犠牲と侍
裸マントにち●こケースの怪人、マッソー・ペラトリクスと行動を共にする事となったリーファ、クライブ、レナ、アルマリオスの三人と一匹。
彼らは服装はアレだが中々に優秀な武闘家マッソーの加入もあり、順調に探索を続けていた。
「アルマリオスの魔力を以って行く手を遮る者に灼熱の業火を、火炎連弾」
根を足の様にワシャワシャと動かし襲って来る巨大な薔薇を、リーファを介しアルマリオスが使った無数の炎の玉が焼き払う。
「ハッ!」
「フッ!」
クライブとマッソーが、燃え上がり炭化したその薔薇に、聖剣と腰のコテカを叩き込み切り裂く。
「えいッ!」
最後に燃え残った頭部だろう薔薇にレナが矢を撃ち込むと、薔薇の魔物はビクリと棘の生えた蔦を震わせ動きを止めた。
「ふぅ……大型の敵が増えてきたな……所でマッソー、お前、それで敵を攻撃するなよ」
「何故だ? このコテカは材質はどうやらミスリル製であるし、武器としての性能を鑑みれば」
「絵面が酷すぎるんだよッ! 何だよ腰振って攻撃とかッ!」
「そうですよ。レナさんの教育にもよくありません」
レナはマッソーに苦情を訴えたリーファの後ろに相変わらず隠れている。
「ヌゥ……せっかく攻撃にも防御にも使えるというのに……分かった。今後は格闘術で敵を屠るとしよう」
マッソーは不満気ではあったがリーファ達の提案を受け入れた。
そんな一幕を挟みつつ、一行は探索を続け巨大な世界樹の幹に作られた迷宮の頂上、金属の大扉の間へと辿り着いた。
「ふむ、あれがお前達の目的地か……ムッ……これは血の臭い……」
元はリザードマンの神殿だったというから、大扉がある場所は神に祈りを捧げる場所だったのだろう。
その元は神聖な場所に作られた扉と対になる祭壇の上、浅黒い肌の少女が胸から血を流し息絶えていた。
「そんな……だって聖王冠はもう……」
「扉が閉まってるって事は、殺されたのは一日以上前だね……勇者以外にも武具を求めた者がいる?」
「…………もし、お姉ちゃんたちに助けて貰えなければ、レナもこの子みたいに……」
「とにかく、この娘は連れ帰って何処かに埋めてやろう……」
祭壇に駆け寄ったクライブは、祭壇に磔にされた少女の手枷と足かせを聖剣で破壊し、ポーチから取り出した予備のマントで包み床に寝かせてやった。
「……俺があの時、街に戻るって考えなきゃ……」
「クライブさんの所為じゃないですよ。私だって反対しなかったですし……」
「……何を暗くなっているのだッ!!」
俯き誰にもぶつけられない感情を噛みしめていたリーファとクライブを見て、マッソーが声を荒げる。
「だって、女の子がッ!!」
「少女の死は確かに悲しい事だッ!! だが死んだ者に引きずられて歩みを止めるなッ!! 生きている者は彼女の代わりに先に進まねばならんのだッ!!」
裸マントの元吸血鬼はフロントラットスプレッドのポーズでリーファ達を叱咤した。
「……言ってる事はまともだが、格好がなぁ……」
「そうですね……」
「なんだがモヤモヤします」
なんだろうか。後悔と一緒に「いや、お前が言うな」というツッコミが一同の心の中に湧いてくる。
「はぁ……リーファ、ともかく扉を開けよう」
「そ、そうですね」
アルマリオスに促されたリーファは気を取り直し、亡くなった少女の血がこびり付いた祭壇に聖剣の刃に指を這わせ流れ出た血を注ぐ。
融合した魂の数の所為か、たった一滴で扉は開いた。
この少女も自分の様に竜の魂と融合すれば助かっていたかもしれない。
そんな思いを振り切り、リーファは扉の前へと足を向けた。
「ようやくお出ましか」
扉の中にはバラバラにされた守護竜の体の上、見慣れない甲冑を身に付けた黒髪で無精髭の男が座っていた。
男の首は以前アルベルトが魔族化した時と同様、黒く固い毛で覆われ、その瞳は金色だった。
「……お前がこの娘を殺したのか?」
「いかにも。拙者は魔王軍の侍大将、カイエン。邪神ヴェル―ドの命を受けお主らの命を頂戴に参った」
「侍大将カイエン……放浪騎士ルザムの仲間の一人だね。血煙のカイエンの二つ名を持つ、ローザと同様、無数の魔族の首を落した伝説の侍だよ」
リーファの肩に止まったアルマリオスがカイエンについて一行に説明する。
「英雄ルザムの仲間……待って下さいッ! あなたもローザと一緒で、やりたくてこんな事をしてる訳じゃ無いんでしょ!?」
「是非も無し。邪神の命は呪いと同じ、この身が魔となった後には逆らえぬ」
そう言うとカイエンと名乗った無精髭の男はユラリと立ち上がり、守護竜の体から降り立ち腰の曲刀を抜いた。
「この身が哀れと思うなら、拙者と死合い打倒してみせろ」
「そんな……」
彼を救う為には命を絶つしかない。
そんな選択肢しか用意しない邪神に対して、リーファはこれまで漠然としか感じていなかった憤りを改めて強く感じていた。
「……やるしかねぇか」
リーファの横、クライブが聖剣を抜き放つ。
「その前にリーファ、皆に手を翳して」
「魔法ですか?」
パタパタと飛んで肩から離れたアルマリオスに、リーファは手を翳しつつ首を傾げる。
「うん、カイエンはかなりの使い手だからね。強化魔法を掛ける。アルマリオスの魔力を以って、竜王の加護を戦士たちに、五体強化」
アルマリオスの詠唱によって翳した手から流れ出た魔力がリーファ達に降り注ぐ。
「ムッ、体が軽くなった?」
「それ以外にも、筋力や魔力なんかも上がってる筈だよ。まぁ、この面子だと魔力はリーファしか恩恵が無さそうだけど……」
「で、あろうな」
アルマリオスの言葉で一行を見回したマッソーは、腰に手を当てクライブに目を向ける。
「どう攻める?」
「これまで通りだ。俺とマッソーは接近戦で奴の注意を引く、レナは弓で援護、リーファは隙を見て攻撃をぶち込め」
「心得た」
「わかりました」
「了解です」
リーファは聖剣を抜き、レナは弓に矢を番え、マッソーはマントを開けサイドトライセップスのポーズを決めた。
「行くぞッ!!」
クライブの叫びと共にリーファ達は守護竜の死体が転がる円形の部屋へと駆け込んだ。
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