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アラサーの私、結婚したくて今日、祠を壊します! ~壊したら嫁にしてくれるなんてとても都合のいい話ですね?~  作者: あかね
祠を壊した私が祠の主と結婚するまでの七か月

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今日、検証します!

 発熱の翌日に熱は下がった。お薬が効いたのだろう。せっかく買ってきた冷凍庫に入れて凍らすタイプのアイスノンは使わなかった。普通、常温で販売されているので買った直後使えない。保冷材のほうが役に立つという事実に打ちひしがれていた。

 それはともかく、熱が下がっても出社は見送った。病院を受診する予定である。

 予約は入れているので時間に合わせていけばいい。お昼ちょっと前に行けばいいので微妙に時間が余っている。


「ちょっと話してもいい? この数日体調不良だから遠慮してたけど、確認したほうがいいことがある」


 涼さんにそう話を切り出された。

 まずは昨日にやってきたモノのこと。

 あったことを順を追って説明していくと涼さんの表情が曇っていった。


「ぼくのおよめさん、そういったんだね?」


「はい」


 確認する涼さんは頭が痛そうだった。


「僕はてっきりどこかで変なのに好かれて付きまとわれてるだと思っていたんだ。

 それほどはっきりとした匂いがしたわけでもないからね。遠くからじっと見ている程度だったらそうだと思うだろ? あのお兄さんに憑いていたときも同じだし」


「私は全く存じ上げておりませんが、そんな感じ?」


「そんな感じ。多少の殺気くらいはね、あー、やってんなぁくらいだったけど。

 まさか、浮気許すまじだったとは」


「……はい?」


「話を聞く限りでは現状、君はあの怪異と既婚あるいは婚約状態なんだよね……」


「結婚も婚約もした覚えないんだけど」


「あの兄が勝手に契約したんだろ。

 君をあげるから、幸運とか富とか出世とかをもらう約束とかをさ」


 言われてみれば、兄はなんだか運が良かった。

 学生時代の友人と立ち上げた会社はほどほどに儲かっているらしいし、羽振りはいい。義姉もいい人であることはもちろん実家は太いとか聞いたような。

 

「でも、そういう約束って即時もってかれたりしません?」


「連れていけないくらいの加護があるから無理じゃないかな」


 首をかしげる私に涼さんは苦笑した。


「僕が祠に悪さしたと気絶させて宿送りをあきらめるような強さはあるよ」


「あ、あれ、そういう」


「まあ、都会に遊びに行ければいいかと思ったところもあるけど。退屈はしてたんだよね。

 それはともかく、長年待ってたのに他のモノに持ってかれるのは嫌だと頑張ったんだとおもう。悪いことした」


「……ええと、婚約者チェンジな方向で?」


 後悔しているような口ぶりに私は不安になってくる。


「あれ、人型取れないくらいに崩れちゃってるからお披露目にはむかない。

 それに今、連れていかれて行方不明になると疑惑は僕に向くのでやめてほしい」


 ほっとした。

 なんか、アレは怖い。


「あれはダメで僕はいいんだ?」


「なんか、かわいいので」


「人型はそうかもしれないけど」


「元の姿のあのぐんにょりした触手みたいなの時々くるって巻いててかわいい。かぱっと開くおくちが絵本の狼みたいな愛らしさがあって。あと手触りがっ!」


「特殊性癖だった」


「たことかクラゲみたいな可愛さが、あの姿にはあると思うの。あとあのがばっとはクリオネみたいな」


 特殊じゃない。ぬいぐるみにしたいような普遍的可愛さがある。

 そう訴えたかったが、冷ややかに見られたので黙った。


「それは置いといて。

 ひとまず契約破棄をしよう。君に利益がある状態ならともかく、よくない状況だからね。与えたものは奪われるが、自業自得だ。

 ご家族がいるなら悪いけど、離婚してもらったほうがいい。娘さんはいるのかい?」


「姪っ子がいる。今6歳。来月で7歳になるかな」


「……よくないな。

 破棄じゃなく譲渡になりかねない。ちょっとご家族に会えるかな」


「義姉さんなら快く応じてくれると思う」


 兄には直接連絡しない。前々から断られ続きではあったのだ。


「じゃあ、そういうことで。

 さて、そろそろ病院に行こうか」


「あ、行ってきますね」


 ゆっくり歩いていけば予約時間より前につけそうだ。

 さっさと準備して出ていこうとすると止められた。涼さんもお出かけするようだ。


「今日はどこに行くの?」


「なんで、昨日の今日で一人で出かけさせると思うんだい?」


 呆れたように言われて、心配されたという事実にびっくりした。


「ご両親に守ると約束してしまったし、すくなくとも契約期間中はここにいさせてあげるよ」


「ありがとうございます」


 別にと言いながらそっぽを向かれてしまった。髪に擬態している触手のようなものがうねうねしていた。動揺するとちょっと動くのを私は知っている。

 ちょっとばかりニヤニヤしてしまったのは内緒である。


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