光げ場
土砂降りの暗い雨の中
私に冷たい土の上で、
怖くなった、
もうここに止まって居たくないから
そこから弾き出されたみたいに、
逃げ出した。
これまでを置き去りにして、
どこまで行けるかなんて考えずに、
無駄な記憶が絡みついた町の風景を横目に
全て手放した、
その開いた手で別の何かを掴もうとしたけど
そんなもの見つからなかった。
走り続けた。
黒い雨に、
凍りつくような地面に、
足元から削られていく。
徐々に自分がなくなってしまいそうだった、
そうなる前に、
もっと遠くに。
どれくらい走っていたのか、
どこに居るのか、
凍えた体が
逃げ道はここで終わりだってことを
分かりやすく教えてくれたから、
逃げ出してしまったことへの後悔が、
徐々に積み重なり私を地面に押し付けた。
いつの間にか流れた涙が、
暗く黒くなった雨が、
仲良く私の視界をぼやけさせていく…
自分から閉じようとしていた視界に
一筋の光が差し込んだ。
それは私の目を開かせ、意識を吸い寄せた。
心で身体を引きずって、
唯一見えていたものを頼りに進み続けた、
その先には、私のちっぽけな手には掴みきれないほどの輝きがあった。
はじめて見る
自分の居場所を
周りに見せつけるように光り輝くビル群や、
その下をあてもなく歩く人たち、
その数の多さでぐちゃぐちゃになった足音、
その全てが一つの賑やかな生き物のようで
私をその混沌の中に誘ってくれているようだった。
感じたことなかった、
私は小さくて
この生き物の背景の一部。
人は他人のことなど気にせず、
自分の望むものに身体を向け歩いている。
その冷たさが私を温めた。
改めて私は、
自分の求めるものを掴むまでは
どこまでも行けるんだと思った。
暖かいアスファルトが私をまた進ませてくれた、
雨は街の光に反射して輝いていた。
答えが出せるかは分からないけど、
それでも止まりたくない。
空っぽな自分に
少し希望を持たせてくれたその街は、
土砂降りの光の中で、
私の逃げ場所になってくれた。