可変甲冑と学園都市
可変甲冑聖者の衣の呪いを解いたリーファ達。
彼らは不死鳥エラリオンと屋敷の召使い達に別れを告げ、アルベルト達の足取りを追うべくユーゲント砂漠の西岸の中継都市、コーラッドへと飛んだ。
辿り着いたコーラッドでクライブが聞き込みをした結果、アルベルト達は馬車で南へ向かった事が判明した。
街の食堂、四角いテーブルを囲んでリーファ達は情報を共有する。
「この街の冒険者ギルドで聞いた所によると、アルベルトは南のリデノ山脈にあるダンジョン、錬金術士バーガンスの研究所について調べていたそうだ」
「ふむ……やっぱり邪神は勇者の現在地から一番近い迷宮を選んでるみたいだね」
「じゃあ次はリデノ山脈ですね」
「あの、バーガンスの研究所って、どんな所なんですか?」
「そいつも調べた」
そう言うとクライブはポーチから手帳を取り出し、錬金術士バーガンスの研究所について説明を始めた。
錬金術師バーガンスは千五百年前、錬金術により自らの肉体を長命種と融合、キメラ化する事を目指した異端の錬金術師だ。
錬金術はそもそも賢者の石と呼ばれる物質を作り出し、卑金属を価値ある黄金に変える事の他、不老不死化を目指した学問の事だ。
ただ、研究は続けられているものの、未だ賢者の石の生成に成功したという報告は無く、バーガンスは石の生成ではなく自らがキメラになる事によって長寿を得ようとした様だ。
そんなバーガンスも千百年程前に領主の命を受けた騎士によって討伐されている。
現在はバーガンスが更なる力を求め作り出したキメラたちの巣窟のなっているそうだ。
「キメラって、色んな魔獣が混ざった頭が二つとか三つある奴ですよね?」
「ああ、ギルドの情報じゃあ、キメラ同士の交配が進んでかなりカオスな奴もうろついているらしい」
かなりカオスな奴、クライブの言葉でリーファの脳裏に馬の足に蝙蝠の羽根、顔は猪で胴体は蜥蜴に尻尾は狸という、強いのか強くないのか分からない生物の姿が浮かぶ。
「途中でアルベルト様にも会えるでしょうか……」
「もし見かけても近づかないほうがいい。リーファじゃまだアルベルトには勝てないだろうからね」
アルマリオスにそう言われて、レナは残念そうに視線を落とした。
「そんなに差がありますか?」
「うん、純粋な力云々じゃなくて、剣士としての力量の差だね。それに聖王冠とも戦う事になるだろうし……」
「一応、私も毎日、教官に教えられた技の反復練習はしてるんですが……」
「練習だけじゃ身に付かねぇもんもある。そいつは実際にダンジョンを攻略しながら高めていくとしようぜ」
「……そうですね」
レナの為にも出来るだけ早くアルベルトから魔剣を奪いたいが、共闘した時も感じたが聖王冠の連携は見事で、彼らとアルベルトが一緒になれば返り討ちになる事はリーファにも理解出来た。
出来るだけ早く、邪神の武具、それとアルマリオスさんの魂を手に入れなければですね……。
リーファはそう決意を新たにした。
■◇■◇■◇■
大陸南部のリデノ山脈、大陸の最南端に広がるローガス平原と中部とを分ける国境線にもなっている山々だ。
山脈の向こうは浅黒い肌をしたデュード人の国、テラン帝国となっており、高温多湿な気候で帝国にはデュード人の他、蜥蜴人も集落を作り帝国の民として暮らしている。
一番、魔族の支配地域から遠く、リデノ山脈という天然の城壁もあるおかげで、大陸においては比較的平和な国として知られている。
話が逸れたが今向かっているのは北側のシフ大公国だ。
大公国は魔法大学のある学園都市ルードネルがある事からも分かる様に、魔法の研究に力を入れている国だった。
「リーファ、ダンジョンに潜るのは明日にして、今日は一番近い街で宿を取ろう」
コーラッドを出て二日、野営をしながら出来るだけ距離を稼いで来た。
アルベルトは二日前にはコーラッドを出たようなのだが、移動速度を考えれば何処かで追いこしていてもおかしくないだろう。
「了解です。どこの街にしますか?」
「そうだな……出来る限りデカい街の方がいいんだが……」
飛竜になったリーファの背でクライブは地図を睨みながら当たりを付ける。
「一番迷宮に近い都市はルードネルだな」
「どんな街なんです?」
「ルードネルは魔法大学がある事で有名な街だよ」
「魔法大学って何ですか?」
リーファの質問に答えたアルマリオスに、レナが首を傾げる。
「魔法大学は素質のある子に、魔法の基礎から応用まで教えてる学校だね。成績のいい子は王宮で働いたり、有力貴族のお抱えになったりするみたい」
「魔法大学か……食い詰めたのか、英雄志望か知らねぇが冒険者の中にもたまにいるぜ」
「……なんだかクライブさんは嫌いみたいですね?」
声の調子からそれを感じ取ったリーファは、チラリとクライブに視線を送る。
「なんていうか、あいつ等プライドが高いんだよ。俺はエリートなんだぞみたいな感じで人を小馬鹿にしてくる奴が多くてよぉ」
「レナ、馬鹿にされるの嫌だなぁ」
「まっ、宿に泊まるだけだし、大学の魔法使いに会う事はねぇだろ」
「そうだといいんですが……」
一抹の不安を抱きつつ、リーファはクライブが地図とにらめっこして指し示した南南東へ向かい翼をはためかせた。
■◇■◇■◇■
辿り着いたルードネルの街は、魔法大学のおひざ元という事もあって、魔法使いが灯す魔導灯の明かりで日が落ちたというのに明るく輝いていた。
リーファは街の少し手前で街道側の茂みに着陸し、その身を第一形態へと変化させた。
その際、纏っていた聖者の衣を軽装の鎧と服に変化させる。
練習は必要だったが、一々着替える必要が無いのは便利ではあった。
素肌に鎧というのは多少抵抗があったが、服に変化した部分は着心地も良く、入浴時等はブレスレット状態にすればいいのでこれ一つあれば、特に服は必要無いと感じていた。
ただ、クライブとレナは流石に全裸に鎧は嫌だったのか、下着の上から装備していたが……。
「こいつは使いようによっちゃあ、防御だけじゃなくて攻撃にも使えそうだな」
「ですです……お姉ちゃんみたいに羽根を生やしたら飛べないかなぁ」
「羽根か……滑空ぐらいなら出来そうだな」
「これまで見た勇者達は、全身から棘を生やしたり、手甲を刃物に変えたりしてたね」
「なるほどな……」
「お待たせしました。行きましょうか」
「おう」
リーファは聖剣とポーチを身に付け、支度を整えるとクライブ達に声を掛けルードネルへと歩みを進めた。
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