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アラサーの私、結婚したくて今日、祠を壊します! ~壊したら嫁にしてくれるなんてとても都合のいい話ですね?~  作者: あかね
その後……

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それって実は?

 それは素朴な疑問から発生した。


「その服って、変化するとできるんだよね?」


 そう言ったのは陽葵だった。

 晩酌込みの金曜の夕食中のことだった。入籍を済ませたものの同居の予定は立っていない。そのため、週末だけは一緒に過ごそうということに決めていた。

 実際は、半分くらい夜にお邪魔しているが。神棚経由の異動は時間もお金も短縮してお得だった。


 今日はのんびりと平日に見れなったテレビ番組を流し見していた。ちょうど番組では衣替えの小技などの特集をしていた。

 服からの連想でたどり着いたんだろう。


「そうだけど」


 僕の本来の姿はふっさふさの球体、触手付き。世を忍ぶ仮の姿はごく普通の一般男性である。その変化には服の擬態も含む。普通に服を着るときも多いけど、急に何かとなると大体、自前だ。三パターン程度で季節対応している。

 そういうと陽葵はうむむと唸っていた。


「つまり、皮が変化してる?」


「表面をこう、……違うな。なるべき姿があってそれの擬態。逆に最初から全裸でというのは無理」


 本性から人の形になるがその時に着ている服を消して別の服を着ることになる。今まで変だと思ったことはない。


「本性に戻りそうなときは服を別に着ることはないかな。服が破けることもあるし」


「……つまり、あれは全裸」


 ぜんら? 言葉の意味はわかるが、その意図がわからない。


「裸族だったんだ」


「服着てるだろ」


「残念ながら、皮は服とは認められません」


「服は服の形状をしていたら服だ。だいたい、隠すべきところは隠れてるだろ」


「それはそーですけどー」


「あれが全裸ってんだったら、本性はあれこそ」


 服着てない。といいかけて黙った。つまり、裸族といわれてしまう。


「大丈夫です。私、あれは毛皮のある動物的ななんかだと思ってますので!」


 慈愛の微笑みを浮かべて言い切られた。それだけでなく動物扱いされたことにも衝撃を受けた。ただでさえ、触手がペット扱いされているのに。


「……いちおうね、化け物なんだよ。僕は」


「こんな愛らしいのに!?」


 ダメだ、酔っ払いだ。

 陽葵は、ちょっとばかり陽気になりすぎる。色々積極的にも。普通は抑えているのか、この時だけ特別なのかはわからないが。

 ねぇ一郎君と触手の一本に餌付けを始めそうなところを止めた。あいつら、ちょっとグルメになってきて困ってるんだ。


「ほら、新しい家電だってよ」


「おもしろそーだね」


 話題の変更に成功した。そのあとは何事もなかったように過ごしたが。

 ……全裸。

 今まで、本性の姿にそんなこと考えたことがなく気にもしてないのに言われたらなんだかとても気になる。

 ひとまず、毛布を常備しようと思った。



 それから数日して毛布をかけて転がりテレビを見ていたら。


「あれ、毛布? どしたの?」


 といってもぞもぞと侵入を試みる彼女がいた。自分の発言のすべてを忘れたかのような所業である。ぴとっとくっついてくるところが、あーもーという気分にさせる。

 なにみてんの? というからリモコンを操作してタイトルを見せる。


『都市伝説の謎に迫る7日間サバイバル』


 現実のではなく、ゲーム実況である。


「怪異が、都市伝説の動画見て楽しいの?」


「なんか知り合いが取り上げられてちょっと面白い」


「えー、じゃあ、このオババさんとか」


「紹介する?」


「お断りします。怖いんで」


 化け物と暮らしてどころか、結婚しておきながら怖いと。


「僕は?」


「終始、かわいくてかっこい」


「……真顔で言うのやめてくれる?」


「照れてる」


「うるさいなぁ」


 褒められ慣れないとか、誰かと一緒にいることに慣れないとか、気がついてそうなのに。


「ちょっと止めておいて。

 お茶持ってくる」


 チラ見のつもりが本腰を入れて動画を見るつもりらしい。意外と怖い動画なんだけど大丈夫だろうか。

 まあ、怖いなら、一緒に寝ようぜ! と来るだろう。私を守る栄誉をなんて言いながらさっさと寝落ちする。

 そういうのも悪くはないと思うところがほんとうに絆されていると思う。

 何気ない普通の生活がそこにあるならそれはいつも手に入らなかった幸せというヤツなのだろう。

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