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妹が、世界を壊す前に  作者: ピザやすし
第二楽章 真実を求める者たち
15/17

EX-04 証言整理報告書

件名:災厄終息時に関する証言整理報告書


発信:アルケマリア技術連邦・調査監察局

宛先:国際災厄会議 各国代表団

区分:中秘(非公開会議資料)


提出目的:

本報告書は、旧帝国領域にて発生した大規模災厄の終息時における、各地で保護された民間人、冒険者、旧帝国軍関係者から得られた証言を整理・分類し、災厄に関わる現象および終息時に観測されたとされる人物像について、会議審議の参考資料として提出するものである。


前提事項:

本報告書に記載された証言は、魔力波観測や術式記録ではなく、災厄直後に現地で救助された証言者からの主観的証言に基づくものである。

一部の証言者は極度の情動負荷下にあり、記憶の混濁、象徴化傾向が顕著であることを予め断っておく。


I. 災厄の印象と知覚崩壊


・「光が落ちてきたあと、何も聞こえなくなった。風も、人の声も、鼓動の音も消えて、ただ焼け焦げた匂いだけが残っていた」

 ──保護された避難民(成人男性)


・「雪が地面を全部覆ってた。でも、どこまで歩いても同じで……気づいたら、時間が止まってた気がした」

 ──護衛任務に従事していた冒険者


・「何も思い出せない。見た気がするけど、思い出そうとすると息が詰まる。何かが間違ってた。思い出しちゃいけない気がする」

 ──旧帝国軍兵士(記憶混濁・情動過敏症例)


これらの証言は、災厄の中心あるいはその直近に接触したと見られる者に共通して、音の消失、視覚情報の遮断、記憶の断絶を含む知覚的崩壊状態が報告されている。


II. 『少女』に関する目撃証言


・「光の中に、小さな影が立っていた。少女に見えた。顔は……よく見えなかった。でも、泣いてた気がする」

 ──戦場周辺の避難者(女性)


・「あれは裁きだった。神が降りてきて、娘の姿で、我々を罰していたんだ。」

 ──旧帝国軍将校(情動混濁あり)


・「女の子が浮かんでた。吹雪の中、ただ、そこにいた」

 ──救助活動に参加していた冒険者


複数の証言に共通する「少女」「泣いていた」「裁き」「中心にいた」という語句から、災厄の現象と一体化した人物像の存在が暗示されている。


III. 『羽根を持つ者』の抱擁に関する証言


・「羽のある人が、お姫さまを抱いてたの。空から降りてきたの。……天使さまみたいだった」

 ──保護された子ども(推定5〜6歳)


・「白い羽根のようなものが光の中を舞っていた。誰かが少女を抱いていたと思う。影だけだったけど、あれは……守っていた」

 ──冒険者(視認証言)


・「一人の者が立っていた。背から何か白いものが広がっていた。煙か、光か、羽根か……。覚えてるのに、すぐ消える」

 ──難民(記憶断続)


これらの証言では、『少女』と同時に現れた別の存在──背に羽根のような光を携えた『誰か』──が少女を抱きしめていた、という共通する視覚印象が確認される。現象の終息と同時に目撃されたことから、災厄の沈静に関与した可能性が示唆される。


IV. 結論と照会事項


本証言整理では、以下の三要素が独立して浮かび上がっている:


1. 災厄発生時における知覚の異常と記憶の断絶

2. 吹雪の中心に現れたとされる『少女』の存在

3. その少女を抱きしめていた、『羽を持つ存在』の目撃


これらは魔力波観測の断絶領域とも時間的に近接しており、相互に関連する可能性がある。


当局としては、これらの証言により、以下の点について王国に対し照会を行いたい:


・【王女の所在】 災厄終息時における王女殿下の具体的な位置・活動の確認

・【関与存在の把握】 少女を抱いていた『羽根を持つ者』の正体に関する王国側の認識

・【災厄の性質】 本件災厄の発生および終息に関する王国の見解と、各証言との整合性の評価


本報告書は、あくまで主観的証言に基づくものであるが、共通する視覚・印象情報の反復は偶発とは言い難く、王国による説明の補助または再検証のための補足資料となることを意図して提出する。


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