幹部の動向と単眼の巨人
ニーダンスに今後の予定を伝えると、彼は武具のある迷宮について教えて欲しいとアルマリオスに言った。
「教えてもいいけど、どうして?」
「迷宮には魔王軍の幹部がいるのでしょう?」
「カイエン、どうなんだ?」
クライブがリビングのソファーに座ったカイエンに尋ねると、彼はうむと頷きを返した。
「残りの二つ、命の指輪のある北の炎の洞窟にはラムザスが。精霊の首飾りのある東の付術師の書庫にはテレサが向かった。二人とも拙者と同じく竜王とその仲間を消せと命じられている筈だ」
ニーダンスは小さく頷き、口を開く。
「北の炎の洞窟には我々が向かいましょう」
「待って下さい。相手は超一流の魔法の使い手です。魔法を弾く盾が直ってからの方が安全です」
「その間、我々は待機しておけと? 余り舐めないで頂きたい。アルベルトが本調子になった今、魔王軍の幹部に遅れは取りません」
ニーダンスはSランク冒険者としての自負もあってか、不敵な笑みを浮かべる。
「でも……」
「リーファ、ここはニーダンスの提案を飲もう」
「クライブさん……」
「俺達はカイエンを倒した。それはあっちにも伝わってる筈だ。だとしたらラムザスとテレサは別の命令を受けて動き始めているかもしれねぇ。こちらとしても動くなら早い方がいい……カイエン、ラムザスの手の内をニーダンスに説明してやってくれ」
「承知」
カイエンがニーダンスに大魔導士ラムザスについて話すのを聞きながら、リーファの脳裏には様々な可能性が浮かんでは消えた。
新たに生贄に捧げられる少女。
ラムザスの魔法で焼かれるアルベルト達。
破壊された邪神の武具。
すでに迷宮にはラムザスは無く、そこにあるのは胸を突かれ血を流す少女と、破壊された武具の残骸。
どれも起こるかもしれないものだ。
そんな事を考えていたリーファにニーダンスが声を掛ける。
「そうだ、リーファさん。小瓶に血を入れて貰えませんか?」
「ああ、扉を開く用ですね。分かりました」
リーファはポーチから水薬用の空の小瓶を取り出すと、ナイフで指先を切り、流れ出た血を小瓶に注いだ。
「……最初からあなたの様な存在がいれば……」
その様子を見ながらニーダンスは呟き、その後、今のリーファを作ったのは自分達だと思い至り、すいませんと謝罪を口にした。
頭を下げるニーダンスに気にしないで下さいと笑みを返しながら、リーファは血を注いだ小瓶をニーダンスに手渡した。
「……無理はしないで下さい。危ないと思ったら撤退を」
「……ほんの少し前まで、あなたは駆け出しだったというのに」
「色々大変な目に遭いましたから……女子、三日会わざれば刮目して見よ、ですッ!」
ニカッと笑ったリーファに、ニーダンスは強いですね、あなたはと優しい笑みを浮かべた。
■◇■◇■◇■
ニーダンスとの話を終えたリーファ、クライブ、アルマリオス、レナ、マッソーの四人と一匹は、ルードネルの街で巨人が好むというワイバーンの肉と火酒を樽で買い込みマジックポーチに入れると、転移の兜をマッソーに渡し巨人の鍛冶屋の下へと飛んだ。
本来なら宿に泊まり体をゆっくり休めるべきなのだろうが、リーファとしてはなるべく早く予定を進めたかった。
大陸中を転戦していた聖王冠ならそれ程時間を掛けず、炎の洞窟に辿り着くだろう。
ニーダンスは炎の洞窟の攻略が終われば、次は付術師の書庫に向かうと言っていた。
せめてその前には女神の盾の修理を終えたい。
そういう訳で辿り着いた先、場所は大陸の西部、険しい岩山に囲まれた盆地だ。
その盆地に建つ巨人の鍛冶屋の仕事場だという石造りの小屋、とって言っても巨人の小屋だ。大きさはちょっとした砦程もある。
その砦の様な仕事場からは意外にもコンコンコンと小刻みな槌の音が聞こえていた。
マッソーの話では周囲の岩山にはドワーフが住み着き、様々な鉱石を掘り出しており、その鉱石を使い、巨人は武具を作り続けているそうだ。
ちなみにそのマッソーだが、街から出た事で黒タイツを脱ぎ、再び白マントコテカの怪人となっていた。
「ドワーフなら武器は自分で作るんじゃないんですか?」
「いかに鍛冶の匠のドワーフと言えど、神に届く武具は作れん」
「なぁ、素朴な疑問なんだが、なんで巨人は武器を作り続けているんだ? 対立してた神々は殆どが天界か魔界に行っちまったんだろ?」
「さて、我はそこまで聞いてはいない」
そう言うとマッソーは作業場の扉に向き直り、声を張り上げた。
「ロガイド殿ッ!! マッソー・ペラトリクスであるッ!! いつぞやの返礼に参ったッ!!」
岩山にマッソーの声が響くと、それまで作業場からリズミカルに聞こえていた槌の音がピタリと止んだ。
その後、リーファ達は揺れを感じた。地震かと思わず身構えたがズゴゴゴと音を立てて扉が開いた事で、それが巨人の歩みが生んだ物だと気付く。
「お、大きいです……」
思わず呟いたレナの視線の先、単眼の青い肌の巨人がこちらをその顔の真ん中にある瞳で見下ろしていた。
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