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アラサーの私、結婚したくて今日、祠を壊します! ~壊したら嫁にしてくれるなんてとても都合のいい話ですね?~  作者: あかね
いかれた人間と結婚するまでの七か月

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罠作成中。

 山というのは人の子を捧げられやすい。恐ろしいものがいる。荒ぶるものがさらったという思い込みが実際の怖いものを作り出してしまうことも。

 そもそも、山のことならともかく、そうではない畑や田んぼの不作すら山のせいであったりすることもある。豊穣を願うにしても、うちじゃない感はすごくある。


 今は気象条件や自然現象と言われるものもかつては山神様の怒りと片付けられてきた。


 陽葵とその兄に憑いているものは、そういう捧げられた結果発生してしまったものだろう。質的に僕にかなり近い。近代では珍しくなってきているものだ。

 今は、学校の怪談や都市伝説からの新種はかなり増えていていてそっちが主流になりつつあるし。そういう新入りもそれらも古くからあったという誤情報で強化されたりもしていたりするから昔からいますけどなにか? という態度だったりする。

 でもまあ、人の思いやらなんやらが凝り固まったものであるのは違いはない気はする。

 だから、本物の祀られる神々とは格が違う。僕が圧倒的に下っ端であるという意味で。


「はじめてお目にかかります」


 アリアからの呼び出しにより、訪れた先にいたのはいつぞやお会いしたツイ様だった。

 ぎょっとしたが、初対面なふりをした。

 おそらくあの時は勝手についてきて、勝手に釘差ししたんだろうから。ばれるとアリアに過保護だのなんだの言い募られそうだ。扱いを見ているとおじいちゃんと孫みたいなように見える。

 相手も察してくれたのかそっけない。


「うむ。初めましてだな。

 陽葵が迷惑をかけた。まあ、いまもかけているが」


「べつにひなちゃんが悪いってわけでもないでしょ。

 あ、こっち、夫」


 そう言って紹介してくれた人はやはり見覚えがあった。彼がおや? と言いたげにい表情が変わったところで初対面のふりはやめることにした。


「どうも、お久しぶりです」


「いつもお世話になっています。こんな機会で顔を会わせるとは思いませんでした」


「……知り合い?」


「ほら、サバゲ―の山貸してくれる人」


 怪訝そうに僕を見るアリア。

 あ、ああっ! と声をあげた。やっぱり気がついていなかったらしい。まあ、年に数度、それもあいさつ程度では気がつかなくても仕方ないだろう。そもそも気配を消しまくってたと言うところもある。


「すみません、いつもお世話になっております。うっかりしちゃって?」


「認識をちょっとずらしていたので同一個体という認識はできなかったんでしょう。お気になさらず」


 雰囲気も変わっているはずだ。仕事とプライベートであるし、こちらに来ているのは一部で弱いほうだった。今はあまり変わりもないと思うけど。


 それでもアリアは恐縮していた。それではと珈琲をおごってもらうことにした。それで話がつけば気楽なものだ。


 今日呼び出された先はアリアの知り合いが経営している珈琲店だった。個人営業で赤字ではあるが、本業で稼ぎ過ぎた分の課税対策の店らしい。店主の趣味なのか、古式ゆかしき喫茶店といった風情である。

 店主はカウンターでサイフォン式の珈琲を淹れている。

 そっち系の関係者ということで口止めも特に必要ないらしい。


 ここにいるのは、怪異一匹、祓い屋(関係者含む)3人、神格一柱。

 圧倒的にアウェーである。その気になられたら跡形もなくなる。


 本当、なんで僕がこんな目に。


 家から一歩も出るなよ、誰からの応答も受けるなよと念押しし、護衛と連絡役に神棚の分体を置いてきたけど心配だ。

 宅配便もダメ? と言っていたのでものすごく、不安でもある。親に連絡したらなんか送るわと言われたらしい。昨日の今日で届くかもしれないけど駄目と念押ししておいた。

 あのガードの緩さでよくもまあ付け込まれずに生きてこれたものだ。


「さて、ひなちゃんに憑いている怪異なんだけど、あれね、弱いの。でも意図された弱さで、触れるだけで不幸がやってくる。それだけの役割なの。

 本体は別にいてそこに戻る感じ。つまりは、ひなちゃんのそばに余計な誰かがいないように排除目的ね。ついでに相手の幸運も吸うみたいだけど、そのあたりはわからない。

 涼さんは吸われた感じあった?」


「ないですね」


「相手からしたら、一般人に当たり屋したつもりが、トラックに当たったみたいな感じよね。

 ご不幸は?」


「会社がちょっと……。手当出して数日実作業休業中です。昨日、地元の神社でお祓いしてもらったので大丈夫だと思いますが」


「経営者的には長引くと大変困るってところね。

 で、罠を設置したいんだけど、ひなちゃんに釣ってもらうしかなさそう。あのお兄さん、勘がいいのか、憑いてるほうが回避してくるのか、捕獲失敗しちゃったし」


「いつ?」


「うん? 電話もらった後にちょいと様子見がてら。

 たぶん、お姉さんのほうもなんかあるよ。そのあたりもわかれば、知りたいかな。こんな近くにいたのに、全く気がつかなかったっていうのも変だし。

 ね、ツイ様」


 急に話を振られてツイ様は咽ていた。ずいぶん人っぽい。


「昔から、なんか、いるなぁって思ってたんだって。でも小物だし、なにをするでもないからほっといたって聞いたときにはもう。もっと早く対処してくれればいいのに」


「ああいう類はそこら辺にいるものだからな。かわいそうだったし」


「かわいそう……。

 ひなちゃんに加護やらなんやらがなかったら、普通に周囲を不幸にする少女になっていたし、孤立して大変な目にあわされる系なんだけど」


「ならなかったじゃないか」


 そう答えたツイ様にアリアは冷ややかな視線を向けた。


「数年前までは大人しかった。それに、まずそうな男たち撃退していったからいいじゃないか」


「まあ、そうみたいなんだけどね……」


「どういう意味」


「近寄る男に不幸を振りまいた、みたいよ。普通なら大惨事なんだけど、その、ろくでもない男ばかりでね……。周囲に自業自得と処理されて、一部男性のみヒナタのせいと言っていたみたいなの。あの女不幸を撒き散らすって。

 でも、ほら、本人たち、それまでの所業で、あー、はいはい、という扱いされてて」


 事実を言い当てていたが、信用されないやつである。そして、いい仕事もしていた、ということも判明している。

 だから、いきなり滅するということにならないのかと合点がいった。祓い屋なら追い出して終わりかと思ったが。


「私もそこにおかしさは感じなかったんだよね。

 半分は本人の素で振り払ったと思うし」


 そこでアリアにじっと見られた。真剣な表情である。


「ひなちゃんはさ、怪異とか妖怪とか神様とかに慣れてるの。

 だからね、とっても、フラットに接してくると思うわ。あんまり区別つけてないというか」


「ええ」


 だから、勘違いするなと釘でも刺されるのかと思った。


「だから、本気で、狙われてるからその気ないならさっさと逃げてね。

 あの子、人だから無理と言ったら、じゃあ、ちょっと修行してきますねって、人やめるタイプ」


 全く別の方向からの忠告だった。

 冗談でもなく真顔なのが逆に怖い。なにその人やめるって。そう簡単にやめれるものじゃないよ?


「あのね、うちの触手可愛いの、とか一日に一回は送ってくる浮かれた友人をみると不安になってくるのよ。あ、これはやばい、マジだって」


「そこは諦める方向に」


「これが困ったことに過去一マシなのがそこにいる怪異なのよ」


 どんんだけ、男運と見る目がなかったのか。それよりも問題は、それは僕が好きではない気がするということ。とても、違う気がする。うにょうにょするものが、好きなだけだ。動揺した結果なのか髪がうねっている。末端、お前らが愛でられてるだけで、本体は、別にどうでもいいという感じではないか。

 最終的に飼いたいとかいいだしたりしないか不安になる。


「色々考えておきます」


 辛うじてそうひねり出した。


 そこからはまじめに罠についての検討にかかった。

 そのうちに自分の知人にも声をかけることになったり、知り合いの知り合いだったのが判明して少しばかりつかれた。

 そうして、段取りも終え帰宅する。


「おかえり。なんにもなかったよ」


 のんびりとそう答える陽葵になんだか脱力する。冷えピタ貼ってゲームって学生か。その隣に当たり前のような恰好で分体が寝そべっている。だらりとしたさまは、くつろいでいるを超えて、液体。僕ですら、え、あんなになるの!? というレベルなのに陽葵は気にするでもなく時々撫でている。


 テレビの画面に映る四角いもので作られた世界はニワトリが歩いていた。見ているうちに夜になっていく。やばいと呟きながら、ベッド、どこだベッドとさがしている。

 ……そんなののんびり見ている場合でもない。


「週末、お兄さんの家に行きたいけど段取りお願いできる?」


「ん。義姉さんに連絡しておく。逃げないようにね、ちゃんと襲撃してやんよ」


 ふふっと笑いながら、陽葵は答える。が、次の瞬間、ゾンビーっ! と叫んでいた。今、襲われている。夜にうろついているからだ。

 最高に、日常だ。

 怪異に襲われ、憑かれているのに。


 まあ、いいか。と思うことにした。これが片付いたら、この先のことを考えればいい。

 とりあえずは。


「はい、回収回収」


 びったんびったん抵抗するブツを神棚に押し込むことだろう。えぇ、かわいそうだよぉというからつけあがるんだ。

その後の触手ちゃんは神棚から時々出てきてはポテチなどを強奪していったりします。伸ばしに伸ばしたその手でがしっと掴んでお持ち帰り。

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