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ラムザスの功績

 クライブに向けてラムザスがドヤ顔で差し出した命の指輪を、ロレーヌは横から覗き込む。


「……肉体の活性化による身体の再生……この術式を瀕死状態をトリガーにして効果を高めれば……」

「何だ君は?」

「私はルードネル魔法大学で呪術を研究しているロレーヌ・カルバインです……そう言うあなたは?」


 魔法大学と聞いたラムザスはニヤッと笑みを浮かべた。


「魔法大学とは好都合だ。吾輩は折れた剣の大魔導士ラムザスである。ロレーヌ・カルバインよ、吾輩を大学に案内するのだ」

「大魔導士ラムザス様……放浪騎士ルザムのパーティーの魔法使い……エリナさんから、侍のカイエンを仲間にしたとは聞いていましたが、まさかラムザス様に会えるとは……」

「ぬっ、なぜ拙者は呼び捨てでラムザスは様付けなのだッ?」


 それまで黙っていたカイエンが突然口をはさむ。


「あっ、すいません。ラムザス様は呪術においても様々な成果を残されているので……」

「フフフ……カイエン、行いの差が出たな」

「クッ、拙者の技は文字だけで伝えられるものではないのだ」


 悔し気なカイエンにラムザスは勝ち誇った笑みを浮かべた。

 ラムザスはルザムとの旅の間も魔法と呪術の研究を続け、それを書き記した物をギルドに収めていた。

 自分たちが魔王討伐に失敗した時、後進の助けになればと考えての事だった。

 それは誰でも閲覧可能で、ロレーヌのような研究者達にとっては貴重な参考資料となっていたのだ。


「あの、ラムザス様。実は私、即死魔法に対する対抗策を構想中でして、その術式について相談に乗ってもらえないでしょうか?」

「即死魔法への対抗策……テレサか?」

「はい……少しでもアルベルト様の助けになればと……」

「アルベルトの……いいだろう、奴にはルザムをどうにかしてもらわんといかんからな」

「では早速ですが、大学へ同道いただけますか?」

「うむ。では準備をするのでしばし待て」


 ラムザスはそう言うと、作業していた部屋に戻り、机の上に置いていた指輪の残骸をポーチへと収めた。


「ではクライブ、吾輩はローレヌと共に大学へ向かう」

「了解だ……ラムザス、あんまり目立つ事はするなよ」

「グッ……クライブ、君は吾輩を何だと思っているのだ?」

「英雄ルザムの仲間で、元魔王軍幹部、そんで割とお調子者」

「ククク、確かにラムザスはおだてられると調子に乗る所があるな」


 カイエンは先ほどの意趣返しとばかりにクライブに追従した。


「おのれクライブ……見ておれ、この命の指輪を完璧な物にして目に物見せてくれる!」

「おう、期待してるぜ」

「その時はせいぜい吾輩を称え敬うのだなッ! 行くぞロレーヌ!」

「あ、はいッ!」


 ラムザスはフンッと鼻を鳴らしてリビングを後にした。

 ロレーヌもそんなラムザスの後を慌てて追う。


 そんな二人を見送ったクライブは肩を竦め苦笑を浮かべたのだった。



■◇■◇■◇■



 ラムザス達と入れ替わりでホテルニュービッグバリーのスイートルームにリーファ達が戻って来た。

 一行はクライブ達と現在の状況をすり合わせ、今後の予定を話し合った。


「今後の事だが、俺たちはラムザスが指輪を修復したら付術師の書庫へ向かう。その間にアルベルト達はアラネアの国王とギルド経由で渡りをつけて、飛空船を借り受ける。俺たちが戻ったら飛空船で南、氷の大地を目指す……以上だな」

「おそらく飛空船は借りる事が出来るだろう……交換条件に何を求められるか、少し不安ではあるが……」

「私はお嬢ちゃん達がちゃんと生きて戻ってくるかが不安だわ」


 アルベルトに続き、ベルサも不安を口にする。

 アルマリオスの計画では魂を全部取り戻したリーファの力で、張られているだろう結界を破るのだ。

 リーファが戻らない事には計画自体が始められない。


「死ぬつもりはないですけど……ラムザスさんとロレーヌさんの指輪が上手くいけば、その不安も少しはましになるんですが……」

「へへ、ラムザスは程よく煽ってやったからよ。多分、いい仕事してくれると思うぜ」

「アレってわざとだったんですか!?」


 先ほどのやり取りを少しヒヤヒヤしながら聞いていたレナは驚き目を丸くする。


「ラムザスは自信家みたいだしな。ああ言ったほうが仕事してくれると思ったんだ」

「お主、なかなかの策士だな。だが確かにラムザスは自分の技術や知識には自信をもっている。あの調子なら手を抜く事はないはずだ」


 そう言うとカイエンは口元をほころばせた。


「その指輪の呪術には期待するとして、どうにか成功率を上げたいわね」


 ソファーで足を組んでいたサフィが右手を持ち上げて視線を巡らせる。


「ふむ……ここは万全を期すため、我々の何人かはリーファさん達と行動を共にするのはどうでしょうか?」


 ニーダンスの提案にアルベルトは渋面を浮かべた。


「仮にも国王と謁見するんだ。パーティーメンバーは全員いた方が心証はいいと思うが」

「確かにな。王族や貴族はメンツを大事にするからな。歯抜けだと侮られたと思うかもだぜ」

「メンツですか……面倒ですねぇ」


 アルベルトとゴダックの話を聞いたリーファは思わず顔をしかめる。


「冒険者は命を守る為に、クエストでもメンツよりも合理性を重視するのが普通だからね。でもまぁ、君もランクが上がればそういう諸事にもかかわる様になるよ」

「そうなんですか、クライブさん?」

「まぁ、そういう部分もあるな」


 英雄譚等で語られる冒険者の自由さにあこがれを持っていたリーファは、アルベルト達の言葉で高ランク冒険者の内情に少しげんなりしたモノを感じたのだった。

お読み頂きありがとうございます。

面白かったらでいいので、ブクマ、評価等いただけると嬉しいです。

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