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超鋼戦士バロン

 付術師の書庫。千五百年ほど前、呪術を極めようとした付術師ロンメイが研究を行っていた巨大な館だ。

 館には貴重な魔導書が多く保管されており、その魔導書を盗まれる事を恐れたロンメイによって、呪術を施した自動人形(オートマタ―)が番人として置かれているらしい。


自動人形(オートマタ―)ってゴーレムとは違うんですか?」

「ゴーレムも自動人形(オートマタ―)の一種ではあるけれど、ロンメイの作ったものはもっと複雑で、搭載された疑似人格は人に近い思考をするみたいだよ」

「人に近い……話せば通してくれたりしないですかね?」

「相手は番人で拙者達は侵入者。いかに思考が人に近くても敵対は避けられんだろう」


 カイエンの答えを聞いたリーファは、少し残念に感じていた。

 昔読んだ物語では、壊れたゴーレムを修理しそのゴーレムと共に冒険をする話もあったのだ。

 優しいゴーレムと心を通わせる少女の姿がリーファの心に強く残っている。


「ふむ……術式を書き換えればあるいは……」


 カイエンの言葉を聞いて、顎に手を当て黙り込んでいたラムザスがぼそりと呟く。


「出来るんですかッ、ラムザスさんッ!?」

「むッ、妙に食いつきがよいな? 興味があるのか?」

「はいッ、私、子供頃読んだ超鋼戦士バロンが大好きだったんですッ!」


挿絵(By みてみん)


「……読んだ? 本、物語かね?」

「はいッ! 魔法と呪術が得意な女の子、ベルがある日、発見した迷宮の中で壊れたゴーレムを見つけるんですッ! そのゴーレムを修理してベルはバロンって名づけるんですが、バロンが滅茶苦茶強くて、それでいて優しくて……」


 第三形態、飛竜の姿で興奮し早口で話すリーファに、ラムザスを含め、彼女の背中に乗ったクライブ達は少し引いていた。


「それでですねッ!」

「あい、分かった! 君がバロンの事が大好きだという事は十二分に伝わった!」

「これからがいい所なのに……」


 不満げに言ったリーファに苦笑を浮かべつつ、ラムザスは言葉を続ける。


「疑似人格、それも人間を模したモノというなら、かなり高度で複雑なはず。だが吾輩達を侵入者ではなくゲストだと思わせる事は出来るかもしれん」

「それって、自動人形(オートマタ―)に出会うたびにやるのか? そっちの方が大変じゃねぇの?」

「一体、捕獲して内部を覗き調べれば、術式の書き換え……この場合は修正術式の追加で対応可能なはずだ。そちらはそこまで手間ではない」

「じゃあじゃあ、人形さんとは戦わなくてもいいんですね?」


 戦闘になった場合、ゴーレムみたいなモノに弓は通じるのだろうかと考えていたレナは、ホッとしたらしく微笑みを浮かべた。

 そんな話をしながらリーファは飛行を続け、やがて一行は深い森の中に唐突に表れた巨大な屋敷にたどり着いた。

 屋敷の周囲は堀と城壁に囲まれ、書庫というよりは城塞のようだ。

 ただ入り口の跳ね橋の鎖は冒険者の仕業か断ち切られ、城壁に垂れ下がり赤い錆を城壁に刻んでいた。


「リーファ、あの跳ね橋の前に降りてくれ」

「了解です」


 クライブの指示でリーファは滑空しながら、掘りに掛かった跳ね橋の前の大地に降り立った。

 跳ね橋の前の地面には石畳が敷かれており、それは森の中に伸びている。

 おそらくロンメイが生きていた頃は、この道を通って客が訪れていたのだろうが、現在、森に伸びた道は生い茂る木々によってその姿は消えていた。


 背中に乗っていたクライブ達はリーファが森に視線を送っている間に背から降り、リーファもその身を人の姿に戻し彼らの横に並んで堀の先、石造りの城壁に囲まれた屋敷に目をやった。


 跳ね橋の向こう、白い石で作られた大きな館が見える。

 館の庭は先ほど話に出た自動人形(オートマタ―)が手入れしているのか、主のいない廃墟とは思えないほど、美しく整えられていた。


「このまま住んじゃえそうですねぇ」

「たまに様子を見てたけど、人族の貴族の中にはそんな人もいたよ。でも送り込んだ騎士隊が一人も戻ってこなかった事で諦めたみたい」

「招かざる客は排除されたか……」


 ラムザスの言葉にリーファとレナはゴクリと喉を鳴らす。


「お前ら結構な強敵と戦ってきただろうが」

「そんな事言ったって、騎士隊って要は軍隊ですよね? そんなに大勢送り込んだのに一人も……」

「ですです」

「まぁ、館の中じゃ馬や飛竜は使えないからね。君たちなら大丈夫な筈さ」


 相変わらず軽い調子のアルマリオスに溜息を付きつつ、リーファ達は跳ね橋を渡り付術師の書庫へと足を踏み入れた。

 屋敷の前庭に植えられた生垣は外から見えた通り、綺麗に剪定されていた。

 見回せば銀色の人形たちが生垣や植えられた木々、庭を覆う芝生などの手入れをしている。

 彼らは番人では無いのか、人を模した銀色の顔を手入れをしている植物へと向け、こちらには一切見向きもしなかった。


 訪れる者たちといえば、自分たちのような冒険者ぐらいだろうに……。

 文句も言わず懸命に働くその姿に、リーファは強い切なさを感じていた。

お読み頂きありがとうございます。

面白かったらでいいので、ブクマ、評価等いただけると嬉しいです。

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