斬新で個性的
不死鳥のエラリオンを真っ二つにしたリーファは、燃え上がるエラリオンを放置して吹き飛ばされたレナとクライブに視線を向けた。
火傷を負った様子のレナとクライブを確認すると、腕を広げリーファは呪文を唱える。
「アルマリオスの魔力を以って、盗賊クライブと獣人レナの傷を癒せ、治癒」
詠唱と共に両手から魔力が流れ淡い光が二人を包み込み、火傷を負った肌が癒えていく。
その後、リーファは体の小さなレナの下へ走った。
「レナさん、大丈夫ですかッ!?」
レナを抱き上げクライブの下に向かいながらリーファは抱えたレナに呼び掛ける。
「うぅ……お姉ちゃん?」
「レナさん、何処か痛い所は無いですか?」
「体は大丈夫みたい……あ、髪がッ!?」
レナは炎を浴びた所為で前髪の一部と、長く伸ばした後ろ髪の先がチリチリになっていた。
「うぅ……艶々の黒髪がレナの唯一の自慢だったのに……」
「大丈夫ですよ。毛先を切りそろえれば。それにすぐに伸びます」
「……あぁ……クソッ、まだ頭がくらくらするぜ……」
「あ、クライブさんもだいじょ……ブハッ!!」
「何だよ? ……ムッ、何だこれはッ!?」
レナよりもエラリオンの近くにいたクライブは、炎をもろに浴びたらしく、鎧や服は焼け焦げ髪は見事なパンチパーマになっていた。
自分の頭を触りその事に気付いたクライブは慌てて手鏡をポーチから取り出し、髪を確認している。
「うぉ、マジかよ……」
「よ、よかったレナ、ああならなくて……」
「ブフフ……」
「リーファ、何笑ってんだよ?」
クライブは笑いを堪えきれないリーファを睨み、ドスを効かせ睨みつける。
「す、すいません……ププッ、でもなんというか、イケメンがそういう髪型だと何だか可笑しくて……プフッ、アハハハッ!!」
腹を抱えて笑い始めたリーファをひとしきり睨んだクライブは、視線を元凶であるエラリオンに向ける。
「うー、あのやろう、一発ぶん殴ってやらねぇと気がすまねぇ」
クライブは腰を上げると雨の中でも燃え続けるエラリオンの死体に歩み寄る。
伝説なら不死鳥は死んでも炎と共に蘇る筈だ。
聖剣の効果か、上がる炎は黒では無く金色の輝きを放っていた。
クライブがボキボキと拳を鳴らしつつ復活を待っていると、パタパタと羽音響かせアルマリオスが森から飛んで来た。
「上手く行ったようだね……クライブ、なんとも斬新な髪型だね」
「うるせぇッ!! それよりコイツ、どのぐらいで復活するんだ!?」
「多分、五分かからないと思うけど……」
「はぁ……ふぅ……ああ、可笑しかった……アルマリオスさん、エラリオンさんが生き返ったらどうするんです?」
「ともかく話を聞いて、出来るなら鎧の呪いを解こう……」
「呪いか……」
話を聞いていたクライブが何やら考え込む中、リーファが魔法で降らせた雨も止み、気が付けば屋敷を焼いていた炎も消えていた。
「クシュンッ!!」
「雨で冷えちゃいましたね……レナさん、炎に当たりましょう」
「はいです」
三人と一匹はリーファ達がポーチから出したタオルで顔や頭を拭き、不死鳥の死体から噴き出る炎でその身を温めた。
「あー、しかしなんだなぁ……戦ってた相手で暖を取るってのは微妙な気持ちになるな」
「いいじゃないか。暖かいんだし」
「……アルマリオスちゃんって、なんだかいい加減ですね」
「……レナ、大体の生き物は長く生きている内にいい加減になるものなんだよ」
「私はそれだけじゃ無いと思いますけどね……」
そんな話をしている内に遺体は燃え尽き、最後に一際大きく炎を上げた。
その炎が治まった後には、赤い髪の赤と金、それに白がグラデーションになった簡素な服を着た美青年が、憂いを帯びた目をこちらに向けていた。
「ふぅ……完全に堕神になっていた僕を倒しただけでなく、浄化までするとは……」
その神秘的な雰囲気の美青年にクライブは歩み寄ると、無言で彼の頬に張り手を叩き込んだ。
「ブヘェッ!? いっ、いきなり何をするんだッ!? 父上にもぶたれた事無いのにッ!!」
「何をするんだ!? じゃねぇよッ!! どうしてくれるんだこの髪をよぉ!?」
「プフッ……随分個性的な髪型だね……最近はそういうのが流行ってるのかい?」
エラリオンが噴き出した事でクライブの眉間の皺は更に深くなる。
「流行ってねぇよッ!! お前が放った爆炎でこうなっちまったんだよッ!!」
「……そういえばハッキリじゃないけど、なんとなく覚えているよ……ふむ、そうだな、じゃあこうしよう」
美青年はそういうと、パチンッと指を鳴らした。
「わっ、クライブさんの頭が燃えてるッ!?」
「だ、だ、大丈夫ですかッ!?」
「もっ、燃えてるだとッ!?」
「三人とも落ち着いて、不死鳥の浄化と再生の炎だ。危険は無い筈だよ」
「不死鳥の……」
「そ、そういえば全然熱くねぇ……」
クライブの頭の炎が治まった時には、確かにパンチパーマでは無くなっていたが、サイドが刈り上げられた見事なモヒカンになっていた。
「しまったッ」
「ブフッ!?」
「あっ!?」
「これはまた……」
「……テメェ、まだ殴られたりないようだな……」
周囲の反応でその事に気付いたクライブは、再度、ボキボキと両手を鳴らす。
「ああ、すまない。ずっと夢うつつだったから、感覚が……これでどうだいッ」
エラリオンが指を鳴らすと再びクライブの頭が人体発火現象よろしく燃え上がり、その炎が消えた時には彼の髪は元々の髪型に戻っていた。
頭を触り手鏡でそれを確認したクライブは、ホッとため息を吐いた。
「ふぅ……最悪丸刈りにするしかねぇと思ってたぜ」
「ププッ、それも似合うかもですね」
「笑ってんじゃねぇよリーファッ!」
「まぁまぁ、直ったんだからいいじゃないですか」
憤るクライブをリーファが宥めていると、赤髪の美青年が申し訳なさそうに声を掛けて来た。
「……君達には迷惑を掛けたようだね」
「正気に戻ったのか、エラリオン」
「ああ……最初は怒りで、その後は欲望で僕は堕神になっていたようだ……」
「君、内に溜めこむタイプだもんねぇ」
「全くだ。君のようなタイプが羨ましいよ……それで、記憶は曖昧だけど何か頼みがあったんじゃないのかね?」
そうだったと、クライブはポーチから大墳墓で手に入れた聖者の衣を庭に並べる。
「アルマリオスが言うには、こいつには人を魔族の体に変える呪いが掛かっているらしい、そいつを解除してもらいたい」
「これは可変甲冑……たしか勇者の武具の一つだったような」
「そうなんだけど、実はこれ、邪神ヴェル―ドが用意した物なんだよね」
「邪神ヴェル―ドが……呪いの鎧か……策謀好きなヴェル―ドらしい、回りくどいやり方だ……」
エラリオンは苦笑を浮かべると、先ほどと同じくパチンッと指を鳴らした。
金色の炎が聖者の衣を包み込み、やがて純白の甲冑から黒い靄が立ち昇る。
その靄も炎に巻かれて薄れて消え、後には銀色の全身甲冑が五つ、芝生の庭に並んでいた。
「これでいい筈だ」
「ではでは早速……」
リーファは身に着けた鎧を脱いで、ポーチに納め銀の甲冑の一つに触れた。
すると甲冑はシュルシュルと形を変え、リーファの全身を覆った。
「あ、割と軽いですね」
「それって形が変えられるんだろ? 試してみろよ」
「分かりました。じゃあ、背中を開けてみましょう」
そう言ったリーファの意思を反映したのか、甲冑の背中部分に穴が広がり、背中がむき出しになる。
「おお、いい感じだな。ただ服を着てると翼を出したり、飛竜になったりは出来そうにねぇな」
「裸に甲冑ですか? それはちょっとアレなんじゃあ……」
「服も聖者の衣で作ればいいんじゃない?」
「そんな要求に対応してくれますかねぇ……」
リーファ自身、半信半疑ではあったが、彼女の思考を感じ取った可変甲冑は思いのままにその姿を変えたのだった。
これで着せ替えが簡単にできる。
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