冒険者とは
クライブが持って来てくれた食事を取りながら、何が起きたのか話を聞く。
それによるとリーファが昏倒した後、アルマリオスは取り込んだ魔素を解放、その後すぐにニーダンスが癒しの魔法を使って疲弊したリーファを癒したらしい。
その後、守護竜の隠し部屋の扉を小さなアルマリオスの指示で開け、驚く聖王冠の面々と共に部屋にリーファを運び込み寝室に寝かせたそうだ。
現在、聖王冠はリーファが目を覚ますまで、隠し部屋のリビングで待機中との事だった。
余談ではあるが、リーファが食べている食事は戦士のゴダックが作ってくれた物らしい。
パンにチーズ、レタス、ベーコンを挟んだシンプルな物だったが、マスタードが効いていてとても美味しい。
「美味いよな。それ」
「はいッ! マスタードの唐さとベーコンとチーズの塩気が丁度いいですッ!! 後はここに濃縮唐辛子ソースがあれば……」
リーファはそう言って腰を探る。
「あれ、ポーチが?」
「ポーチなら鎧からパジャマに変わった事で外れてたから、そこに置いてる」
クライブが指差した先、サイドテーブルの上に目当てのポーチが置かれていた。
それにリーファが手を伸ばす前に、クライブが立ち上がりポーチを手に取る。
「クライブさん?」
「鼻血出してぶっ倒れた人間に、あのソースは刺激が強すぎる」
「えっ、えっ?」
「なんで、アレは暫く禁止だ」
「う、嘘ですよね!? 私はアレが無いと食べた気が……」
「禁止だ」
クライブはそう言ってリーファのポーチを自分の腰のポーチに入れた。
「そ、そんなッ! お願いしますッ!! ほんの数滴でいいんですッ!!」
「駄目だ。それよりさっさと食べろ。あと牛乳も飲め」
リーファの懇願をピシャリと断ち切り、クライブはコップに注がれた牛乳をベッドに置いたお盆から持ち上げ、ズイッとリーファに突き出した。
■◇■◇■◇■
リーファにとっては一味足りない食事を終えた後、彼女はシャワーを浴びて血を完全に洗い流した。
ある程度はクライブがふき取ってくれた様だが、完全では無かったので風呂で全身を洗う事にしたのだ。
風呂から上がりサッパリしたリーファがリビングに向かうと、アルマリオスがパタパタと彼女に向かい飛んで来た。
「無茶をさせたね」
「しょうがないですよ。他に方法が無かったんですから」
「チビ竜に聞いたよ。あんた、周辺の魔素を体に取り込んだんだって?」
ソファーに腰かけたサフィが首を巡らせリーファに問い掛ける。
どうやら、リーファが何を行ったかは、アルマリオスによって説明がなされたようだ。
「はい、そうしないと勝てそうになかったですから」
「だとしても、一人の人間があんな濃い魔素を取り込んだら、最悪死んでたわよ」
煙管を手にしたベルサの深い紫の瞳が、リーファを静かに見つめる。
「……あなたは他者の犠牲は許せないのに、自分については躊躇しないのですね……」
「そういう訳じゃないんですけど……」
至高神の司祭、ニーダンスの言葉にリーファはどう反応していいのか分からず、ポリポリと頭を掻いた。
あの時はそうする事が正しいと思った。英雄譚に登場する主人公たちも危険な道に敢えて踏み込んでいた筈だ。
冒険者ならそんな事は当然では無いのか……。
そんな思いが顔に出ていたのだろう。
ゴダックがおもむろに口を開く。
「……嬢ちゃん、あんた、危険に飛び込むのが冒険者だと勘違いしてないか?」
「え、違うんですか?」
「違うね。この商売は生きて帰ってこそ成り立つのさ。勿論、戦いに身を置いているんだ。無傷じゃいられない、だが傷を減らす為の努力はすべきだし、その為に仲間がいるんだぜ」
「仲間……」
リーファはリビングの壁に背中を預け、こちらに視線を向けているクライブに目をやった。
彼はリーファを真っすぐに見つめ返し静かに頷いた。
そうか、私、いつの間にか自分がどうにかしなきゃって、自分は力があるんだからってそう思ってた。
あの時だって何をするか伝えて、守って欲しいだけじゃなくて、サポートをお願いすればリスクを減らせたかもしれない。
話し、言葉で伝える事。これは英雄譚じゃなくて現実で、私はやっぱり駆け出し冒険者で……生き残る為には出来る事はしないと駄目なんだ。
「……すみません。これからはちゃんと話す様にします」
「冒険者続けるならその方がいいだろうな」
ゴダックの言葉に聖王冠の面々は、サフィは鼻を鳴らし、ニーダンスは笑みを浮かべ頷き、ベルサは煙管をくゆらせ紫煙を吐き出した。
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