解決の糸口を求めて
学園都市ルードネル。その名前の由来となっている魔法大学へと足を運んだゴダックとニーダンスの二人は、Sランクパーティーという肩書を活かし呪術の研究者だという大学教授、カルバインと面会をはたしていた。
来訪の目的を告げて研究室に案内された二人を出迎えたのは、眼鏡をかけた金髪でショートカットの女性だった。
「これがその呪術が掛けられているという魔剣ですか?」
「ああ、どうもこいつには、使えば使う程、魔族的思考、力を求める様になるって呪いが掛けられているらしい」
「それだけではなく、最終的にはその呪いから解放される術式も埋め込まれているとか。調べて欲しいのはその解放術式なのです」
「ふーむ……」
カルバインは眼鏡を持ち上げると、テーブルに置かれた魔剣に手を伸ばし、鞘から剣を引き抜いた。
その後、刀身に顔を近づけ観察を始める。
「パッと見、呪術の痕跡は見えないですね……」
そう言うと今度は左手を刀身に翳し、囁く様に詠唱、翳した手から魔力を放ち魔剣を調査していく。
「これは!? 複雑でありながら洗練されていて……なんて美しい……」
「……解放術式の解析は出来そうですか?」
「えっ、ええ、少しお時間を頂ければ、解析できると思います」
「そうか、なるべく急いでくれ。その分、謝礼は弾むからよ」
「研究費用はいくらあっても困りませんので、大変助かります」
「よろしく頼むぜ」
「お願いしますね」
カルバインに頭を下げると、ゴダック達は魔剣を彼女に預け研究室を後にした。
カルバインはそんな二人をニッコリと微笑みながら見送った。
「……精神操作……もしかして勇者アルベルト様が……」
そう言ったカルバインの顔には、先ほどゴダック達に向けたものとは別のタイプの笑みが浮かんでいた。
■◇■◇■◇■
一方、魔女のベルサと共に不死鳥、エラリオンの屋敷へ飛んだクライブはまだ修理中の建物の中で、ベルサとエラリオンを引き合わせていた。
いつかの老執事に案内された応接室、低いテーブルをはさんでクライブとベルサは赤髪の青年と向かい合う。
「ベルサ、こいつが話していた魔法医、エラリオンだ」
「エラリオン、こいつはSランクの冒険者パーティー、聖王冠のメンバーの一人、魔女のベルサだ」
「どうも、魔法医のエラリオンだよ」
「魔女のベルサよ。それで早速なんだけど、あなたの魔法で呪いによって精神を歪められた者は癒せるかしら?」
「呪いって、もしかして邪神の武具の?」
エラリオンは問い掛けながらチラリとクライブに目を向けた。
クライブは頷きながら、口を開く。
「お前は秘密を誰かに喋る事はねぇだろうが、一応、この話は内密で頼む……精神を歪められたのは勇者様なんだ」
「勇者って、あのアルベルトかい?」
「そうだ」
「ねぇ、あなたは邪神の武具の呪いも解いたんでしょ? だったらアルベルトも癒せない?」
ベルサは静かに、だが真っすぐにエラリオンを見つめた。
「クライブ達には色々借りもあるし、やってみるのはやぶさかじゃないけど、僕の炎でも精神、つまり性格の矯正は難しい」
「絶対に無理なのか?」
「方法はあるにはあるけど……その方法だと、勇者は死んでしまうかもしれない」
「アルベルトが死ぬッ!? どういう事よッ!?」
思わず立ち上がったベルサにクライブが声を掛ける。
「落ち着けベルサ。エラリオン、説明を」
「……精神を治すとなれば、僕がやるなら炎を用いた浄化と再生という形になるだろう。分かりやすく言うなら、一回死んで生まれ変わらせるって事になる。それに勇者が耐えられるかどうか、それは彼の魂しだいなんだ」
「生まれ変わり……」
「人間が転生に成功する確率は低い。肉体は蘇生しても魂が抜け落ちている場合が多いから……だから、やるならよく考えて選んでほしい」
エラリオンの言葉を聞いたベルサは、魂がと呟き、虚ろに瞳を揺らした。
■◇■◇■◇■
宿に戻ったクライブ達を少し疲れた様子のゴダックとニーダンス、それにサフィ達がスイートルームのリビングで出迎えた。
「えらくお疲れだな」
「ああ、解析については呪術を研究している教授が請け負ってくれたんだが、その後、学生共に囲まれてな」
「売り込みを掛けられて難儀しましたよ」
ゴダック達は言わなかったが、学生の中には勇者であるアルベルトが魔法の正道ではない魔女を連れている事に憤り、ベルサをパーティーから追放し自分達を加入させるべきだとのたまう者もいた。
勿論、そんな学生はゴダックが睨みを効かさせた事で一瞬で退散したが……。
ベルサは言われなくてもそんな光景が想像出来たのだろう。やさしい笑みを浮かべていた。
「サフィ達はどうしたの?」
「アルベルトが目を覚ましたんだけどさぁ。もっと強くなりたいって、すぐにでも出て行きそうになって……話も聞いてくれないし……」
「アルベルトが……それで今、彼は?」
「アルマリオスちゃんが掛けた眠りの魔法で眠っています……なんにしても、魔剣の呪いの影響を消さないと……」
「だね。じゃないとあたし等じゃ止められないよ。それで、ベルサ姉の方はどうだったの?」
エレナの問い掛けにベルサは重い口を開き、エラリオンに聞かされた方法について説明した。
「死の可能性ありか……やるとしてもそれは万策尽きた時だな」
「そうですね。今は剣の解析を待って、心の解放術式が解明されるのを待つとしましょう」
「それまでアルベルトには眠っていてもらうのがいいかも」
「そうね……後で私が精霊を使って永久の眠りの魔法を掛けておくわ」
「じゃあ、そっちは解析待ちだな。じゃあ俺とリーファは予定通り武具の回収に行って来るわ。レナ、お前はどうする?」
クライブに問い掛けられたレナは、少し迷った様子を見せたがすぐに顔を上げた。
「……行きます。ここにいてもレナに出来る事は少ないですから」
「……そうか。んじゃ、明日は三人で迷宮の探索だな」
「はい」
クライブの言葉に頷いたレナの顔には、アルベルトの身を案じてか不安がにじみ出ていた。
そんなレナに歩み寄り、クライブは彼女の頭をポンポンと撫で大丈夫だと歯を見せ笑った。
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