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シンデレラはガラスの靴を叩き割る〜魔法師団第四部隊アリスティアの場合〜  作者: 藤沢 一


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20話 仮面舞踏会編 ~仮面の下には~

「その言葉を待っていた」


案内人の男は小さく笑うと、セシルを拘束していた手を離し、その銃口をバラス伯爵のこめかみに当てた。


男は自分の仮面を剥ぎ捨てる。

露わになったのは、セシルをここへ呼んだはずの魔団第二隊長――カイだった。


「いやー、困ってたんだよね。伯爵ほどのお人を押さえるとなると、“決定的な一言”が要る。……それこそ、王族の命を害するような何かが、ね」


カイがバラス伯爵を拘束するのを見ると、アリスティアはガラスの靴を床に落とし、リシェリアの元へ駆け寄った。

解放されたセシルは即座に虎男の元へ行き、彼を背に庇った。


アリスティアはバラス伯爵とカイのやりとりを見つめながら、セシルに声をかける。


「……あなた、知っていたの?」


「……いや、俺はカイさんからこのお方のおそばにってことしか知らなかったよ」


セシルが小さく苦笑いする。


「俺が知ってたら、流石に姫さまをここには連れてこない」


その声に、虎頭の男がわずかに肩を揺らした。

――笑ったのか、息を呑んだのかは、仮面越しではアリスティアには分からなかった。


「――セシル」


アリスティアは息を潜めたまま、セシルの袖を引いた。


「その方は……」


セシルは一瞬だけ逡巡し、そして、諦めたように口を開く。


「……ラウル殿下。ここから先は危ないですので、自分の背後に」


虎頭の男――ラウル王太子は、仮面の奥で小さく頷いた。


次の瞬間、廊下の先で複数の足音が重なった。

扉が蹴破られ、黒い魔道服を着た男たちが雪崩れ込む。

先頭に立っていたのは、アリスティアのよく知る人物たちで。

バークやフレデリック、レインなど見知った顔が並んでいた。


「魔団だ。全員、武装解除しろ!」


バークの怒号が部屋中に響いた。

それと同時に遠くで響いていた競りの声が、途切れた。

あっという間に部屋を制圧すると、バラス伯爵を拘束していたカイは、その場で拘束魔道具を受け取り、バラス伯爵にかけた。


「バラス・ヴァント。リシェリア殿下並びに隣国の王太子であらせられるラウル殿下に害を成したとして、反逆罪で拘束する!」


カイに拘束され、味方がいないことを悟ったバラス伯爵は大きく項垂れた。



***



カイたち魔2がバラス伯爵を連行していき、魔4が後始末をしている中。

アリスティアたちがケガの手当てをしてもらっていると、バークがのしのしとアリスティアたちの方へ歩いてきた。


「いやー、お疲れさん。……殿下方もご無事で何よりです」


全くこの人は相変わらずはちゃめちゃだとアリスティアは少し呆れながら、バークを見た。


「……隊長。さすがにこれは無茶が過ぎるのではないでしょうか」


「カイがいるし、それにお前たちもいるんだ。実際リシェリア様やラウル様も大丈夫だったろう?」


「それにしても無謀すぎます!私何も聞かされてないのですが!」


アリスティアがバークに噛み付くと、バークはガハハと大きな口を開けて笑った。


「敵を騙すならまず味方からってな!」


バークにバシバシと肩を叩かれながら、アリスティアはため息をついた。


「でも、まぁ、よくやったよ。アリス。さすが俺の部下だ!」


バークはぐしゃぐしゃっと雑にアリスティアの頭を撫でた。

その大きな手のひらに、アリスティアは緊張がほぐれ、思わず涙が滲んだ。


「……期待に応えられたなら良かったです」


うんうん。と頷くバークにアリスティアが涙を堪えていると、バークはクルっとセシルの方に顔を向けた。


「セシル君。君のアリスへの想いはわかったが、こいつを泣かしたら、俺たち魔団がぶっ飛ばしに行くからな?」


わーっはっはっはと言いたいことだけ言うと、絶句する彼らを置いて、バークは去って行った。

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