最高のアンダーウェア
「クッ、まだ耳鳴りが……おい、リーファッ!! 味方を巻き込む様な攻撃してんじゃねぇよッ!!」
「その通りだッ!! 我の至高の肉体で無ければ、危うく命を落としている所だッ!!」
リーファの放った投擲攻撃の余波に巻き込まれたクライブと、元吸血鬼のマッソーが立て続けに苦情を申し立てる。
すぐに治癒魔法を使ったが、爆音による耳鳴りまでは回復出来なかったようで、二人とも少しふらついていた。
「あの……すいません」
ここ最近の戦闘によって力の使い方にも慣れて来た事で、技の威力はリーファの予想よりも遥かに高くなっていた。
投げた剣が音速を超えて衝撃波を発生させたのは、彼女にとっても完全に想定外だ。
「はぁ……まぁ、番人を倒せたからいいけどよぉ」
「ムッ、番人を撃破したという事は……」
マッソーは周囲を見回し、目当ての物を見つけてそれに駆け寄った。
クライブもマッソーの動きでそれに気付き、彼の後を追い出現した物に駆け寄った。
ちなみにリーファとレナは全裸のマッソーを警戒しているのか、壁に突き刺さった聖剣を回収しつつ遠目にその様子を見ていた。
「この中に我の求めた宝が……」
「宝箱か……どけ、開けてやる」
「ヌッ、これはかたじけない」
宝箱に手を掛けたマッソーの肩に手を置き、顎をしゃくって代わるように伝えた。
元吸血鬼は鍵と罠の存在を考えたのか、すぐに宝箱の前から離れクライブに場所を譲る。
「こいつは……爆弾か……」
クライブは盗賊ツールを取り出し、宝箱の裏側を開け、そこに仕掛けられた爆弾を解除。
その後、正面に回って掛かっていた鍵を開けた。
「よし、これで良い筈だ……開けるから一応離れておけ」
「了解だ」
マッソーが離れたのを横目で確認し、クライブは唇を舐め、ゆっくりと宝箱の蓋を開けた。
「これは……剣……いや鞘か?」
箱の中には金属製の細長い棒状の何かが入っていた。
曲刀の鞘の様な形で内部は空洞になっており、根元には皮紐が二本伸びている。
「おお、これこそ我が探し求めた最高のアンダーウェアッ!!」
「ア、アンダーウェアッ!?」
「その通りだ。我は牛の女神、ラフィネリス殿の助言で気付いたのだ!! 肉体の全てを見て貰いたい!! そう思っていたがそれは間違いであったと!! 筋肉の美しさを表現する為には、セクシャルな情報は不要なのだ!!」
拳を握り熱く語ったマッソーは宝箱に手を伸ばし、その金属製の何かを静かに股間に装着した。
「えぇ……」
絶句するクライブを他所にマッソーは何かを革紐で固定し、ポージングしながら装着した何かの具合を確認している。
「うむッ! 完璧であるッ!!」
「おま……なんだよ、ソレ?」
「これは古代、リザードマンの戦士達が身に付けた装身具、コテカであるッ!! 美術品としても高い価値があるだろうコレならば、我の肉体の美しさをさらに高めてくれようッ!!」
コテカ、いわゆるペ●スケースを装着したマッソーは、そう叫び、クライブの前でフロントダブルバイセップスのポーズを取り満面の笑みを浮かべた。
セクシャルな情報は必要無い。マッソーはそう言っていたが、長く太い白銀のコテカを装備した事で余計に意識がそこに向かってしまう。
「なぁ、それって逆効果なんじゃ……」
「ん? 何か言ったか? フフフッ、あの番人の閃光で肉体の色も我の理想に近づいた! お前達とは色々あったが、今回は世話になった! 我一人ではあの番人に勝つ事は難しかっただろう!! ……そうだッ! 借りを返す為に我も探索に同行しようではないかッ!!」
「いや、結構だ」
「フフフッ、遠慮するなッ! 吸血鬼としての能力は失ったが、この無敵の肉体はそんじょそこらの冒険者よりも遥かに強いぞッ!!」
確かにマッソーは道中、一人で魔物を殲滅した様だし、その強さだけは認めてもいいだろう。
だが、裸にち●こケースの変態と行動を共にしたくはない。
「あの、クライブさん……」
クライブとマッソーが話していると、聖剣を両手で抱える様に持ったリーファが怯えた様子で声を掛けて来た。
リーファの後ろでは耳を伏せたレナが、チラチラと窺う様に顔を覗かせている。
「娘達よ、此度は世話になったッ!! その恩返しとしてお前達の探索に我も同行してやろう!!」
「え゛ッ!? う、嘘ですよねッ!! ク、クライブさんッ、もしかして了承しちゃったんですかッ!?」
「するわけねぇだろッ!!」
「レナ、こっ、怖いです……」
「フフフ、少女よ、我がいれば何も怖い物などない。立ちふさがる魔物は全て我のこの鍛え上げられた肉体で粉砕してやろう」
マッソーはモストマスキュラーのポーズで両腕と胸の筋肉を盛り上げながら、レナに向かって白い歯を光らせた。
「ヒッ……」
「レナが怖がってるのはお前だ、馬鹿ッ!」
クライブはマッソーの後頭部をパシッと叩き、腰のポーチの中から白いマントを一枚取り出した。
「どうしても俺達と行動するってんなら、せめてこれを羽織れ」
「断るッ!! 体を覆う布など不要ッ!!」
「お前、前は黒マントを羽織ってたじゃねぇか」
「あれは陽光から身を守る為だッ!!」
「ともかく、それを着ないなら一緒に行動するのは無しだ」
「グヌヌ……」
マッソーはクライブが投げたマントを手に、悩んだ様子を見せた。
以前、ラフィネリスに語った様に、彼の中には受けた恩は返すというルールが存在していた。
望みの宝を無事に手に入れる事が出来た恩を返さずに、このまま撤収する事は自分の中にわだかまりを残す。
それは何とか避けたい。
「致し方あるまい……」
肉体を見せたければ、マントを開ければ良いだけであるしな。
こうして、この世界に小麦色の肌に白いマントを纏ったち●こケースの怪人が新たに誕生したのだった。
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