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今日、友達と会います!

「なぁんてお方を連れ出してきたのっ!」


 スタバに響き渡る声に私は顔をしかめた。お隣でも同じように顔をしかめている涼さんがいる。


「この度は我が愚かなる友人が多大なるご迷惑をおかけいたしました」


 友人に急に頭を押さえられ、下げさせられた。


 これが、祠から偽装婚約してくれそうな怪異捕まえたという報告した翌日のことである。

 祠破損から通算三日目のことである。


 友人であるアリアは退魔師である。夫と子もありながらも現役で、あちこちを飛び回っていた。ハードワークをこなす体力がもうないと引退しよっかなーとこの数年聞いているが、今のところできそうにないらしい。


 そのアリアが祠の件の首尾を聞いてきたのだ。多少は加護をやったのだから、ケモ耳男子を拾っただろうと。

 話がかみ合わず、涼さんに聞いたのだ。ほかにあの山にはいたのか?と。トータル5匹くらいいたらしい。知らないで壊しに来たのか、引きが良かったなと皮肉を言われた。

 本当にまずいのもいたらしい。


 そして、おすすめされた人じゃないほかの人みたいと話をすれば、すぐに紹介しろと言われたのだ。

 そうして、仕事終わりに待ち合わせをしてスタバにいる。

 周囲が一瞬ぎょっとしたように視線を向けたが、それだけだった。関わりたくないという雰囲気をひしひしと感じている。

 ただ、店員さんが心配そうに見ていた。


 すみません。すぐ出ていきます。営業妨害する気はありませんと拝んでおいた。


「じゃあ、このお方、誰?」


 こそっとアリアに尋ねる。呆れたような視線が二人分。当人に聞くのはちょっとまずいかなと思ったのだけど。


「山神様」


「え、山神様って近いところで、行くのは奥の方って聞いた」


「そっちは行くなといった」


 酔っ払いの記憶というのは、かわいそうなものである。


「手前にあったでしょ。朽ちそうな祠」


「いや、真新しいのはあった。新築なのであっちが偉い人なのかなって」


 あれこそ新築って感じだった。


「壊したやつがいて、すったもんだの末に、新築と3年の油揚げで買収されていた」


「情報が古かったせいで……」


「あんなの冗談じゃない。マジで壊しに行く狂人とは思わないわよっ!」


「本当にな」


 分が悪い。冷静になると本当に私がおかしいのを自覚するだけに。それほど追い込まれていたのだという話ではあるが。

 別に陽葵は一人で大丈夫っしょと言われるけどさぁ。言うほど大丈夫でもないのだ。

 今の人生に不満がないわけでもないが、それなりに満足はしている。

 ただ、うちの子も中学生になってとか聞くと発生しなかった別ルートに思いを馳せたりするのだ。反抗期の娘とかとバトルする話はちょっと怖いんだけど。

 アリアのお宅は家系的にそう言う系統で、娘さんもそう言う感じで、親子喧嘩は式神で殴り合うらしい。ロボットファイトみたいなもんといわれるが、それはどうなんだろう。

 普通のご家族は反抗期といってもロボットファイトしないはずだ。


「本当に、申し訳ございません。

 コレには言い聞かせるのでお戻りされても」


「いや、ただ宿と思って満喫するから問題はないよ。

 契約もしちゃったからね」


「なに約束したの」


「半年間の衣食住の提供、あとは祭壇作って祀る」


「…………本当に申し訳ございません」


 涼さんは肩をすくめた。破格だったらしい。

 そこからは友人同士の話があるだろうと涼さんが席を外した。別のお店に行くではなく、視界内の別の席に移動し本を取り出している。

 あからさまにヘッドフォンを取り出して、つけているが、ああいう人たちってその程度で聞き耳を立てられなくなるということもないからな……。

 聞いてないという態度だが聞かれているかもしれない。そう言う前提で話さねばならない。


 つまりは本人がいないと言えないことは言わない。


「ちょっと、肝が冷えるというところじゃないわ。

 今、どういう状態なの?」


「憑いてる、って言ってたけど」


「ちょいまち。

 憑いた」


「そう」


「体調は?」


「変わりなく」


 はぁっと長いため息をつかれた。


「化け物か」


「怪異だよね」


「陽葵の話。

 その地域の生気をうっすら吸ってああいうモノたちは存在を維持している。本体ではなくとも飲食できるほどの顕現している存在をあなた一人で支えているの。バフがあるにしても、とんでもなく疲れるはずなのに!」


「むしろ調子がいいかな」


「ああ、陽葵、あなた、大当たり引いたのよ。あなただけの大当たり」


 よくわからないが、よほどのことだったらしい。

 アリアは鞄に手を入れて、一つの封筒を取り出した。


「ダメになりそうになったら、このお札を破って。

 うちで一番の腕利きが助けに来るから」


「え、旦那さん?」


「おじいちゃんみたいな感じ。

 いい? あのおかたたちは、人の領域では大人しくしているけれど、個人領域ではそうではない」


「わかってるって」


 アリアと付き合いが長い。それこそ20年以上は付き合っているのだ。それがらみの巻き添えを食らったことも一度や二度ではない。それでも付き合いをやめなかった私を見くびってもらっては困る。

 私を見るとアリアは困ったように眉を寄せた。


「……はぁ。変に慣れてるから心配なのよ」


「大丈夫だって。

 あ、結婚式の招待状って、旦那さんと二人がいい? お子さんたち来てくれそう?」


「毛を逆立てるじゃすまないから、夫とあたしと一族の代表を連れていくわ」


「了解。

 で、最近どうなの」


「どうって言われてもねぇ」


 そうやって、いつもの話を始めることにした。

 アリアが手元を見ずに書かれた紙にはこう書かれている。


 憑いた後に死んでも構わなかったのだと思うわ。と。

いつもお姉さんが、怪異に魅入られたとかバレた日にはうちで大暴動が、と頭を抱える友人が一人。

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