EX-02 第八地質調査班報告書
件名:旧帝国領における地表構造変質の記録
(災厄後地質調査)
発信:ルーヴェルミュール錬金公国 地質調査院 第八調査班
宛先:公国院本局・対外災異対策局
機密区分:内部流通資料(要再解析・一部追跡調査継続中)
※本報告は、現地調査に基づく初期記録であり、魔力干渉の有無については本調査範囲外とされている。
なお、当該調査は旧帝国との国境線における地形安定性の確認、および国境警備隊より報告された地表変質に対応するものとして、公国の管理範囲内にて非武装・短期間の調査として実施された。
他国主権の干渉や領土的主張を意図するものではなく、純粋に錬金術的知見による構造変性評価を目的としている。
一、調査の背景と目的
帝国消失後、公国国境付近の旧帝国領地域において、耕作地の黒化・表層の亀裂・不自然な地面沈下等の現象が断続的に報告されていた。
特に、旧帝国鉄道網の支線沿いに近接する村落跡地にて、土壌の焼結・脆化とみられる現象が複数確認されたため、本院は現地の構造変質を把握すべく、地質調査院第八班を派遣し、熱的および錬金術的構造解析を実施した。
二、地表構造および熱変質の記録
調査地点において、以下のような高熱起因と思われる物理的変質が複数認められた。
表層部(深度1〜5cm)は一部で焼成土化が進行し、赤褐色から黒色への変化が顕著に観察された。
砂質を含む地表では、粒子の溶融によって生じたガラス質層が形成されていた(平均深度4〜7cm)。
地中にて、粘土層と砂礫層の混合・癒着構造が不連続的に分布し、急速加熱と冷却の繰り返しがあった可能性を示す。
この種の構造変性は、降雨・風化・季節乾燥などの通常環境変化では説明が困難であり、また人為的火災によるものとするには、焼成温度と範囲の広がりが不自然である。
三、局所的蒸散構造と空隙痕
焼結域の直下にて、多数の多孔質空洞および蒸散痕が観察された。
特に、急速に膨張した水蒸気によると思われる破砕状構造(泡状の空洞)が断続的に見られ、これは地中水分が短時間で蒸発・膨張した際の反応跡と一致する。
このような蒸散性空隙は、地下からの噴出ではなく、上方からの加熱刺激に起因するものと推定され、地表を『通過した』あるいは『突発的に発生した』高熱源の存在を示唆する。
四、魔力的干渉の可能性に関する注記
一部の現地観測担当より、土壌構造の崩壊に対し「過去の術式焼成跡と感覚的に異なる」との指摘があった。
当調査班は魔力解析機器を持たず、本調査の目的は錬金術的構造評価に限定されているため、魔力の存在または干渉については一切の評価を行っていない。
本件に関するさらなる解明は、必要に応じて後続の調査班に委ねられるべきである。
五、結論および評価
現地の地層変質は、通常の環境変化・経年劣化・人為的火災では説明が困難な構造的変化を複数示しており、これらは瞬間的な高熱刺激による非可逆的焼成変化と判断される。
当該地域は農地としての再利用に重大な支障があると評価され、数年以上の地層修復措置を講じない限り、回復は見込まれない。
本報告は、ルーヴェルミュール錬金公国の観点より、
旧帝国領土における災厄の影響が、魔術的行使の届かぬ外縁地にまで拡大し得ることを初めて構造的に記録したものであり、今後の地形安定化対策および越境災異への対処において参考資料とされたい。




