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魔竜咆哮砲

 ゴダックに頷きを返したリーファは四肢を第四形態に変え、両手を前に突き出した。


「お願いしますッ!!」

「頼んだぜ嬢ちゃんッ!!」


 リーファにそう言い残し、ゴダックはアルベルトに向かって踏み込む。

 アルベルトとクライブの周囲は、聖者の衣が生み出した刃の触手が激しくぶつかり合っており、近づく事の出来ないサフィが鍔迫り合いを続ける二人を不安げに見つめていた。


 ゴダックはその刃の嵐の中にオーラの盾を構え躊躇なく突っ込んだ。


「ゴダックッ!? いくらあんたでもッ!!」

「俺は聖王冠(ホーリークラウン)の盾だッ!! 盾は仲間を守るもんだろッ!!」


 聖者の衣が同じ材質で出来ていても、速度と重量の乗った刃を完全には防ぎきれない。

 ゴダックは衣を変化させた重層鎧を切り裂かれ、その身から血を吹き出しながら前進した。


「ドラアアアアアッ!!!!」

「グッ、ゴダックッ!?」

「何で俺までッ!?」


 気合の声を上げながらオーラシールドを使ったシールドバッシュによりクライブもろとも、アルベルトを吹き飛ばす。

 クライブは、すぐに転移を使い地面に降りたち、転がってシールドバッシュの勢いを殺した。

 一方、転移出来ないアルベルトは上空へと打ち上げられた。


「無駄だ。衣の力を使えばリカバリーは容易い」


 アルベルトは触手を蜘蛛の糸の様に放ち、迷宮の床や壁に撃ち込んだ。


「サフィさんッ!! クライブさんッ!! その触手を斬って下さいッ!!」

「わ、分かったわ」

「了解だッ!!」


 リーファが何かするつもりだと、これまでの共闘で察知したサフィとクライブは、転移を使いアルベルトが展開した触手の切断に回った。

 その事で吹き飛ばされた勢いを殺し切れなかったアルベルトは、慣性のままに更に打ち上げられる。


「クッ……そうか、全員、その駆け出しに付いたという事かい……」

「ニーダンスさんはゴダックさんに治癒をッ!!」


 リーファが衣から伸びる触手を警戒し、後方に下がっていたニーダンスに向かって叫ぶと、糸目の司祭はすぐさま神への祈りを始めた。


 あとは私が上手くやれば。


 アルベルトは次々に触手を伸ばしていたが、そのことごとくをサフィとクライブは転移を使い切断して回った。

 アルベルトの上昇は終わり、今度はゆっくりと落下を始める。

 竜化した両腕がその落下するアルベルトに静かに重ねられた。


"リーファ、タイミングを合わせて……アルマリオスの魔力を以って、勇者アルベルトの傷を癒せ、治癒(ヒール)"

「息吹を両腕に……反動は両足で……魔力によって拡散を防ぐ……すぅうううううう……行きます。魔竜咆哮砲(ドラグロアキャノン)ッ!!!!」


挿絵(By みてみん)


 リーファが英雄譚からの引用で作った技名と共に、両手から青白い閃光が真っすぐに伸び、落下するアルベルトを捉える

 同時に後方に下がった小さなアルマリオスの唱えた詠唱により、リーファの肉体に宿った竜の魂が癒しの魔法を発動した。


 アルベルトは放たれた光にいつかの様に魔剣を叩きつける。

 魔剣は以前と同様、光を弾いた。

 だが、溢れた光はアルベルトの体から聖者の衣を剥ぎ取り、魔族化した両腕を飲み込む。


「グアアアアアアアッ!!!!」


 聖なる闘気で魔族化した体を焼かれる痛みでアルベルトは絶叫を上げた。

 聖属性は純粋な魔族にとって毒と同じだ。浴び続ければ肉体は腐食しやがて崩壊する。

 その崩壊した肉体をアルマリオスの癒しの魔法が、同時に癒して行く。


「ぐぞ……ぼくば……ざいぎょうに……」


 破壊と再生の光の中でアルベルトは更なる力を求めた。

 しかし、力の源となっていた聖者の衣はリーファの攻撃によって剥ぎ取られ、魔族化した肉体も削られ人へと戻っていく。

 残ったのは力への強い渇望だけ……。

 だがそれも、青白い閃光による痛みの中、いつしか消えていた。


 植え付けられた渇望さえも剥ぎ取られたアルベルトの心にあったのは、ただ、生きたいという思いだった。

 やがて魔剣を翳し続けられなくなったアルベルトは光の奔流に飲まれた。

 光はアルベルトの金の両眼を焼き、彼の世界は暗闇に包まれた。



■◇■◇■◇■



 翳した両手からの光の放出はかすれる様にして止まり、リーファは荒い息を吐いて、崩れる様に迷宮の石畳にしゃがみ込んだ。

 閃光を放った両腕は上がらず、踏ん張っていた足にはまるで力が入らない。

 二体目の守護竜と戦った時と同じく、体に蓄えていた力を全て出し切ってしまったようだ。


「おいリーファ、大丈夫かッ!?」

「は、はいクライブさん……前と同じで力を使い切ったみたいです。それよりアルベルトは?」

「そっちはサフィが……」


 視線を向ければ、サフィがアルベルトの側にしゃがんでいた。

 彼女は後方のニーダンスに視線を向け、アルベルトと共にニーダンスの側に転移した。


「どうなのッ!?」

「ふむ……命に別状はないみたいですね……体を見る限り、魔族化した部分は全部、先ほどの光で吹き飛んだようです……その吹き飛んだ肉体も再生されている……」

「ブレスと一緒に治癒魔法も掛け続けたからね。あとは意識だけど……」

「そいつはこれがあれば何とかなるんじゃねぇか?」


 ゴダックがアルベルトが使っていた魔剣、金髪スケルトンのローザが術式を書き換えたというソレを翳して見せる。

 どうやら転移を使い、回収してきたようだ。


「それを解析すれば、糸口はつかめるかもね」


 アルマリオスの言葉でゴダック、サフィ、ニーダンス、そしてレナもホッとした様子を見せた。


「アルベルトは無事なのッ!?」

「あっ、勇者様、治ってるッ!!」


 ニーダンスと同様、後方に下がっていたベルサとエレナもゴダックに一足おくれてアルベルトの下に駆け付ける。


「守護竜が癒しの魔法を息吹(ブレス)と同時に掛けていたようです」

「やったのは僕だけど、アイデアはリーファが出したんだよ」

「お嬢ちゃんが……」


 一行はクライブにおんぶされこちらに向かっているリーファに視線を向けた。


「……あの嬢ちゃん、ホントにアルベルトを救ってくれたんだな」

「わたし等に裏切られたってのに、変わった娘だよ」

「裏切りを許し、より良き道を歩む……まるで英雄譚の登場人物のようですね」

「……あの娘はそこまで考えていないでしょ?」

「確かにお姉ちゃんはその場の思い付きで物事を決めていそうです」

「……レナ、あんた、あの姉ちゃんの仲間じゃないの?」


 普段の言動からか、微妙に評価の低い言葉を連ねている一行に、評価対象であるリーファが声を掛ける。


「アルベルトは無事ですか? 思いっきりやったので、手足の一、二本ぐらい消し飛んでいませんか?」

「……五体満足だよぉ……てか、あんた、そんな危険な攻撃をアルベルトにしたのかい?」


 ジトッとした目を向けるサフィに、リーファはアハハと乾いた笑いを返した。

 そのやり取りを聞いた一行は、ベルサのそこまで考えていないという言葉は正しかったと苦笑を浮かべたのだった。

お読み頂きありがとうございます。

面白かったらでいいので、ブクマ、評価等いただけると嬉しいです。

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