ねている様だった。

樹霊連邦代表の老神官が静かに言葉を続ける。

「……風が泣いておったのだ。」

抽象的な物言いに、真意を掴みかねる。

「わが国には竜が住んでおりましてな。彼らが教えてくれるのです。風が泣いていた、と。独りで、泣いていた、と。」

円卓に静寂が戻る。

その神秘的な物言いが、場に沈黙を落としていた。

自由同盟代表の発言は無かった。

彼は地図を見ながら考えていた。

使用不能な交易路の数は幾つで、代替経路はどこが使えるか、と。

祈りも風も、彼にとっては相場変動の一因に過ぎなかった。


会議が終わり、王国宰相は安堵の溜息を吐く。

近衛を呼び、そっと耳打ちする。

「王女殿下のご様子は。」

「はっ。安定されておられる、とのことです。」

静かに答える。


王城の一室。

サクラが茶を淹れていた。

シアは淹れてもらったティーカップを持とうとするが、自分の手が震えていることに気付き、そっと引いた。

サクラがその震えに静かに手を重ねる。

「大丈夫です。お嬢様。安心してください。」

「……ありがとう、サクラ……。」

気付くと震えは止まっていた。

窓からは明るい光が差し込み、白い鳥が空を舞っているのが見える。

その羽根が一枚、風に運ばれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ