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アラサーの私、結婚したくて今日、祠を壊します! ~壊したら嫁にしてくれるなんてとても都合のいい話ですね?~  作者: あかね
祠を壊した私が祠の主と結婚するまでの七か月

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10/28

今日、打合せをします!

 予定を多少超過してしまったが、結婚式までの日取りが決まった。

 式の日程が決まった、ということは、締め切りが決まったということだ。

 結婚式というのは意外にやることが多い。


 結婚式は挙式と会食で構成されている。今回は人前式というみんなの前で誓うよ、という形式をとった。なので、教会などの手配はしないですむ。

 手間の問題だけでなく、他所の神様のところで誓うとか約束するのは避けたい、と涼さんが嫌がったからでもある。

 別日に写真とるのはいいということで、教会での撮影会はする。夜の東京タワー背景に撮るつもりもある。


 偽装なんだから、そんなに力を入れなくてもとアリアには笑われたが、私、もう一度結婚することができる気がしない。

 これまで関与した男の中でマシなのが怪異というのはなんだろうな……。


 涼さんがおうちにいるのに慣れ切ってしまった。

 髪から伸びきった触手が床をうにょんと這っているのを注意するのにも。


「踏むよ。もう容赦なく踏むよ!?」


「いたくないから踏んでもいいよ」


 ……。

 無言でぐりぐりしてみたが、余裕の顔だった。くっ。

 なにか負けたような気分でソファに座る。怒涛の準備に疲れているんだ。少しばかり休憩してもいいだろう。

 涼さんは床に座ってローテーブルに広げた招待状に封をしていた。


「何度も確認して悪いんだけど、呼んでいいの? 嘘だと怒られない?」


「お祝いの雰囲気というのは健康にいい。

 ここに逗留すると挨拶に行った先だから来るかはともかく招待状は出さないと後々の関係が悪くなるよ」


 遊び歩いていたと思っていたら、ご近所の神社等々へご挨拶にもいっていたらしい。ちゃんと手土産をもってしばらくいるのでよろしく、と。

 縄張りを荒らしはしないと言いに行かないと喧嘩を売られるんだよねと言っていた。


 そのほか元々付き合いのある相手もいるようでそちらにも招待状を送ることになっている。

 住所があってないような人たちなので手渡しで行ってくるそうな。作法とか面倒なのがあるから私は同伴しないことになっている。

 変に魅入られるのも困るし、というのは冗談かなにかだと思いたい。


「半数は来ない。というより来れない。さすがにドレスコードはある」


 変身がドレスコードとは。

 その業界はよくわからない。


「私も終わらせようかな」


 招待状の締め切りが一番早い。

 向かい側に座って作業する。つけっぱなしのテレビの音をBGMに黙々と。


 ……ん?


 足に触れるナニカに気がつく。触手がうねっていた。

 涼さんをみれば普通に作業している。ただ伸びただけかと気にせず作業を続ける。

 それからしばらくして触手が私に絡みついてきた。さすがに度が過ぎている。


 触手をちょんとつついたら涼さんがびくっとした。


「な、なに!? いたずら!?」


「さきにされたのは、私なので」


 伸びた触手の行方に気がついたらしい。

 驚いたように触手とそれにつながっている髪を確認している。


「最近、多いですよ。無意識かなと思って言いはしませんでしたけど」


 ちょんちょんと触ってくる。嫌ではないし、なんかそういう生き物のようでちょっとかわいいからほっといたけど。


「ごめん。

 気がついていなかった」


「可愛いからいいけど」


 そっと触手を撫でたらびくっとした。涼さんの本体が。


「ちょ、それ」


「ブラッシングしたらつやつやになったり?」


「ならないからっ!」


 なぜか真っ赤になっている。なんか敏感だったりするのだろうか。でも、踏んでも痛くないらしいし。

 びったんびったんし始めたので手を放す。


「ちょ、ちょっと、コンビニ! コンビニ行ってくる」


 私の返事を聞かずに逃げるように出ていった。

 ちゃんと触手仕舞っていっただろうかとちょっと不安になるが、きっと大丈夫だろう。髪の毛が動いても普通は目の錯覚と思う。


 作業を終えたころに涼さんは帰ってきた。

 お高めアイスと一緒に。スーパーの袋なので、コンビニより先まで遠征してきたようだ。


「ほかの打ち合わせも終わらせておこうか」


「そうだね」


 アイスを食べながら料理のメニューや花屋について検討する。機材は貸してくれるようなので音響の心配はいらない。

 引き出物とか細かく決めることも多い。


 実際の業者との打ち合わせは涼さんにお任せすることになった。暇だからということだが、言うほど暇でもなさそうではあったのだけど。

 涼さんの世を忍ぶ仮の姿は地主である。さらに林業系の会社の会長だった。

 元々山と周辺の土地をもっていたところ、温泉が出て温泉宿がいくつかできそのときに土地を売る話もあったようだ。乱開発されたくないと断った結果、今も地主であるそうだ。今はそんな高くないから売れもしない土地と嘆くものらしい。

 林業も山の管理の都合で設立した会社で、実務までする気はないそうだ。利益は微々たるもので、公共事業みたいなというところらしい。山は管理しないと荒れて祠もぶっ壊すような土石流しちゃうからという切実な理由もあるそうな。

 生活費は長年続けている株式投資で出しているそうだ。株主優待目的で利率は低めで長期運用。手堅い。


 実態はともかく、肩書でいえばセレブな気はする。

 セレブ感を出してきたのは指輪の時くらいだ。今のスウェットでアイスを食べている姿にセレブ感はない。いつもの格好も無難で印象に残りにくいものを選んでいるようだった。

 容姿もよく見なければ良さがわからない、気がする。


「なに?」


「かっこかわいいなと思って」


「……君のほうが可愛いんじゃないかな」


「私は男らしいと言われることが多い」


「ちゃんと可愛い女の子だよ」


 柔らかく言われて、驚いた。


「女の子という年では」


「君の何倍も生きているから、子供みたいな……あ、まずいな」


「なにが?」


「今の撤回。

 素敵な女性ということで」


「なんで?」


「都合が悪い」


 さらに追及する前にアイスを口に突っ込まれた。食えというスプーンと笑顔の圧よ。

 そのあとはやるべきことをすることに集中することになった。

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