聖王冠対大魔導士
ラムザスの放った滅びの光と、ベルサとニーダンスの放った原初の炎とゼファルの雷槍がぶつかった。
地上に生み出された極小の恒星は、精霊王アトラの生み出した爆炎と至高神ゼファルの力の発露、極太の雷によって力のベクトルを変えられ歪み、その力を守護竜の部屋の床や壁にまき散らした。
生み出された高温によって壁は溶け出し、床には溶けた石畳が煮立ち泡立つ。
それぞれの最上級魔法の激突は、戦場である守護竜の部屋を一瞬で地獄に変えた。
そんな魔法の共演も永遠には続かない。
初めにベルサが膝を折り、次にニーダンスがうめき声を上げた。
押し勝ったのは大魔導士ラムザスだった。しかし、自ら作り出した魔法増幅器である水晶の杖を使っても魔力の消耗は大きく、滅びの光は聖王冠の魔法使い達が放った魔法とほぼ同時に消えていた。
「今だ、ゴダックッ!!」
「了解ッ!!」
声と共に走り出たアルベルトに、ゴダックは展開したオーラシールドでシールドバッシュを放った。
アルベルトはその衝撃に逆らわず、一直線にラムザスに向かって飛ぶ。
周囲は魔法の影響で異常な高温になっていた。肌がチリチリと焼ける感覚がアルベルトを襲う。
もしニーダンスの神聖魔法の加護が無ければ残った魔法の残滓により、血が沸騰し死んでいただろう。
『ググッ……報告では勇者の仲間はサポート役だと……』
ラムザスにとって滅びの光は最強の魔法だ。
それを防ぐほどベルサとニーダンスが成長していたのは、彼にとって予想外だった。
アルベルトと離れていた間、リーファ達と行動を共にしていた時、二人はこれまでの様にアルベルトを中心にするのではなく、彼を助けられる力を求めていた。
それはゴダックやサフィも同様であったが、魔法使いである二人には新たな魔法の習得により前衛の二人よりも力を得る事は比較的容易だったのだ。
ただ、容易とはいっても実力に見合わない魔法の行使は、二人にかなりの消耗を強いていたが……。
そのベルサとニーダンスが作った隙を突き、アルベルトはラムザスに迫った。
『まだだッ!! まだこの程度では認められんッ!!』
アルベルトの接近に気付いたラムザスは、サフィに放った衝撃波を右手を突き出し彼に放つ。
「フッ!!」
アルベルトは聖者の衣から触手を伸ばし、前方の床と壁にアンカーの様に打ち込み、真正面から放たれた衝撃波に聖剣を叩き込んだ。
聖剣は衝撃波を切り裂き、アルベルトは伸ばした触手を使ってさらに前進、ラムザスの懐に飛び込んだ。
「僕の距離だ」
『クッ!』
ラムザスは距離を開けようと再度右手で印を描く。
だが印が完成する前に、アルベルトの振り上げた聖剣がその右手を切り飛ばしていた。
『おのれッ!!』
ラムザスはすぐさま杖を翳し力を収束、水晶から光が漏れる。
アルベルトはその杖を翳した左腕を伸ばした触手で断ち切った。
『ググ、万能なる魔力よ、グガッ!?』
最後の一手、詠唱による呪文の行使もアルベルトが顎に打ち込んだ拳によって止められる。
「チェックメイトだ……大魔導士ラムザス」
崩れ落ちたラムザスにアルベルトは聖剣を突き付けた。
『……グフッ……そのよう……だな……』
「……あなたもローザやカイエンと同じで、邪神の支配を良しとしていないのだろう?」
『まあな……だが吾輩はあの二人ほど単純に考えていた訳ではない……』
「どういう事だ? あなたも僕を魔族化して、魔王と戦わせようとしていたのではないのか?」
『……ルザムは魔王となった後も力を増している。魔族化したお前をぶつければ、邪神ヴェル―ドは無理やりルザムの体に入ろうとするかもしれん』
アルベルトはカイエンから邪神の目的についても話を聞いていた。
半永久的に勇者を魔王化し地上における手ごまを確保すると共に、その魔王を勇者が倒す事でさらに力の強い魔王を生む。
いずれはその魔王に自分の精神が乗り移るために……。
「ルザムはもう邪神の魂に耐えれると?」
『絶対では無い。だがどうせお前たちや竜王と融合した娘に屠られるぐらいなら、試すのもやぶさかではなかろうよ』
もし自分やリーファが魔王ルザムを倒してしまえば、邪神の気の長い計画は白紙に戻り、計画は魔王足りえる魔族が生まれるまで停滞するだろう。
「……それで何か考えていたのか?」
『神殺しの武器……』
「神殺しの……そんな物が存在するのか?」
『太古の昔、巨人族は自分たちを排除した神々に戦いを挑んだ。彼らの作った武器に神殺しの剣があったらしい。材料は蒼黒石、賢者の石と呼ばれる幻の石だ……終ぞ見つける事は出来なかったが……勇者よ、ルザムと戦うなら蒼黒石を探せ……』
賢者の石の事ならアルベルトも聞いた事があった。
鉛を金に換え、肉体を不老不死に変化させる霊薬の材料となる石。
かつて大陸の東を支配していた皇帝はそれを探すため、世界中に部下を送り出したという。
「なにか手がかりは無いのか?」
『手がかりか……』
ラムザスは腰に手を伸ばしかけ、両手がアルベルトに切り飛ばされた事を思い出し苦笑を浮かべた。
『吾輩の腰のポーチに蒼黒石について調べたメモが入っている。ポーチの認証魔法は解いておく……あと吾輩の杖もやろう』
「……他に言い残す事は?」
『ないな……いや、一つだけ……邪神がどう動くにせよ。ルザムは必ず倒してくれ……』
「……了解だ」
「やっと追いつきましたッ!!」
ラムザスにうなずきを返しアルベルトが聖剣を振り上げた時、守護竜の部屋に聞き覚えのある少女の声が響いた。
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