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妹が、世界を壊す前に  作者: ピザやすし
第二楽章 真実を求める者たち
12/20

EX-01 第十三観測局報告書

件名:帝国領域における特異魔力波形の観測記録

(災厄発生当夜)


発信:アルケマリア技術連邦・第十三観測局

宛先:技術連邦・対災異常干渉委員会/外交局

機密区分:準機密(閲覧制限:中位評議員以上)

※本報告は、当局観測ログの統合および初期解析をもとに作成されたものです。提出日および観測開始時刻は、記録再接続の誤差補正後に確定予定。


一、報告概要

本報告書は、第十三観測局において記録された、帝国領域における広域魔力波形の異常および特異点形成に関する観測記録と初期解析結果を取りまとめたものである。


記録された魔力波形は、従来の術式分類または自然発生変動のいずれにも該当せず、帝都の消失を含む災厄との因果的関係が強く示唆される。

あわせて、戦場付近にて確認された局所波形の観測消失現象は、観測史上初となる特異点形成の可能性を含み、記録上特記されるべき異常事象である。


本件は、魔術的災厄の予兆検知および広域干渉評価の限界を示すものであり、国際的な観測体制の再整備が必要である。


二、通信障害と観測データの復旧

災厄発生とほぼ同時刻、旧帝都領内の発電設備群が崩壊、これにより旧帝国通信網の広域断絶が確認された。

当観測局を含む外縁地域との魔術通信も最大12分間にわたり途絶し、この間の観測データは各地装置の自律記録に依存する形となった。


通信回復後、断続的に回収されたログは本局にて統合解析が行われ、今回の報告に至っている。

本事象を契機に、技術連邦評議会では魔術波通信網の本格整備が議題化されている(別報告書参照)。


三、帝国全域における魔力波形の異常変動

解析の結果、災厄直前において帝国全域にわたる広域的な魔力波形の異常振幅が複数拠点で記録された。

これらの波形は、通常の生活圏・軍事演習・儀礼魔術などいずれの影響とも整合せず、局地的ではなく国土単位での均質な異常変動である。


特に周波数の広域乱れと断続的な増幅干渉が特徴であり、波源の集中を示す明確なピークは検出されていない。

これは、既知の大規模術式による魔力放出ではなく、環境魔力自体の乱調に類する現象と考えられる。


四、帝都付近における密度異常域の確認

回収された観測ログの中でも、帝都中心部周辺においては他地域と比較して極めて高密度な魔力変動域が記録されている。


装置の空間分解能上、「帝都付近」としか記録されていないが、その地点で観測された異常干渉密度および継続時間の異様さから、本局では当該区域を暫定的な災厄発生主領域と位置付けることを推奨する。


五、戦場付近における観測不能領域(特異点)

旧帝国東部、王国との国境付近の戦場地域において、災厄発生直前に人為的な魔力波形が一時的に観測されている。


この波形は、王女殿下の過去演示記録と一致しないものであり、別種の存在であると判断される。

しかし災厄発生とほぼ同時に、同地域において全観測波形が断絶。その後は一切の記録が得られていない。


本局では、当該地点に形成された高密度干渉領域を仮称として「観測不能領域(特異点)」と定義し、初動記録の消失と干渉波形の断絶から、以降の王女の動向を現行技術上、追跡可能性は否定されるとの見解を有する。


六、王女の関与に関する観測的所見(注記)

災厄発生前の短時間、戦場付近において過去に観測された王女殿下の魔力波形と類似性を示す存在が記録されている。

だが、それ以降の追跡は不可能であり、魔導国家側にて確認された記録との照合も現在は未成立である。


七、結論

現行の定常観測装置においても、帝国領域における広域魔力波形の異常は検出可能であった。

しかしながら、空間的な分解能と通信網の脆弱性により、災厄の発生地点・規模・発生契機の正確な把握には至らなかった。


また、災厄後の戦場付近において発生したと見られる観測不能領域(特異点)は、既存理論における観測障壁または遮断現象と一致せず、今後の理論整理および技術的対応の対象とすべき新たな現象である。


本局としては、広域観測網の高密度化、および観測データの多国間共有による早期警戒体制の構築を、技術的見地から強く推奨する。

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