冒険者のいろは
甲羅の中央、森の中に蒼黒石はあると亀竜グラボロスは言っていた。
アルマリオスは上級魔法を使って森を吹き飛ばそうと提案したが、リーファはそれに反対した。
森はすでに何千年も存在しており、そこでは生命の営みが行われていた。
湖を渡って来たのだろう、獣や鳥が住み着き豊かな森を生活の場としている。
そんな彼らの暮らしを自分たちの都合で奪う訳にはいかない。
「木を切ったりするのはなるべく最小限に止めましょう」
「となると、正確な石の場所がわからねぇとな」
「ガーネットは、蒼黒石はグラボロスの甲羅の分泌物と魔力が結晶化した物だって言ってた。なら近くまで行けば魔力を感じられるかもしれない」
甲羅の中央……空から見れば分かりやすいかも。
「私が飛んで上から中心に目星を付けます」
「了解だ。リーファはそのまま飛んで目印になってくれ。俺たちはお前の真下で石を探してみる」
「分かりました」
リーファは背中から羽根を生やし、甲羅の中央と思われる場所でホバリングをした。
見下ろせば、クライブ達がそのホバリングするリーファを目印に森を進んでいる。
茂った枝葉が邪魔になるかと思ったが、クライブもレナも、いつかのアルベルトの様に聖者の衣をツタの様に伸ばし、森の上を移動していた。
マッソーはそんな二人を飛び跳ねながら追いかけている。
程なく、一行はリーファの真下にたどり着いていた。
リーファは翼をはためかせ、クライブ達を合流を果たした。
「クライブさんもレナさんも聖者の衣の扱いが上手になりましたね」
「へへ、毎日練習してるからなぁ」
「アルベルト様の戦い方を見れた事が、結構大きいです」
「聖者の衣、可変甲冑であるな……昔、それを着た者は獣になると聞いた事があるが……」
「私たちの着ている物は、不死鳥さんに浄化してもらったので大丈夫です」
リーファはそう言って笑みを浮かべたが、それを聞いたクライブは苦笑を浮かべていた。
「それで、魔力は感じるか、アルマリオス?」
「うーん……」
パタパタと翼をはためかせ、アルマリオスは草の大地に降り立つと静かに目をつむった。
周囲の者達が放つ魔力、それは自分たちが立っているグラボロスの体も含めた魔力の流れ。
それを感じ、アルマリオスは強い力を発する力の塊を感じ取った。
「この先、五メートルぐらいから、強い力を感じた……多分、それが石だと思う」
「五メートルだな」
クライブはアルマリオスが指さした先へと歩を進め、聖者の衣から触手を伸ばし地面を掘り始めた。
レナとリーファもそれに続き、聖者の衣の力を使い穴を掘り進める。
「クライブ、スコップがあれば我も手伝うぞ。いいトレーニングになりそうだ」
「スコップだな……ほらよ」
クライブはポーチから取り出したスコップをマッソーに投げ渡す。
「クライブさん、スコップなんて常備してるんですねぇ」
「あのな、スコップとつるはしは冒険者の必需品だぞ」
「そうなんですか?」
「鉱石の採掘にゃ、つるはしは欠かせねぇし、野営する時にスコップは役に立つだろ。山肌を掘って雨風しのいだり、雪の時は雪洞を作ったり」
そうか、確かに冒険をしていればそんな場面にも遭遇するだろう。
駆け出しのリーファはこうなる前は、日帰りクエストしかした事がなかった。
そのため、冒険者として必要な道具も本当に初心者の段階で止まっていたのだ。
「……私、知らない事ばかりです……クライブさん、冒険者のいろはについて今後、教えて下さい」
「そうだな……旅の途中にでも教えてやるよ」
「はいッ!」
「あの、レナも知りたいです」
「おう、レナにも教えてやる」
クライブが二人に笑みを返すと、対抗意識を燃やしたのかマッソーも会話に参加した。
「フフフッ、冒険者のいろはか……では我は魔物側から見た冒険者の怯えさせ方について伝授してやろう……まずは」
「マッソー、口じゃ無くて手を動かせ」
「グッ、お前らはその衣を使って楽している癖に……」
「これはこれで精神集中が必要なんだ」
そんな事を話ながら掘る事しばし、マッソーのスコップの先が何か固い物に当たる。
彼がスコップで慎重に土を除くとそこには、ロガイドが話していた蒼黒石だろう青黒く輝く石が存在していた。
■◇■◇■◇■
一抱え程もある青黒く宝石のような輝きを放つ石を掘り出したリーファ達は、改めてグラボロスに礼を言おうと甲羅の外縁部である砂浜に取って返した。
しかし、もうそこにはグラボロスの頭はなく、水面に鼻の先が突き出すのみだった。
「もう寝ちゃったみたいだね」
「あう……ちゃんとお礼が言いたかったのに……」
「あの竜は眠る事が好きなようだし、起こすのは不憫だろう……ここは我がポージングで感謝を伝え、ロガイド殿の下へ戻るとしよう」
フンッと掛け声をかけ、マッソーはダブルバイセップスのポーズを決める。
「それって感謝の気持ち伝わってますかねぇ?」
「何を言うッ!? 満面の笑みと盛り上がった筋肉による肉体美ッ!! これ以上の感謝の表現は無いッ!!」
筋肉を震わせながら、マッソーはニカッと白い歯を光らせる。
「はぁ……ともかく、礼を言うだけ言って鍛冶屋の所に戻ろうぜ」
「そうですね……グラボロスさん、ありがとうございました。石、もらっていきます」
「あんがとよ。グラボロス」
「ありがとうですッ!!」
「……ありがとね、グラボロス……たまには起きて運動した方がいいよ……じゃあ行こうか」
「はい」
そうして一行は寝坊助な亀竜の体の上から、巨人の鍛冶屋ロガイドの作業場へと転移した。
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