服さえ着れば
リーファが目覚めて暫くすると、仮眠を取っていたクライブとレナもリビングに姿を見せた。
「リーファ、目が覚めたのか」
「お姉ちゃん、もう大丈夫なの?」
「ええ、グッスリ寝て、食事も取ったので」
「我の特製サラダであるッ!!」
「お前の……」
「おじさんの……」
マッソーの特製サラダと聞いたクライブとレナは、何とも言えない表情を浮かべた。
「リーファ、なんか妙な味とかしなかったか?」
リーファが突然、ゴリマッチョになるのではと想像したクライブが、視線を彼女に向ける。
それに釣られたのか、レナも眉を寄せて不安げにリーファを見る。
「貴様ら、我をなんだと思っているッ!?」
「あ、んなもん、歩く猥褻物に決まってるじゃねぇか!」
「歩く猥褻物だと……フンッ、この肉体の魅力が分からんとはなッ!」
「二人とも喧嘩は止めて下さい。クライブさん、大丈夫ですよ。ちょっと私にはパンチが足りませんでしたが、普通に美味しいサラダでした」
リーファが間に入った事でクライブとマッソーは何とか矛を収めた。
「そうか……そうだ。ポーチを返しておく。今回は前みたいに無理した訳じゃねぇみてぇだが、あのソースは暫く控えろ」
「はーい……」
リーファは好きな物が食べれない方が、精神的に良くないと思いはしたが、心配している様子のクライブを見て素直に従う事にした。
「しかしなんだな……やっぱり戦力の底上げが必要だな」
「あ、その事をアルマリオスさんと話してたんですよ。カイエンさんに壊された……」
言いかけて、そう言えば眠っているというカイエンは何処にいるのだろうかと、リーファはふと気になった。
「あの、カイエンさんは?」
「あ、あの髯のおじちゃんなら、ロープでグルグル巻きにして、クライブさんが寝てた部屋に閉じ込めてます」
「ロープでグルグル……大丈夫でしょうか? あの人、前の勇者パーティーの人ですし、ロープぐらい……」
「前に守護竜に使ったロープだ。魔族ならともかく、人間に戻った奴には切れねぇ筈だ」
「……心配なら我が見張るとしよう。お前達はその間に話を詰めておくといい」
マッソーが見張り役を買って出て、リビングから奥の扉に姿を消す。
「……あいつ、意外と気が利くよな」
「そうですね。何だか親切ですし……」
「服さえ着てくれれば、レナも大丈夫なんですが……」
「服ねぇ……何かもっと筋肉を強調するような服を、魔法で引き寄せてみようか……」
筋肉を強調する服……想像もつかないが、マッソーが裸じゃ無くなるならいいかもしれない。
「アルマリオスさん、ぜひともよろしくお願いしますッ!」
リーファは鼻息も荒く、ソファーに座っていたアルマリオスに詰め寄った。
「わ、分かったよ。ちょっと魔導鏡で探してみるよ……ふぅ……そんなに裸は嫌なんだね」
「人間は普通、服を着てるもんだからな」
「ですです」
「んじゃ、服は探すとして、今後なんだけど、女神の盾を直そうと思う」
「魔法を弾くって盾だな」
「そう」
アルマリオスはクライブに頷きを返し、言葉を続ける」
「マッソーの情報なんだけど、巨人の鍛冶屋ならカイエンが壊した盾を直せるかもしれないって言うんだ」
巨人の鍛冶屋? とクライブ達は首を傾げる。
アルマリオスも知らなかった様だし、クライブやレナが知らなくても無理は無いだろう。
実際、リーファ自身も巨人の鍛冶屋なんて初めて聞いた。
「巨人族は大昔、神々と対立してたからね。強力な武具を作れる職人を知られない様に秘匿してても不思議じゃない」
「神々と対立……それって協力してくれるのか?」
「マッソーにはあの腰の奴の情報を教えたそうだし、彼に仲介してもらえば話ぐらいは聞いてくれるんじゃない?」
「巨人さん……どんな人なんでしょうか……」
「昔読んだ本では、荒っぽい性格の人が多かったような……」
「えっ、そうなんですか……」
リーファの言葉を聞いたレナが不安そうに口をへの字に曲げる。
それを見たリーファは大丈夫ですよと彼女の頭を撫でて笑みを浮かべた。
「ともかくだ。まずは盾を修理するって事でいいんだな?」
「はい。生贄の子達も気になりますが、先ほどクライブさんも言ってましたが、まずはこちらの戦力を上げないと」
「たしかにな。アルマリオスの話だと、残りの幹部の二人は魔導士と司祭なんだよな?」
「えっと、大魔導士ラムザスと地母神の司祭テレサでしたっけ?」
「そうそう、まぁ、テレサの方は多分、悪の神に宗旨替えしてると思うけどね」
悪の神、邪神ヴェル―ドの他にも善なる神の対をなす神がいた筈だ。
テレサはそんな神の一柱に仕えているのだろうか。
地母神オージェの対をなすのは、死を司る女神リストだったが……。
リーファはローザやカイエンの事を考え、望まぬ神に仕えるのは辛くは無いのだろうかと、この先、戦う事になるだろうテレサの事を思った。
リーファ達がそんな話をしていると、リビングの扉が開きカイエンを小脇に抱えたマッソーが部屋に入って来た。
「こいつが話したい事があるそうだ」
マッソーはそう言うと、ワイヤーロープでグルグル巻きにされたカイエンを、荷物でも置くようにソファに座らせた。
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