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シンデレラはガラスの靴を叩き割る〜魔法師団第四部隊アリスティアの場合〜  作者: 藤沢 一


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第10話 王女護衛編 ~シンデレラは夢を見る~

私は生まれた時から運命が決められていた。

両親はクレール侯爵家に仕えている執事と侍女で、その2人がクレール家の奥様が妊娠した時に合わせて生まれたのが私だ。

私が生まれたのと時期を同じくしてお生まれになったクレール家唯一のお嬢様、シャルロット様は、美しい金色の豊かな髪の毛が輝くお姫様のようなお方で。

私はそばかすが顔中に散りばまれた平凡な顔立ちで、なんの変哲もない茶色のクセの強い髪をしていて、生まれた時からシャルロット様の陰に隠れるようにして過ごしていた。

私の両親を含めた周りの大人たちはみんなシャルロット様ばかりを褒め称え、私は誰からも見られることもなく、彼女のそばで笑うしかなくて。

社交的で快活なシャルロット様はいつも口を開くと私にこう言った。


「フローラ、早くして」


誰からも顧みられることのない私に寄り添ってくれたのは、物語の世界だけだった。


そして私はとうとう、私の王子様を見つけた。


……はずだったのに。


赤毛の彼女は、私の王子様をいとも簡単に奪い去ってしまった。


セシル様は、私たちの世代では憧れの王子様のようなお方だ。

いつもは男性からダンスに誘われてもツンとしているシャルロット様も、セシル様の前では頬を赤らめ、目を輝かせている。

そして、セシル様はシャルロット様とお話されている時でさえ、私みたいな者にもその優しい笑顔を向け、わざわざお話してくださるのだ。

セシル様は、舞踏会でお会いするたびに、シャルロット様やリシェリア様がいても、いつも私に甘い視線を送ってくれて。

だから私もこっそりとセシル様に熱い眼差しを送って。

それが私とセシル様、2人だけの逢瀬だった。


あの日、あの忌まわしい舞踏会の日。


シャルロット様がいつの間にかいなくなっていたセシル様を探しに行くと言い出して、私はシャルロット様と2人でセシル様を探しに中庭に向かった。

するとそこで私たちが見たのは、赤い髪をした顔の見えない女性が、はしたなくもセシル様にしなだれかかる姿だった……


私とシャルロット様は急いでその場から逃げ出し、社交界では見覚えのない赤毛の女性を、みんなに聞いてまわったけれど、私たちの周りにそんな女性を知る人は誰1人いなかった。

名前も知らないその赤毛の女性は、それ以来姿を現すこともなかったから、きっと気まぐれな娼婦か何かが紛れ込んでセシル様を困らせたのよと言う、シャルロット様の言葉を私は信じて、忘れることにしたのに。


なのに。


なんで、彼女が王女殿下であるリシェリア様の隣にいるの……?


あれは、夢だったんじゃないの?


あの舞踏会の夜、赤毛の彼女とセシル様が触れ合っていた、あの光景。

私がずっと目をそらしてきたあの幻が、どうして──


今、ここにあるのだろう。



***



セシル様は王太子殿下であるレオニス様と共に、近くにいた多くの女性を掻き分け、リシェリア様に挨拶をすると、すぐにリシェリア様の少し後ろに控えていた赤毛の女性にも声をかけていた。


その赤毛の彼女は、はしたなくもリシェリア様がレオニス様とおしゃべりなさっている時にセシル様に近寄られ、顔を赤らめて眉を顰めている。


何を話しているかは分からないけれど、きっと誰にでも優しいセシル様に気を遣わせることでも話したのだろう。


私の隣でその様子を扇子を固く握りしめながら見ていたシャルロット様が、目を燃えたぎらせ、彼女たちの方へ向かおうとした瞬間、ダンスの時間が始まってしまった。


すると、なんということだろうか。

リシェリア様がレオニス様とファーストダンスを踊ることを良いことに、セシル様から赤毛の女はダンスの誘いを受けていた。

そして、あろうことか、シャルロット様を差し置いてその女はセシル様の手を取ったのだ。


「なんて身の程知らずな傲慢な女なの」


わなわなと扇子を持った手を震わせ、シャルロット様はそう小さくつぶやいた。


私たちの視線の先では、その女に、セシル様は輝くような笑顔で、彼女の手を取り踊り出した。


シャルロット様は、じっと赤毛の女を見つめていたと思ったら、突然壁際にいた護衛に声をかけた。


「あなた、あの、セシル様と踊ってる彼女をご存知?」


「はっ!彼女は最近王女殿下付きに臨時で護衛騎士として配属されたアリスティア・ノールと言うものであります。」


「ノーム家ってたしか、お家断絶してたわよね」


シャルロット様はそう呟くと、ダンスを終えたアリスティア嬢の元へとツカツカと歩み寄っていった。


私は、シャルロット様の後を静かについて行く。

あの、おとぎ話のような彼女はどうなってしまうのか、言いようのない高揚感に満ちていた。


ここまでお付き合いありがとうございます!


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