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今日、同居します!

 都内某所に私は家がある。30歳ごろに不安に駆られて、分譲マンションを購入したので持ち家、ローンありである。養う人ではなく、養う家がある。そう言う身上である。


 こんなこともあろうかと!というより今後貸出するかもしれないしなぁと思って買ったので2LDKあり、一部屋は空いている。ミニマリストというわけではなく、そこに何か入れたら、際限なく埋まりそうな予感がしたからだ。余白大事。


「意外と綺麗だね」


 そういう涼さんは家の中を観察しているようだった。

 温泉行く前にきれいに片付けておいてよかった。場合により、この世界からおさらばだなとまずいものは断捨離しておいたのだ。


 あれから、祠の修繕を行い、温泉宿に一泊。世を忍ぶ仮の姿で村に出入りどころか、村の中に家があった涼さんは何事もなかったように帰宅。

 翌日にお宿からの送迎車で近くの駅まで送ってもらったときにも同乗していた。時々町に行くときに乗せてもらっているらしい。

 都会の友人に誘われて急に旅に出ることになったと宿の人と普通に話をしていた。スーツケースもちゃんと用意されていて、説得力はあった。

 そこから、電車を乗り継ぎ、今の帰宅となった。


「お疲れのところ悪いんですけど、寝る場所がないので本日はホテル取ります。

 ベッドないので、これから買いに行きますけど即日配送は難しいので数日ホテル暮らし」


「別に、寝なくていいからしばらく寝る場所がなくてもいいよ」


「……そういう生態?」


「年月の感じ方やら疲労が違う感じ? まあ、一週間くらいは寝なくても平気。

 この機会に遊び歩く予定だから気にしないでいいよ」


「では、お小遣いをご用意しますね!」


「いらない。そのくらいの稼ぎはある」


「ガイドとか」


「たまにくるからわかってる。交通系ICカードも持ってる。スマホもある」


「……怪異業界、今そんななの?」


「君らが思うより、遊び歩いてるよ。特に、東京はね」


 そう言うと使い込まれたようなガイドブックを三冊だしてきた。真新しい付箋がついているので、なんだかもう計画が立っていそうである。


「ここは他人にあまり関心なく、明るいようで昏く、隙間にかつての信仰は残っている。そうと意識せずとも、この地には祈りがある」


「そう言うもんですか」


「人が多いというのは力だからね。

 でも、家具は欲しいな」


 というわけで、旅行のアレコレの片付けの前に、ショッピングモールにあるお店に行くことになった。

 食材も買わないと今日の夕飯にも困る。


「リースでよかったんですか?」


「半年の約束だ。

 残ってもあとで困るだろ」


 最近の家具店は家具のリースをしており、それでベッドや棚などを借りる話になってしまった。くっ、あわよくばというのが見透かされている。


 家具のあとは仏具店にいくことになった。

 暫定的に祭壇ではなく神棚で対応することにしたらしい。作法も知らんやつになんかされるくらいなら安心できる既製品。と言われてはね……。

 神棚というのは仏具店の管轄というのも私は今知ったわけだけども。


 浅草にそう言うお店がいっぱいある通りがある。そこを端から端まで見る羽目になるとは思ってもみなかった。

 日が暮れるころにようやく妥協できるあたりが決まり、私も店員さんもほっとした。いや、ごめんね、三回くらい来たから……。

 こちらも配送をお願いしたが、食材を買って帰る余力もなく、そのままお店にはいることにした。

 観光地らしく、それっぽいお店をスルーしてファミレスである。


「ステーキ食べていい?」


「どうぞ、存分にお召し上がりください」


 涼さんはファミレスとは思えないほどの高額商品を嬉々として頼んでいた。私はシェフサラダでいいよ……。あとで、でかいデザート頼むから。


「あとでパンケーキたべていい?」


「今日はお祝いですから、どうぞ」


「お祝い?」


「同居一日目のお祝い」


「……そういや、憑いてるのに、存分に元気だな」


「友人が言うには憑依体質だそうですよ。時々、アルバイトします」


 この資金源はバカにならない。

 元々、祠を壊してなどという話を聞いたのは、アルバイト後の打ち上げで酔っぱらった友人が言ったことが発端である。


「ふぅん?」


 そうつぶやいて、彼は口を開いたが、目の前にやってきたステーキに注意をそらされたようだった。

 嬉しそうに笑うのは、ちょっと幼げに見えて可愛らしく見える。


 弟感満載。

 お付き合いしていると言って両親が信用するかどうかは謎ではある。騙されてないかと彼に言いだしそうである。

 まあ、騙したようなモノで脅したのだが。


「神降ろしの家系じゃないかな」


「へ?」


「近くはないけど、そういう息吹は感じる。

 まあ、悪くはない選択だった、ということにしておこうか」


 なんと! 生まれのどこかに良いところがあったとは。


「ともかく、半年、よろしく」


「はいっ! 何でもご用命ください」


「…………そういうの、親族の前でもするなよ?」


 私のほうが釘を刺されてしまった。

え、拾ってきた? 脅迫っていうんじゃ? じゃあ、今度、おいなりさんでも差し入れするよ。なんでって? あたしが言ってたのは狐系の眷属で……ちがう? 陽葵、あなたなにをつれてきたの?

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