始まり
世界観は一緒ですが時系列をかなり戻っております。登場人物も思いっきり変わってます
2020/3/6何かこれじゃない感じがしたため1話にまとめました
まとめている最中に一か所改行がおかしくなっています。気がづいたら教えてください ←3/7無事修正できました
気に入らない表現、誤字脱字等ありましたらお気軽に感想欄、誤字報告へお願いします
2022年水を媒体を介して水素にする技術が広がり人類はエネルギー制限から解放された
人類の進歩を阻害するものはない
最も初めに対処されたのが南北問題である。そして南南問題
温室効果ガスの排出がなくなり地球温暖化が緩和してきている
砂漠に木が生え林となり森となる
アマゾン川流域の熱帯林も回復の一途をたどり始めた
だが20年弱たった今その意欲が削がれ始めていた
そう皆疲れ始めてしまったんだ
2040年 天の川銀河の端っこ
一方的に狩られる生活に嫌気がさした軟体動物門多足動物類イカがストライキを始めた
海、重力の錠から解き放たれたイカ達は最も近い地球型惑星「地球」へ向かって一種大移動を開始した
地球~太平洋~
何万光年も移動したイカ達は極度の水分不足に襲われ哀れにも海水を飲み始めてしまった
徐々に下がる水位
このままいけば地球温暖化による都市の水没を防げると全人類、全首相が喜び踊るはずもなく、困惑のみが漂っていた
バッタバッタと倒れるイカ達
塩分過多
だろうな…全人類の意思が一つにまとまった唯一の時だった
ダーウィンの進化論
この時ほどこの論を恨むことはないだろう
自力で水分を使わずに塩分を排出できる個体が現れたのだ
その中には体長50mを超える個体が数多に含まれていた
人類はそれをmotherと呼んだ
その中にはおよそ体長10kmの個体が一匹いた
人類はそれをbigmotherとよんだ
次々と生まれるmotherそのエネルギーをどこに蓄えているのだろうか
mother目指して集い始めるイカ達
手を伸ばし貯精器官をmotherに近づけた
雌の隠れた選択が行われず次々と受精卵を作っていく
次々と孵る卵
水面に降下する幼体
跳ねる跳ねる跳ねる!
全員が思った反跳爆撃かよ!
蛇行し始めるmother
自分の子供のために栄養をすべて送ってしまったようだ
徐々に下がる高度
岩に正面衝突
高く舞い上がる水しぶき
晴れた先にはバラバラになった肉片のみだった
oh,mom!世界中の子供が叫んだ
有名なアーティストにより"oh,mom"という曲の制作が決まるほどであった
進行方向に漁中の日本の漁船があった
漁船に当たる幼体
漁船から悲鳴が上がる
吹きあがる水しぶき
後には口をぱっくり開けた船員といくつかのイカの幼体の死体のみだった
栄養を多量に得たイカ達は急激な成長を遂げ体長1mとなった
その中に一体motherが生まれた…
彼らは海中の生物を悔い改めさせながら着実に陸に接近していた
後にはmotherの血肉だけ残った
~アメリカ合衆国~
各国の首脳が対イカ会議をしていた
「イカの進行に伴い海産物が根こそぎ食べられています。このままでは食料危機に陥ります」
プロジェクターをたたきながら叫ぶ司会者
「食料飢饉というかこのままでは蹂躙されるよね」
「あの数ではミサイルで撃ち落とすはきついな」
「よし核だ!」
「では戦闘機の機関銃で撃ち落とすか」
「核こそ人類の魂!」
「あの巨体を撃ち落とすのは無理がある」
「核こそ正義だ!」
「機関砲ならどうだ?」
「皆の者核のもとに集え!」
「機関砲の有効射程圏内までイカが接近すればその時こそ我々の終わりだ」
機関砲は陸上用と海上用があり射程は10㎞と意外とあるように思われるが軍艦を展開する時間を考慮すると海上用機関砲による迎撃が難しく地上用、つまり戦車で迎撃することになる。敵の速度が安定しない以上、陸から10㎞以内に敵を近づけさせることはしたくない。
「核を持つ私の意見に背くか」
「なら他に意見はないか?」
「核、それこそまさしく人類のソール。皆核のもとへ!」
「今ある武装では難しいか…」
「核を持つ私の意見は人類の魂、貴様らは人類の魂に背くか!」
「黙れ!!」「黙れ…」「うるさいっ!!!」「やかましい!」
「だが核以外に手がないのも事実」
「正義は我々の手に!皆核のもとに集え」
「ほかに手がないのも事実」
「だが核が通じるのか?」
「核は人類の魂、いくら進化したイカであろうとも核の裁きを受ければThe end 希望的観測であることは確かだが ぴきゅ」
「貴様!希望的観測を前提で話すのか!」
イギリスの首相が両手でアックスの首を絞めた
「核ッを持つッ私の意見にッ背くか!」
逆に片手でイギリスの首相の首を絞める持ち上げた
「イギリス首相よ逆に聞こう!核の裁きを直接受けて生き残れる生物がいるとでもいうのか!」
「今侵略中のイカの情報がなさすぎって何も言うことはできない。だが宇宙を渡ってきたことから恒星の直射日光を受けていると考えられる、それなのに死せずなおかつ地球に侵略しようとしているのだ!そんな野郎に核の熱量では無理だ!あと…イギリス首相の顔が…青いのだが…彼を開放してはくれないだろうか」
恐る恐る物申した中国首相
「おっと我としたことがすっかり忘れていた」
放り投げるようにイギリス首相を開放した
核保有国のくせに核を鼻で笑ったイギリス首相に対して相当腹が立っていたようだ
「だがな中国首相よ貴様は少々頭が回っていなようだな」
「何?私の頭が回っていないだと?どういうつもりだ!」
「ふむ、核を持つものよ。核保有国その肩書の重さを理解していないようだな、もう少し頭を回せ!日本のカツオ一本釣り漁船に奴らが当たった時水しぶきを上げて死んだ、このことをよく考えてみろ…生物が船に当たるプロセスにおいて水は全く関与していない、ん?これは…」
「どうした?いきなりニヤケだして」
「いやなんでもない、水面にダイブしたわけではないのだからな。つまりイカが水を持ち歩いていることに他ならない。ではなぜ水を持ち歩いているのだろうな?」
ニヤニヤしながら観客の目を見ていく
答えが返ってくることを期待しているのか?
いいや違う
運命の香りがしたからだ
運命の香り、それは歯車が動き出す香り
それを堪能するために話を切ったのだ
もうすぐ来る
まったくもって検討のつかない不安と歓喜
ドン!
響き渡る爆発音
鳴りだすサイレン
火災が発生したのか煙が上がっていた
だがあの胚を焼き尽くすあの煙ではない
もっと穏やとねっちょりとした
そう生の煙
「アックスよ、何が起こっているんだ?ここはアメリカ、あなたの本土ですよね」
「やっぱり嫌いだ」
「え?なんとおっしゃいましたか?」
「ん?いやなんでもない」
荒い足音が近づいてくる
何故か皆、安心しだす
ドバン!
勢いよく開く扉
「大変です!大統領!第一実験室が爆発しました!」
「ふむ第一実験室か、確か地下にあったよな!」
「はい!」
ほかの首相の顔が達観してきた
まるで
あーまたか、アックス関係者はやばい
と言っているようで実に腹ただしいが今回は目を瞑ろう
って誰目線だよ!
「くはっはっはっは」
「どうかなされましたか?」
「いやなんでもない」
自画ツッコミをしてツボってしまったようだ
普通虚しくなるものだが、まぁそれがアックスのいいところといっても過言ではない
「でどうしたんだ?」
「はい、あなたがベルー教授にあげたオブジェクトが爆発しました!」
「何!」
ベルーは高校からの中であり私の唯一話の通じる親友である。大統領就任のとき彼に核爆弾をオブジェクトと言ってプレゼントしたんだがそれが起爆するとは…だが被害が少ないな
「被害は少なく研究所の真上にあったコンクリートのみで、人的被害はありません。ですが奇妙な報告3件ありました」
「ん?奇妙な?申してくれ」
「は、3件とも同じく何かが爆発に紛れて穴に降りて行ったそうです」
「くはっはっはっはっはついに動き出したようだなカッカッカッカ」
「穴に降りて行ったものをご存じですか?」
「いや知らん、そもそもそいつらは人間なのか?」
「…」
放射線が飛びまくっているところに飛び込む自殺願望者の仕業にしては飛び込む場所が意味不明だ?
そもそもそれは人なのか?
第一にこの報告は正しいのか、だが3件も報告が来ていることからこれは事実と考えて問題ないだろう
考えるだけで実物を見なければ推測の域を出ない。だがここで話すことを放棄して見に行くことはできない。
「結論から言おうイカの体内では水素を臨界超過にして核分裂反応が起きている。これを繰り返して推進力を得ていると考えられる。だがエネルギーを放出したらそこまで、回収することはできない。だが木星型惑星には水素がいくらでもあるため理論上可能だ。それを裏付けるようにイカは地球に来るや否や海水を飲み始めた。またこの方法では恒星の光を受ける必要がない。わざわざ恒星の光に耐えることができるよう進化するより生存に必要最低限の酸素で生きられるようになったほうがこのイカにとっては必要だ。これらのことからイカは核の裁きを耐えることはできない。以上だ!俺は爆発の件について調べてくる」
出した手をひっこめながら彼は会議室から出て行った
「相変わらず奴は一見知的青年に見えるが核に関しては頭の固い中年おやじだな」
「そうだな、だが仮に彼の意見が正しいのであれば初めて地球に来たイカの大きさを考えると起こる核爆発は小さく我々の核を耐えることは難しいだろうな。多分彼はここまで考えていないだろうがな。奴は最後の詰めがいつも甘い。だが珍しくなんだかワクワクしていたな」
「そうだな彼が子供のように無邪気にワクワクしていると微笑ましいものだな。よし、あいつもいないことだし対アメリカ連合国設立の件についてもう少し深めよう」
「そうだな、」
~隣接された第一実験室
眼前を睨みつけながら歩くアックス
はたから見れば爆発に飲み込まれたベルーを心配し、不安の中その場にいられなかった自分に葛藤を抱いているように見えた
だが違う
鼻歌を歌い、小躍りをしたくなる自分の気持ちを押さえつけているのだ
親友に対する不安がないわけではない。だが彼への絶対の自信があるのだ
遂にに動き出した!この時を待っていたんだ!運命それは正しく…
「大統領殿!お待ちしていました」
「状況はどうだ」
「エレベーターは動きませんが階段は繋がっています。ですが微量の放射線が確認されているため待機していた次第でございます」
「了解した、ではこれより第一実験室の突入する!皆我に続け!」
軍靴を響かせながら階段を下りていく
最下段に到着するや否や呻き声が聞こえてくる
軍靴に気が付いて助けてを求めているようだ
だがよく耳を澄ませると…
「んマッスルッ!…んマッスルッ!…んマッスルッ!…」
「…」
「んマッスルッ!…んマッスルッ!…んマッスルッ!…」
「全員転進!回れ右!全速前進!」
「アックス隊長!これ以上進めません!階段です!」
「今はまだ大統領だ!障害物は破壊せよ!前進あるのみ!」
さすが副隊長このボケをよく理解されている
「んマッスル!」
より一段と力強い声が聞こえたと思うが否、溶け立たれた壁紙の中に異様な金属光沢を放つ銅板が現れた。だが部屋の中央で異様に輝く金属?に注意が向くのも必然だろう
筋肉、筋肉暑苦しスリムな肉団子(?)が動き出した
「前言撤回!階段を全速力で登れ!」
金属の階段を踏み叩く軍靴の音とともに鬼ごっこは始まった
「あんたが置いた核に襲われた俺に心配の声すらかけず!逃げ出すとは!このベルー!アックスに粛清を与える!」
笑顔で恐ろしいことを言いながら追いかけてくるベルーやはり怖い!
「うるせぇ!」「基地を壊…」「階段が抜けるだろうが!」「おめぇら!仕事をしろおぉ!」
「ぎゃぁあああああ!親方だ!」
~
「で、ベルーよ何があったんだ?」
「実はだな俺のかわいい助手ちゃんがコーヒー運んでいる最中に躓いてな、それがアックス君がくれたオ、ブ、ジェ、ク、ト、でよう」
「やはり気が付いていたか」
「当然だ、躓いて転ぶのであればまだいいのよ、よくはないがな。だがコーヒーを溢さない一心で空中で姿勢を整えたのだ45度から90度、垂直にな。足にオブジェクトをくっつけてな」
「すげぇ姿勢制御だな、姿勢制御バーニアでも積んでんのか?」
「がっはっはっは」
「んでよどうなったんだ?」
「助手を自分の元へ引っ張ろうとしたんだ。そしたらよ俺も蹴っ飛ばしてしまったんだよ」
「何を?」
「昨日徹夜明けのふらふら状態で作ったよくわからない液体よ、その時の記憶があやふやでどのように作ったか覚えていないんだよ」
「んフラグが立ちすぎて森になってるな」
「見事にオブジェクトと液体が入ったカプセルがぶつかり合ったんだ」
「ほう」
「しかもちょうど3つの原子を同時にぶつけたその時だったんだ。視野いっぱいが白くなってよ、なんとか助手を掴んでカプセルに逃げ込んだんよ、んでこの娘が例の助手」
「目回っているようだけど大丈夫?」
「じゃね?」
「おい!」
ホワイトハウス~会議室~
「イカ100㎞範囲に侵入しました!アメリカにまっすぐ向かっています」
無線機が騒ぎ出す
「おっとすっかり忘れていた」
「無人戦闘機の発艦を確認」
「ん?これ誰が指示出しているんだ?」
首相間に奇妙な沈黙が流れた
「イカ背後に回り込み…成功しました」
「なんか怖いね。上の支持を仰がなくても行動できる部下…育成にどれほどかかっただろうか」
「微妙の放射線を確認!大統領の推測は正しかったようです」
「おおおおおおおおおおおお!」「うおお…」「ワフィィィ」「無線機に叫ぶな!鼓膜が破けるわい!」
無線機から雄たけびが聞こえる…こいつらなんで雄たけびを上げているんだ?突然の侵略に頭がおかしくなったのか?
「BP型有人戦闘機1機離陸!無人戦闘機2000機射出!」
「近辺諸国から友軍機を確認!カナダ、メキシコから無人戦闘機計4000機!」
「いつの間に指示出したんだ?カナダ、メキシコ首相」
「え?いや…ね」
「あ、うん…ね」
「俺ら指示出していないよね」
「そうだよね…」
「…」
重苦しい沈黙が流れたのであった。依然騒ぎ続ける無線機を残して
数分前
「まずその娘をベッドに寝かせようか」
「別に大丈夫だろう」
「泡吹いているぞ!お前の実験室にベッドあっただろう既に7分は経過しているから放射線はないに等しいからそこに寝かせよう」
「メキシコ空軍まもなく到着します」
「同じくカナダ空軍まもなく到着します」
「了解した。ベルー早く連れて行こう俺も時間がないようだ」
「あいよ、」
第一実験室
「なんだあれ!でかくなっている⁉」
壁紙が溶けていることや屋根に風穴が開いていることには変わりないが1m四方の金属?が存在感を主張していた
「でかくなっている以前にあんな金属?はこの実験室にはそもそもない。言ったよね3つの原子を3方向から同時にぶつける実験の途中だったと」
「ではあれはなんだ?」
「知っていれば自慢している」
「まぁーそりゃそうか。で、どうするんだ」
「書類の作成は俺がやっておく。この金属?を研究してみるよ。あんたにはあんたのするべきことがあるんだろう」
「恩に着るぜ。これはX-0カタストロ計画に良い風を吹き込むだろう」
「だな」
歯車が動き出す音が聞こえる
「ぐっはっはっはっは」
1人で笑っているようで寂しく、隣の親友を見ると案の定口角が上がっていた
「では任せたぞ」
第一滑走路
「アックス元帥殿!無事に帰ってくださいね。もしあなたの身に何かあったらアメリカを引っ張る者がいなくなってしまいます」
「わかっているそこまで案ずる必要はない過度の心配は己の身を蝕むぞ」
「心得ています」
疾走とコックピットに乗り込み酸素マスクを着けた
2つのプロペラとブルスターを左右胴体につけた戦闘機BPⅢは主人の搭乗を喜ぶようにエンジンを吹かした。搭乗員との親和性を高めるためにAIが搭載されているのだ
「網膜投影開始、シンクロ率10%」
目頭から順に周囲の景色が映り始める
「離陸準備」
垂直に展開していた2つのプロペラが90度回転し回転を始めた
「system are all green ,taking OFF!」
急速に速度を増すプロペラ
吹き荒れる風
爆風だけ残して空へ飛び立つ
「飛行モードに切り替え、プロペラ、ブラスター接続開始」
垂直に戻ったプロペラとブラスターが繋がる。旅客機の内燃機関と同じ仕組みだ
「ふむ、いまいちだな」
『ですね。やはり核がないといまいちですもんね』
AIが応答してくる
さすが俺と共にいろいろな機体を乗りこなしてきただけあって気持ちが通じる
「核分裂反応か核融合反応から推進力を得なくてはな」
「X-0カタストロの推進法は核分裂反応と核融合反応をそれぞれ二つのブースターを使うことでエネルギーロスを減らしている!注文通りに計画は進んでいるぞ!」
突然のベルーからの割り込み通信に驚く。でも頭の中に直接来たような…んなわけないか
「ふん!期待しているぞ」
ワクワクしている自分がいることに気が付く
徐々に速度が上がり始めた
『ベイパーコーンの発生を確認』
「こりゃ明日は雨だな」
言われてみれば目尻のほうに白い靄があった
『ポイントA到着まで残り30s予定より17s遅れています』
「まいったな…そういえば面白い機構を付けたと言っていたな」
いうや否押してくださいと言わんばかりにスイッチが出てきた
ポチ
考える間もなく押す
TRENS-AM
視界の中央に展開される字
「うん!TRANS-AMか!完全にアウト!名前変えろ!」
機首の下部がわずかに開く
『ベルー粒子α型放出開始』
オレンジ色の粒子が機体を包む
『空気抵抗及び摩擦減少、エネルギー変換効率上昇』
『速度急激上昇』
多大なるGがアックスを襲う
「まいったな耐Gスーツ着ていないんだよ…だが間に合うな」
依然上がり続ける速度
無人戦闘機…もちろん有人戦闘機もそうだがその場でホバリングすることはできない。ヘリではないのだからな。そのため指定されたポイントへ同時に到着する必要がある。そうでなければきれいな隊列を組むことができない
心を落ち着かせ周りの景色を見てみる。雲一つないきれいな快晴だが遠くに影が見える。あれがbigmotherなのだろう
「この空気、正しく決戦の時!」
『最初で最後の戦い』
「おい!変なこと言うでない!」
徐々に速度の上昇率が下がってきた
最高速度に近づいてきているようだ
「見えた!」
飛行機雲を引きながら進む、無人戦闘機隊である
『ポイントAまで残り5㎞到着と同時にスピリチュアル部位へ接続、同調率1%、BPⅢ同調率10%で実行されます』
「了解ぃ」
左にも、右にも白い糸が束になって近づいてくる
「例の箱の準備できているよな」
『はいここに』
アームが座席の後部から生えブラックボックスを2つ持ってきた
アメリカ大統領しか持つことが許されないブラックボックス
「くくくぐわっはっはっは時は近い!制裁の時間だ!」
『ボイスメッセージが届きました』
「ん?誰からだ?いや愚問だったな、再生してくれ」
『準備完了!…とのことです』
「短ッ!それわざわざボイメで送る必要あったのだろうか?」
考えればすぐわかることだこれは…まぁーいい計画は順調に進んでいるようだな
『ポイントA通過』
情報の洪水に悲鳴を上げる脳
心臓が大きく唸る
流血する右目
血が滴る
『無人戦闘機指揮権譲渡されました現在同調率1%です』
「急にはやめてね、物理的に心臓がやばいから」
『…(失笑)』
~
アメリカ、メキシコ、カナダの3か国の海軍全艦隊が集まっていた
「現在イカは日付変更線付近にいます。我々の目的は現れるであろうmotherの撃墜です。敵の防御力は依然不明でありトマホークでの撃破は難しいと思われますがやるしかありません」
「よろしいでしょう指令」
1人の血気盛んな船長が挙手した
「なんだ?」
「なぜ大統領はイカ達のところに行ったんですか?」
「うむ気になるか」
「はい!」
「よろしい、地対空長距離ミサイルの連発より無人戦闘機で近づいてアックスミサイル連発のほうが安く、今回の任務の趣旨に合っているそうだ」
アックスミサイルそれはアックス大統領のために作られた特殊ミサイルであり誘導機能がなくただ火力を求めたミサイルである
今の説明のためだけにしては前置きがえらく長かったこれは何か裏がありそうだ
突如として緊張感が走った
指令がにやけだしたのだ
「し、指令?」
「その顔、裏があることに気がついたな。君の推測は正しい、これはあくまで建前の話だ」
「それは…」
誰かが固唾を呑む音が響く
「うひょー!こんなおもしろそーな戦い誰が見届けるというのか…この俺以外に!後は頼んだぞ!とのことだ」
奇妙な空気が流れた
まぁー大統領らしいな
~
「んーふぅふん~♪」
私の助手であり例の娘…確か名前はリマといったながデッキ内をハネながら入ってきた。本当に跳ねているわけではないんだがなぜかそう表現したくなる
「おーい!博士できたか?」
鼻歌を歌いながらタッチパネルをいじっているベルーはブラックボックスに召喚される予定のこれの最終調整をしていた
「現在ファイルチェック中、今のところシステムオールグリーン。俺が呼び出せれた意味なくないか?」
「んなことないですよ!もしもってことがありますから」
「まぁーな、では俺は元の持ち場に戻るとしよう」
「ファイルチェックは…」
「今終わった」
「さいですか」
「よいっしょ」
下層に向かい自由落下を始める
徐々に我が粒子が噴射され減速される
「見事な腕前ですね」
「だれが作ったと思っている」
「ですね作った本人が使いこなせなくては博士の名が泣いちゃいますもんね」
「いつまで憎まれ口叩いているんだ」
「お前という個が無くなるときまでさ」
「一生やないかい」
歩きながらの何気ない会話この時が一番幸せだ
だが今にも壊れてなくなりそうなこの儚さ
儚さ?…いや違う不安だ。直感に近い不安
考えてもわからないものは考えても仕方ない。もちろん無暗に思考放棄することを進めているわけではない。まぁーいい実験室でたまたま生成された金属?だが名前が決定した。いや俺がつけた、「生体金属」とな。この生体金属は我が粒子α型と反応し膨張する。失礼、表現が間違っていた、特定の形に戻ろうとする。実験室では微量にαが残留していたと思われる。その特定の形はβ型をぶつけることで決定する。だがもう一度β型をぶつけると解除されてします。これでは戦場ではいい的だ…これの解決方法それが我々に求められた要件
「んでどうするんですか?」
「少し一人で熟考してみたい、席を外してくれ」
「わかりました。コーヒーでも淹れてきますね。あ、もちろんインスタントですが」
「ふん、構わぬさ。丁寧にな」
足音が遠ざかる
何気なく近づいてみると。表面が変だった目が釘付けになる。つるつるだがざらざら…何を言っているのか分からないだろう。俺もわからない、だがそういう光の反射をしているのだ
素肌で触りたい
よくわからない衝動に駆られる
手が伸びる
ダメだ!
このようなよく分からないに触れるには支払わなくてはいけないかもしれない代謝が大きすぎる
「博士!コーヒーができました!」
「うわぁ」
「脅かすなよ」
「あのー申しずらいのですが」
「んどうした?」
「手…」
「え?」
俺としたが驚きの衝撃で触ってしまった
視認と同時に温かい光が部屋を覆いつくす
「ベルーさん!」
抱きついてくるリマ
本当は押し倒そうとしたが筋肉量に正しい体重があるため小娘では押し倒すのは至難の技であった
その勢いでリマも生体金属を触ってしまった
手から徐々に這い上がってくる何か
この冷たさ、金属だ!つまり生体金属が俺らを飲み込もうというのか!
「させるか!」
腕のうちにリマを入れ、拳を握り思いっきり降りかかった
一気に縮小する筋肉
遠心力、ベルーの筋肉すべてのエネルギーをぶつける
跳ね返った!
生体金属にぶつかったエネルギーはそのベクトルを反転させベルーの腕を襲った
ここで悲鳴を上げるわけにはいかない!
彼の常人を超える精神をもって悲鳴を押し殺す
血が染み出る唇
だが悲鳴を上げるわけにはいかない
大の大男が壁を全力で殴り返ってきたエネルギーを受け悲鳴を上げる姿を想像してみろ!その不様さ!震え上がるだろう!それをこんなあどけない少女に見せるわけにはいかない漢として!
そもそもなぜ金属を殴った!俺の馬鹿!いや大馬鹿だ!
頭突きと同じようにベクトルが返る前に手を抜くならまだわかるよ!いや非生物、ましては無機質を殴る意味は分からないが…相手が怯んだり死んだりするわけじゃないんだぞ!
脳内で怒鳴りあいをしている間に光はより強く眩しくなった
「マスターですか?」
唐突の声掛け
だがリムの声ではないとなると…
「マスターとは何でしょうね」
「おっとこれは愚問でしたね。あなたがた人は私のマスターと決定されました」
意味わからねーことをぼざきやがって。だがアックスから人影が入っていったといわれた時から可能性は考慮していたがまさか当たるなんて…俺の日常が崩壊する不安の正体はこれだったのか?いや違うもっと大きいものだ。ここで取り乱しても意味がない
「3人?それはどういうことだ?」
「まずはそこの小娘のことよ。そこの可愛らしい女の子よ貴様は誰だ?」
「私はベルー博士の助手よ!」
「そうだったのね。副マスターとして認定…完了しました。ところでもう一人が見当たらないのですが…」
「多分それはこれのことだろう」
懐から脅迫用に取っておいたアックスの血袋を取り出した
「こいつは今はいない、だが俺と同ランクだ」
「3人の生体情報、ランク確認しました。お疲れさまでした」
明るさが徐々にその勢力を失い始めた。気が付いたら元の明るさとなっていた
「終わったか…」
「ですね…あれ?あれは何でしょう」
生体金属の上にホログラムが出てきた4つのグラフと2つの図
「これは…この図を見てくれ、これは特定の形管理するシステムだ。リム我が粒子の噴射用意!」
「了解」
4つのグラフのうち1つは永遠と0を這っておりもう一つ不安定に上がったり下がったりしていた。残りの2つのうち片方は僅かだが上がり続け、片方は僅かに下がり続けていた。下がり具合を見る限りあと1か月は持ちそうだがこれは何を示しているんだ?
生体金属そう名付けた時の記憶が頭の中を駆け上った
あの時は何も考えていなかった。そう何も
俺が何も考えないでいるなんて珍しい…いやこれは何者かによってなされたと考えれば。生体金属という名前はこの金属?の意思なのかもしれない。もしそう考えるならこの下がり続けるグラフは人間でいう酸素と栄養、逆に上がり続けている方は老廃物を指していると考えられる。つまりどっちかが0または上限になったらこの金属は崩壊することになる
「噴射用意完了しました!」
「よしまずβ型噴射開始!」
噴射器はどでかい顕微鏡みたいな形をしておりプレバラートの位置に噴射対象をおいて実験するものだ。
「第一ブロック回転開始!」
最も上部にある第一ブロックが回転を始める遠心力により中央に何もない空間ができる
「第2ブロック挿入開始」
その空間に第2ブロックを挿入し温める
「温度1000度達成、プラズマ化!第3ブロックに落とします!」
遠心力により磁場が発生、その中央に輝く粒子が我が粒子のβ型である
「加圧…圧力安定。発射準備完了」
「放て」
圧力を加えβ型を生体金属にぶつける
上昇していた数値が降下を始める
「α型発射用意!」
「用意完了!」
「放て」
続いてα型をぶつける
本来ならβ型により特定の形が解除されているため膨張を始める
だが始まらない
代わりに新たな項目がホログラムに現れた。
『状態を変更しますか?yes or no 』
「ベルー博士これは!実践投入ができます!X-0カタストロの装甲として使えます!やりましたね!」
「あーそうだな」
「どうしたんですか?博士反応が薄いですよ!」
「不安材料が残ってしまったからな、残りの奇妙な2つのグラフと図、これが何を示すのか…」
「ベル博士!このグラフを見てください!」
「なんだこれは…」
不安定に上がったり下がったりしていた数値が突然急上昇し始めたのだ
「何が始まるんだ…」
数値の上昇が落ち着いてきた
∹核分裂反応か核融合反応から推進力を得なくてはな
これはアックスの声通信機か?否、脳内に直接声が入ってきているこれはテレパシーなのか?
「ベルー博士この聞き覚えのある声は誰なんですか?」
リマが耳を抑えながら聞いてくる、やはりリマにも聞こえているようだ。
指で静かにするように伝える
∹X-0カタストロの推進法は核分裂反応と核融合反応をそれぞれ二つのブースターを使うことでエネルギーロスを減らしている!注文通りに計画は進んでいるぞ!
同じようにして返す
∹ふん!期待しているぞ
それから数値が降下を始めた
「なんだったのでしょうか。この生体金属のマスターとやらになったから…」
「いや、違うと思う。この金属?にできる芸当ではない、白い光を受け命の危機を感じて覚醒したのではない?」
「それではさっきの声の送り主が声が聞こえたのは説明が尽きません」
「その送り主はたぶんアックスだ。アックスは俺よりずば抜けて機械との同調の際に受ける負担が少ない。もうすでに覚醒していたのだろう。だが受信する側がいなかったため今まで発覚しなかったのでは?」
「なるほど一筋は通っていますね」
「まぁーいい俺の準備はできたそうあいつに伝えてくれ」
「了解しました」
~太平洋
『無人戦闘機との接続に問題ありません』
「敵との距離は?」
『まもなく視認できます』
「そうか」
烏合の衆であった無人戦闘機が隊列を組み始める
100ほどの白い線が重なり合い小隊を組み円形となる
それぞれの小隊が展開し大きな円ができる
特選仕様機含む先行隊が出発する
「特選仕様機、高速移動モードへ移行」
開く下部ハッチ
散布される粒子
オレンジ色に輝き始め大きく加速する
『無人戦闘機特選仕様ミッションを開始、自動航行開始』
「了解」
徐々に接近するイカ達
群の輪郭に合わせて隊形が変化していく
『特選仕様機、敵上部に到着』
裏取りは順調なようだ
「了解」
このミッションが最初で最後の攻撃となる。ここでミスればアメリカ本土は蹂躙されるだろう、不安が募る
陣形がわずかに崩れる
「だがこの緊張感この空気!まさしく戦場だ!」
最前線に立つ、その夢が今叶おうとしている。この時をどれほど望んだだろうか
興奮が不安を覆す
「攻撃用意」
展開する下部ピッチ
意識を集中する
頭に流れ込んでくる情報
普通なら脳内回線が焼き切れる量である
「スコープ投影」
各無人戦闘機の照準が映る、その数5999個
一個一個を微調整していく
「敵有効射圏内到着まで20㎞」
「15…」
「10…」
心がなぜか落ち着く
「5…」
逆に心が高鳴る
「0!…発射」
各無人戦闘機からアックスミサイルが降下
点火するブラスター
白い煙を後ろに引きながら飛翔する
「攻撃継続」
次々と発射されるミサイル
端にいるイカどもに命中
花開く爆発
イカの肉片が飛び散る
汚い花火だ
だが2発目からは当てない
イカ達は内へ内へと追いやられていく
運よく外側に逃げ出す個体が現れる
だがそれでは困る
恐怖のあまりおぼつかない足取りで逃げるありさまは実に滑稽で予想しやすい
外に逃げ出した一体にすべての照準が重なる
「発射」
無慈悲な言葉により5999発のミサイルが飛ぶ
「全弾命中…まぁーね」
後には肉片すら残らなかった
1体が膨張を始める
motherの誕生である
『ターゲット補足、攻撃中止』
指揮下内の戦闘機を次々と戦域から離脱させる
「網膜投影一部分解除」
ブラックボックスを開いて鍵を指す、いつでも回せるように
「mother発見!攻撃用意!」
無線が騒がしくなる
「おい!攻撃目標のmotherはこいつではない!」
「え!まじすか艦長!」
「作戦会議で何を聞いていたんだお前は!」
無性に不安がかき上げられる
『特選仕様機、裏取り成功しました』
アックスミサイルは誘導能力を失う代わりに火力を高めたミサイルである。だがあのでかさのイカの前では外套膜に拒まれ有効弾を与えるのは難しい、それは数を当てても同じことだ。よって今回の計画では口から入り内臓で起爆、内側からmotherの撃墜を狙うことだ。打ち込めたとしても1本だ。そこで今回特選仕様機はアックスミサイルⅡを積んできている。その質量から無人機は一本しか持つことができないが、その火力は本物だ。正しく今回の作戦のためにあるようなものだ。余談だがこのBPⅢも一本積んでいる
「よし、撃てぇ!」
放たれる一撃
その質量から必要とされるブラスターは大きく、引く白い煙も太く濃かった
伸びる触腕
ブラスターを叩き落す
推進剤が爆発する
だが本体は誘爆しない
推進力を失ったミサイルはそのまま急降下を始める
『アックスミサイルⅡ撃墜されました、Mission Failed』
「淡々とMission Failedっていうんじゃねーよ!」
『どうします?』
「後方での高みの見物はここまでか…このBPⅢにもⅡを一本積んでいる。それを使うしかないだろう」
戦線離脱させていた5999機の無人戦闘機を呼び戻させランダムにミサイルを撃たせる
次々に爆発するミサイル
イカの肉片と共に鉄片も飛来する
「α型最大出力」
うねるブラスター
悲鳴を上げる機体フレーム
群れに突撃する
motherと交尾をしようとしていたイカが迎撃にあたる
有効的な飛び道具を持たないイカのすることは一つ
そう特攻である
イカの核爆発は些細なものだが数を喰らえば難なく墜とされる
周囲360度全方位から向かってくるイカ
機体を45度回転
無理やり進行方向を切り替える
「クッ、」
強力なGがのしかかる
コックピット下部でイカ同士がぶつかり、爆発
肉片を散らす
「愚かなイカども、め」
機体を水平に戻す
後ろから追うイカ達の数が多くなる
だが構わない
motherはもう目前だ
だが徐々に距離を詰められている
「エンジン稼働率は10%未満なんだがな」
上部から垂直降下するイカ
被弾ルートだ
なめるな!
エンジン稼働率を上げれば済む話だがそれは奥の手!まだ使えない!
意識を集中する
鉄の味がする…
鼻血がたれ始めた
降下するイカを睨めつける
イカ以外見えなくなってきた
速度、空気抵抗、タイミングを即座に演算する
『同調率上昇15%』
何か耳に刺激があったか?
徐々に近づくイカ
目じりから耳へ網状の模様が浮き上がる
「いまだ!」
機体を回転させる
羽の間を通過するイカ
「うっし」
危ないところだった
だがもう懸念はない
見上げてみればmotherの腹が見えてきた
後ろからは依然距離を詰めてくるイカども
そして前からはmotherの触腕
「予想通りだ」
エンジンを一気に吹かす
『エンジン稼働率上昇40%、60%、80%…』
嘔血
空中分解を始める機体
肉が裂け骨が悲鳴を上げる
神経などとうに狂れている
急激に速度を増すBPⅢ
動揺するmother
だが動揺する時間などない
日光がコックピットを差す
motherの下から抜けたのだ
機首を上げていく
上昇する高度
吹き飛ぶコクピットハッチ
急激に低下する速度
だがそう簡単には失速しない
雲を抜けイカ達がはるか下に見えてくる
『風向き、風速、計算完了』
失速
尻を海に向け垂直に落ちる
『自動航行開始』
「あぁ」
計算されたルートを通りmotherの口と平行に、そしてⅡの発射。完璧な計画
『Ⅱ発射準備』
小さなアームにつかまれたⅡが下部パッチから出てくる
『目標地点まで残り20m』
相棒の操作に身を任す
『回転開始』
補助翼が動き機首が下がる
僅かに下がりだしたらあとは簡単に回転する
不意に差す影
「なんだ?」
眩い光が目を襲う
ドン!
全身に衝撃が走り、爆発音が鼓膜を襲う
小さいが確実な核爆発
一瞬気を失う
幸いⅡは誘爆しなかったようだ
全身を襲う激痛
挫けそうになる
だめだ!何のためにここまで来たのか!人類に勝利を!
目を開く…開いたはずだ
だが何も見えない
暗い、ただただ暗い
大きな揺れが機体が襲う
徐々に右目に光が戻る
だが砂嵐がひどい
左目は依然何も見えない
音が聞こえる
周囲に集結しだすイカの音、死の足音
一匹でこの威力
もう次がない
ゆっくりとだが確実に周りが見えてきた
だが眼は依然と使い物にならない
「だが見える!」
声を発した瞬間相棒の悲鳴が聞こえてくる
『マスターが生きている!?この状態で?』
『左翼小破!機体安定不可能!左翼エンジン中破!爆発の可能性あり!直ちに脱出を!』
「うるせぇ!」
見えるそれだけのこと、だが確実に俺に冷静さを取り戻してくれた
ここで死ねば本国が、そして人類が蹂躙される。そんなことさせるか!
暴走し回転していた機体。おかげで高度をそこまでロストしていない
感覚がより強化されている
bigmotherとの相違度、自分の位置、周りにいるすべての的が見える
「ブラスター、プロペラ接続解除、モードチェンジをマニュアル操作へ変更」
背中に羽が生えたような違和感を覚えるが、すぐになくなる
「両翼パージ!」
プロペラを残し翼、ブラスターを捨てる
プロペラを片方は反転し、もう片方は機体に垂直に動かす
プロペラの推進力によりローリングが止まる
『流石です』
縦回転は依然続いており、機体の傾斜度はまだ水平を下回っていないが、このままではbigmotherを墜とせない
プロペラを45°回転させる。片方は時計回りに、もう片方は反時計回りに
「エンジン最大出力!」
次第に縦回転も収まる
だがもうmotherは目前だ
「motherとの相違、+10m、+4度」
プロペラの角度、出力を微調整していく
「相違、+5m、+2度」
motherが近づいてくる
「相違、+0m、+0度…いまだ!」
発射されるⅡ
完全に慢心していたmother
反応が遅れる
触腕の間をすり抜けるⅡ
ぱっくりあいた口の中を物言わせぬ顔で入っていく
核爆発
莫大なエネルギーはイカの体内で暴れる
外套膜を内側から切り刻みながら出てくる光
ぼぉぉおお
bigmotherの咆哮
衝撃波で吹き飛ばされる
バラバラに砕けるbigmother
ゆっくり高度を落としていく
だが、まだ死んでいない
「あれを、殺す」
回されるブラックボックスの鍵
本土から光とともに白い煙が昇ってくる
多弾頭巡航ミサイルだ
機首を下向きに下げながら落下する
もう手を付けることができない状態だった
「同調解錠」
真っ暗になる視界
何も見えない
徐々に感覚が消えていく
まずい
動けない
足がなにかに引っかかっているようだ
腕を伸ばす
あれ?
感覚が、ない?
近づいてくるエンジン音
『私は貴方に仕えられて本当に良かった』
うるさい
相棒の本体であるカプセルを食い抜く
近づく無人戦闘機
まずい、掴めない
向かってくる巡航ミサイル
本格的にやばいなこれ
ー大丈夫
え?
腹を襲う衝撃
肌を流れる風
なんとかなったのか
~
アメリカ本土から打ち上げられた核ミサイル
首脳会議で許可をとっていないがこの状況下では苦言を呈する者はいないだろう
指揮官不在のイカ達は鳥合の集にすぎない
着々と進んでいた核は今イカと接敵を果たした
起動する時限信管
巨大なキノコ雲ができる
莫大なるエネルギーがイカを包み、塵と化す
爆発的な風に煽られ吹き飛ぶイカ
放射線の影響を受け遺伝子が変化、自滅する
だが離れていたmotherはぎりぎり生き残っていた
幼体を生み始める
そうはさせない
「いまだ!ターゲット補足!トマホーク、シースパロー、撃てぇ!」
湾沿いに集結していたアメリカ、メキシコ、カナダの船20000艦が質量制限いっぱいまで積ん打ミサイルを一斉発射する
ミサイルの煙により視野が潰される
だが誰もかまわない
打ち続けらるミサイル
光輝くミサイルの一斉発射、花火大会より豪華な音、熱気
「司令!こちら07小隊、全弾撃ち尽くしました」
弾切れの報告が相次ぐ
煙が薄っすらと晴れ、光が差し込む
半身が削られ、煙を出しながらも進軍するその姿は正しく死神に近かった
動揺が走る
弾切れの船ができることはない
補給のために急いで転進を始める
だがよく見るとイカ共はすでに息絶えていた
ブックマークと評価のほうもよろしくお願いします