元吸血鬼との別れ
キュクロプスの鍛冶屋ロガイドに女神の盾の他、邪神の武具を渡してからから二日後、リーファ達は強化された武具を受け取っていた。
「ロガイドさん、ありがとうございました!」
「ありがとよ。これで思う存分戦えるぜ」
「あの、弓を作ってくれてありがとう!」
「ロガイド殿、我のコテカの強化、大変感謝する」
礼を言うリーファ達に単眼の巨人は少し照れた様子を見せた。
「良いって事じゃ……それより、盗賊の兄ちゃんは残ってくれ。少し話があるでな」
「俺に話?」
「うむ」
「…………みんなは外で待っててくれるか?」
ロガイドとクライブはしばらく視線を交わしていたが、やがて黒髪の盗賊は振り返りリーファ達に外で待っててくれと告げた。
分かりました。そう返しリーファはレナ達と共にロガイドの作業部屋を後にした。
それからしばらくして、ロガイドと何やら話していたクライブはリーファ達と合流した。
「何を話していたんですか?」
「ん? 武具についてのちょっとした注意事項をな……剣は切れ味が上がっているから扱いに気をつけろとか、鎧と盾も防御力は上がっているけど、過信するなとか」
「なんでそれをクライブさんだけに……?」
「さて……俺が一番冒険者らしかったからじゃねぇか?」
確かにリーファは駆け出しだし、レナとマッソーは厳密には冒険者ではない。
リーダーとして話をされたという事だろうか。
「ともかくだ。今は聖王冠との合流を急ぐとしようぜ」
「……わかりました」
「炎の洞窟は大陸北部、魔族の支配地域の近くにある。とりあえずエラリオンの館まで飛んで、そこから北を目指そう」
「了解だ……とその前にマッソーを女神様のところへ送り届けないとな」
「うむ。よろしく頼む」
そんな会話の後、リーファ達は女神の泉へと飛んだ。
リーファがガーネットに呼びかけると、彼女は慌てた様子で泉から顔を出した。
「お帰りマッソーッ!!」
ガーネットは満面の笑みでマッソーの鍛えられた大胸筋に飛び込んだ。
「……ただいま、ガーネット」
抱き着いたガーネットを受け止めたマッソーは、少し照れた様子ではにかんでいた。
「マッソーおじさんとはここでお別れなんですね」
二人の様子を見たレナは嬉しい様な、寂しい様な微妙な笑みを浮かべていた。
「レナ、お前は獣人だけあって素質がある。だがその素質に胡坐を掻くことなく鍛錬を続けよ」
マッソーはレナの前にしゃがみ込み、彼女の頭を撫でながら言葉を紡いだ。
「鍛錬は続けますけど……レナはマッソーおじさんみたいな筋肉な人にはならないです」
「当然だ。筋肉は戦闘スタイルにあった物でなければ活かすことはできん……リーファ、クライブ、アルマリオス、お前たちにも世話になったな」
「こちらこそ、お世話になりました」
「ありがとよ……出会いが最悪だったあんたと一緒に行動するとは思わなかったぜ」
「確かにね。まぁ、迷宮から出て自由になったし、吸血鬼でもなくなったんだから、のんびり生きなよ」
リーファはペコリと頭を下げ、クライブは肩を竦め苦笑を浮かべ、アルマリオスはいつもの様に軽い調子で言葉を紡いだ。
「ふむ、のんびり生きるか……それもよいかもしれんな」
「それじゃあ、マッソーさん、ガーネットさん、またいつか」
「二人ともまたな」
「マッソーおじさん、女神様、さよならです」
「じゃあねマッソー、ガーネット」
リーファ達は二人に手を振り別れを告げた。
「うむ、さらばだ」
「リーファ、アルマリオス、それにクライブとレナも、みんな頑張って魔王と邪神を倒しておくれ。あたしも協力出来ることは何でもするからさ」
「はい、頑張りますッ!! ではッ!!」
リーファもなんだかんだで行動を共にしたマッソーとの別れは寂しい物があったが、そんな気持ちを振り切り予定していた不死鳥エラリオンの館へと転移したのだった。
■◇■◇■◇■
その頃、大陸北の魔族の支配地域の近く、この地方は国ではなく人族の支配地域は各国の軍隊及び教会などから派遣された騎士、兵士、魔法使いや僧侶が防衛を担っていた。
防衛組織の名前は特に無く、連合軍、もしくはただ単に連合と呼ばれる事が多かった。
彼らが守っている土地は度重なる魔族の侵攻とその防衛によって、緑は枯れ大地は荒野と化していた。
アルベルト達はその荒野にある岩と溶岩の洞窟、炎の洞窟へと辿り着いていた。
「ふぅ、もう少し楽にたどり着けるかと思ったが、予想以上に魔物が多かったな」
「そうね……アルベルト、体の調子はどう?」
「悪くは無いよ。この聖者の衣の使い勝手も何となく覚えてるし、今までよりも上手くやれそうだ」
「ローザに攫われた事も無駄ではなかったという訳ですね」
「怪我の功名だけど、二度と攫われるのは止めてほしいわ」
魔女のベルサの言葉に他のメンバーもうんうんと頷いている。
ちなみに奴隷の少女、エリナは今回連れて来てはいない。
事前に冒険者ギルドで聞いた情報により、炎の魔神も徘徊するかなり危険なダンジョンだと判明したからだ。
さすがにEランク冒険者未満のエリナを同行させるのは難しい。
エリナはそれでもついて行きたいと言っていたが、アルベルトの説得により何とか残る事を了承した。
今頃は魔法大学の教授、ロレーヌ・カルバインに呪術の基礎を習っている所だろう。
ロレーヌは自分の計画がアルベルトを抜け殻にするかもと知って、すっかり毒気が抜けていた。
そんなロレーヌにアルベルトは魔法の才のあるエリナを預けることにしたのだ。
また、リーファが救ったカイエンだが、彼には宿に残ってもらう事にした。
彼からは魔王軍幹部の二人、ラムザスとテレサについて情報を得ていた。
しかし完全に邪神の支配から抜け出ていないカイエンと同行する事は、流石に躊躇われたからだ。
「心配かけて悪かった……あの時の僕は本当にどうかしていた……心配してくれたレナにまで刃を……」
そう言って視線を伏せたアルベルトの右腕にサフィが抱き着き、ベルサが左腕にそっと腕を絡ませる。
「全部、邪神が悪いんだからアルベルトは気にする事ないよッ!」
「そうよ。それより今は未来を向きましょう」
「……そうだな……今は大魔導士ラムザスに集中するとしよう」
アルベルトは顔を上げ、熱風の吹き出す炎の洞窟の入り口に目を向けた。
そんなアルベルトの姿を見て、完全復活だと重層戦士のゴダックと至高神の司祭ニーダンスは顔見合わせ微笑んだ。
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