第13話〜社交界の中心で恋を叫ぶな!〜
アリスティアがドレスから騎士服に着替えると、待っていたのはランデックの叱責だった。
舞踏会の会場手前の廊下でアリスティアはそこで彼女を待ち構えていたランデックに頭を下げる。
「……ふざけんなよ。だから俺はお前なんかをリシェリア様付きにするのが嫌だったんだ。」
ランデックの言葉にアリスティアは、自分だってリシェリア様付きになることを望んだわけではないという思いをグッと堪えながら、再度ランデックに謝罪した。
「大変申し訳ありません」
「ちっ……もう良い。リシェリア様がお呼びだ。」
ランデックは苛立ちながらも、アリスティアをリシェリアの待つ控えの間に行くように指示をした。
アリスティアが退室した後、リシェリアが彼女を連れてくるように伝えたらしい。
先ほどの会場でのやりとりを見ていたリシェリアが自分に何を言うのか、アリスティアは叱責される覚悟でリシェリアの待つ部屋に入ると、アリスティアの予想に反してリシェリアは明るい様子で彼女を部屋に迎え入れた。
「もう、シャルロットも酷いわね!気にしなくて良かったのに」
アリスティアに駆け寄りながらリシェリアは跳ねるようにそう話すと、アリスティアと共に来たランデックを見ると、続け様に口を開いた。
「これから彼女と女の子同士の話をするからあなたは外で待ってて」
リシェリアは笑顔でランデックにそう言うと、彼は不意を突かれた顔をして、アリスティアをジロリと一瞥すると、そのまま退室した。
ランデックが退室した後、アリスティアは改めてリシェリアに頭を下げた。
「お手を煩わせて申し訳ありませんでした」
リシェリアはアリスティアの謝罪を受け入れると、彼女の手をぎゅっと握って問いかける。
「ねぇ、アリスティア。……あなたもしかして、セシルのこと、好きなの?」
リシェリアの目は不安気に揺れながらアリスを捉えている。
その様子にアリスは慌てて返事する。
「い、いえ!そのようなことは!彼とは仕事で何度か顔を合わせておりまして、今日もそのよしみで声をかけてきただけだと思います!!」
セシルは彼の事情でアリスティアをダンスに誘ったようだが、こちらも自分を守らせてもらう。と、アリスティアはリシェリアの誤解を訂正する。
最近顔馴染みになって、会うたびに絡まれることは事実だが、交際している事実はないし、ただでさえ、先ほどのダンスで悪目立ちしてご令嬢から目をつけられたばかりなのに、このお姫様にまで目の敵にされてしまったら、業務どころではなくなってしまう。
それに、先ほどシャルロットに言われた犯罪者の娘であると言うことは誤魔化しようのない事実であるし、そんな自分を好きになる人なんかいるわけないし、そもそも誰かを好きになる資格などない。
相手が高貴な身分であるが故にこんなあけすけなことは言えないが、これを言えたらどんなに楽だろうかと思いながら、なんとかアリスティアはリシェリアの誤解を解こうと必死になる。
アリスティアが慌てて否定する様子を見たリシェリアは、ほっとしたように胸を撫で下ろした。
「あー!良かった!せっかくあなたに恋の協力をしてもらおうと思っていたのに、ライバルだったら大変!って思ってたの!!」
浮かれたように話すリシェリアに、アリスティアはあはは、と乾いた笑いを漏らした。
リシェリアが近くにいた侍女に、ミレイユの言う通り、やっぱり私の勘違いだったわ!とはしゃぐ様子をアリスティアが苦笑いしながら見ていたら、急に何かを思い出したリシェリアがアリスティアの方を振り返った。
「あ!そうだ!今日はもう着替えちゃったけど、シャルロットの言うことなんか気にすることないわ!私が良いって言ってるんだから、これからもドレスでいいからね?」
リシェリアはニコニコしながらアリスティアにとんでもない爆弾を言い放った。
は?正気?あんなに揉めたのに?
頭の中に浮かんだ言葉を口に出さなかった自分を褒めてやりたい。
すんでのところで押し黙り、アリスティアはリシェリアに返事をする。
「……かしこまりました」
シャルロットもひどいわと文句を言っているリシェリアを眺めながら、そういえばリシェリア様とシャルロット様はあまり気が合わないご様子だとかなんとか誰かが言っていたなぁと思い返しながら、アリスティアはとんでもないものに自分が巻き込まれてしまっているんじゃないかと言う考えがよぎり、体を震わせた。
「あとね、あなたにお願いがあるの!」
まだ何かあるのか、とアリスティアは恐る恐る返事をする。
「なんでしょう?」
「セシルの好みの女の子がどういう女性か聞いてきてほしいの!」




